悶々としたタクシードライバーが一丁やらかす。
若いころのデニーロの出世作とよく言われる作品。また「この頃のデニーロはよかった・・・」ともよく言われる作品でもある。一頃のアクション映画に出まくっていた大量生産デニーロとはちょっと色合いが違うというのは見てわかる。ディアハンターに近いものがあるかもしれん。そういえばあれもベトナム戦争で狂気インフレになった男の話だった。
ずーっとため込んだうちに秘めるオーラパワーをへんな方向に解放したような話で、まったくもって共感はできないが、それまでの事の顛末を見るとなんとなくそうなるかーって思う。「太陽を盗んだ男」の二面性に近い感じ。この殺伐とした悶々とした雰囲気は独特で、なんというかダメ人間の香りプンプンなんですこのタクシードライバー。
ただ自分や自分に近しい人々がそうであるからよくわかるんだが、ダメ人間にも大きく2種類あって、つまるところ良いダメ人間と悪いダメ人間がある。良い方は自分がダメであることを前提に、そのダメさを楽しもうという気概があって、ある部分に精神的な欠陥を抱えているけれども線引きはうまくできる。悪いほうのは、ダメを劣等感とし全く自分の中に閉じこもってしまう。あるいはそれが爆発するとデニーロになるんだろうな。モヒカンにして銃乱射よ。
少林サッカー ★★★★☆
うだつの上がらぬ少林寺拳法使い達が、サッカーで一旗あげる話。
久々に見る前の期待が大きい作品。遡ってみるとPARTY7以来かもしれん。あれはひどい映画だった。しかしこの少林サッカーの場合はちと違う。まず去年の段階で、つまり香港で上映中で日本では公開されていない状況の中で、映画専門誌の「2001年のよかった映画ベストテン」にランクインしたということを聞いていて、なんというか期待してもいいよ光線が出ていた。
映画館で観たのだが、まず驚いたのは映画の内容よりも映画館内と自分との温度差。コメディー映画を映画館で観たのは「ラヂオのじかん」以来だが、今回特に感じたのは総じて女性の笑いの温度が低いこと。わっかりやすい笑いのポイントでどっかんどっかん笑うし、逆にこっちがクスっとくるような、いわゆるシュールな笑いの部分にはまったく反応しない。最近特にレベルダウンが際立つNHKの「爆笑オンエアバトル」の客も女性が多いし、しかもどうしようもなく笑えないネタが高キロバトルだったりする。
で話もわかりやすい。逆にこういう映画が難解なストーリーだとそれはそれで困る。前評判では「ノリがアストロ球団」ということでも期待していたのだが、実際見てみるとアストロとは全く別次元だった。アストロの場合は「一試合完全燃焼」している姿が見ててバカかっこいいのであって、少林サッカーのように笑わせにかかっているんじゃない。そこは期待はずれだった。
しかしまあ、お笑い映画として軽く見るのにはいいのではないでしょうか。
アメリカン・サイコ ★★★☆☆
若くして大企業のCEO、上辺のつきあいに辟易した彼は人が殺したくなったようです。
正直よくわかんねぇ。ああいう結末というのは、これがすべて主人公の妄想であるという夢落ちなのか、それでなければなんなのか謎多きまま終わってしまった。
ただひとつ、主人公は自分が大好きでキチガイてのはよくわかった。
キリング・ゾーイ ★★★☆☆
バカが無計画に銀行強盗する話。
全体的に緊迫感がないのでいまいちのれない。こいつら最初からあんま銀行強盗やる気ないし、もっと言えば成功させようという強い意志が欠如している。職業強盗ではないがゆえになんとなくうまくいったら御の字、捕まったらまあどうにでもなれぐらいに思ってるのか、そういう大馬鹿の銀行強盗を描いているので、見る側も惰性になってしまう。唯一見るべきポイントはジュリーデルピーのアレな映像。
天空の城ラピュタ ★★★★★
パズーは空から少女が降ってくるのを見た。その少女シータは天空に存在するとされるラピュタの地の正統後継者である。その証である飛翔石を持っていたため、空に浮いていた。ラピュタの力を求める軍、財宝を求める盗賊ドーラ、そしてパズーとシータ、それぞれの思いはやがて収束する。
アニメ映画を大人の鑑賞に堪えうる(東映まんがまつりの列にシラーっと並ぶような種類の大人ではないよ)レベルまで完成させたのが、ジブリもの(宮崎もの)の凄さだ。ナウシカや本作ラピュタは80年代初期の大友克洋を中心とした漫画ルネッサンスと同時代に描かれたものである。当時まだ漫画やアニメといった細分化すらされてなかったであろう「低俗ななにか」を文化的価値のあるものとして認知されるのに、宮崎駿もまた大いに貢献しているのだろう。
誰しも楽しめるテンポのよいストーリー、キャラ設定、脚本、音楽、そして根底に横たわる大きなテーマが示してあるために決して内容が薄くはならない。このへんが世代・時代を問わず宮崎ものが指示される所以だろう。
本作は数ある宮崎もので”自然との共生””繁栄賛美へのアンチテーゼ”などもちろん共通する大きなテーマは横たわっているのだが、同様のテーマを描くナウシカほどそれが強調されず単純な「冒険活劇ファンタジー」を存分に楽しめる点がいい。それはもうストーリーもそうだがキャラ設定の妙に尽きる。
特には盗賊ドーラの存在だ。単純に善vs悪の構図ではなく、こういう「悪いけどいい人」がいるだけでストーリー的にも広がりがでるし、こういう類のキャラクターに人はグッと感じるもんだ。彼らに共通する引き際というか潔さのようなものがいっそう感動を誘うのだろう。同様のキャラ設定にテレビシリーズで「未来少年コナン」がある。是非見てほしい。ダイス船長に男気を感じること間違いなし!
山猫は眠らない ★★★★☆
アメリカ海軍の特殊部隊、スナイパー部隊。そこに属する二人の軍人が政府側からの密命を受けて麻薬組織のボスをぶっ殺しに行っちゃろうと。
スナイパーものです。
最近見たスターリングラードとの一番の違いが、本作はスナイパーオンリで成り立っているということ。この緊張感抜群のスナイプ野郎どもにはあいらーびゅーあいにーじゅーはまったく似合わず、それよりも緊張の続くテンションで押し切った方が全くしまりのある構成になるみたいです。というわけでスターリングラードよりも面白い。
このように汗が噴き出し、血が滾る漢のゆうじょう物語が大好きな方は熱く燃えるような心持ちで鑑賞できるであろうし、そんな暑苦しいのは大嫌いという場合は画面自体はそりゃもうスナイプなもんだから、非常に地味、あまり楽しめないことでしょう。少なくとも、ドルフラングレン先生とかジャンクロード・バンダム先生とかの超B級映画ではない、骨太映画なんでハマれば思い切り楽しんでみれると思います。
でもなんつってもゆうじょう話だなあ。ラストの言わずもがなとか、スコープ越しのアイコンタクトとかスコープ使って口読術とか、スナイパーならでわのゆうじょうがいい。メタルギアソリッドでは何が何でもスナイプでぶっ殺したいとかいう方や、ゴルゴ13が大好きという方は必見であります。
五条霊戦記 ★☆☆☆☆
義経VS弁慶。
この頃からやけに、永瀬正敏と浅野忠信共演の映画が多くなって(PARTY7とかエレクトリックドラゴンとか)、なんか日本映画の間ではそういうブームが起きとんのかなあといった感じだけども、まあ確かに二人とも格好のいいたいそうな役者さんであるから、その共演となると現代日本映画ファンなら誰しも見たい感じの組み合わせではあるが、正直言ってこれら二人の組み合わせというのはどうもしっくりこない。
永瀬は演じようとすれば演じることもでき、逆に自然体もこなせるようなマルチ俳優、一方で浅野は自然体なればこそ生きるような雰囲気でかっさらうタイプなのでそこにIRQの競合が起こってしまう。若大将シリーズのように、青大将は引き立て役であるけれども実は彼自身も裏の主役であるといった関係ではなく、かといって夢のスター共演として割り切ることも能わず、どっちつかずになってしまうのが最近の共演映画の特徴だと思います。
で本作。これはその中でももっとも最悪なパターンで、まず彼ら二人に歴史上のキャラを要求するのが間違ってたんだろう。永瀬はとくにこう、事前の設定のないフリープレイヤーみたいなものだったのでまあなんとかなってはいたが、淺野の方が思いっきり義経だったんでこれはかなりきつかった。現代の若けえ兄ちゃんを演じればこその役者だけに、こう完璧演じなければならないというのはまずハマらない。
さらに追い打ちをかけるのが、ストーリーが全く面白くないという点です。これはもう役者以前の問題で、まあ演出みたいなことも影響してるのかもしれんが、とにかく面白くなかった。
なので、見なくていい。
ミュージックオブハート ★★☆☆☆
バイオリンの先生がどうやら奇跡みたいのを起こしてしまわれたらしい。
題材的には苦手なプチ奇跡もの。でもこれは現実に起こったことを元に話ができているらしいし、だとすれば一介の失業気味バイオリン先生が世界的なバイオリニストとかを集めてカーネギーホールでやっちまうというのはそれはそれですごいことだし、確かに奇跡的なことなのかもしれん。
しかし問題なのが、奇跡ものに付き物のオーバーリアクションが多分にアメリカナイズドされてるというか、そりゃもうアメリカ人がやりそうなリアクションなだけにそこのところが非常にしゃくに障るわけで、いい気がしないわけで、そうなると物語がどうでもよくなり、実際途中昼寝みたいなこともはさんだのにそれでも退屈であり、時間を持て余して結局雑誌を読みながら見てしまうという体たらく、やはり肌に合わない種類の映画を敢えて見てみようなんて考えるものじゃありません。
そしてクライマックスにかけてのあのアメリカ人が好きそうないい感じの成り行きのようなものがとっても嫌いな者にとっては、あまりいい気はしない。やはり私のような歪んでいる者が見てはだめです。昔「買ってはいけない」という本が少し話題になって、それがまた「『買ってはいけない』は買ってはいけない」とかいう本も登場してしまって、どうにもこうにも、アホかと、またこんなん買うヤツも相当なばかたれなのじゃなかろうかと思った時がありましたが、まさしくそれ。「見てはいけない」。
ただこういうアメリカンヒューマンドラマが、たとえばウーピーでウピウピしたいとか、そういうのが好きならそこそこ楽しめるのではなかろうか。私はきつかったです。
マン・オン・ザ・ムーン ★★☆☆☆
オオカミ少年系おもしろ芸人、アンディ・カフマンの話。
まず結論から書く。全然面白くなかった。
先に結論を書いたのは、本作の題材が「面白さの追求」だったから。そういう意味でまず面白いか面白くないかを述べたかった。単純に、カフマンがやったとされているギャグというか笑いというのがどこが面白いのか全然理解できない。ナンセンスゆえの理解不能といえばそれまでだが、カフマンという人間のストーリー以前に彼の笑いが全く笑えないというのが非常につらい。
なんでそうなるかというと、早い話が日本人とアメリカ人の笑いの琴線の違い。これは文化的な背景とか、あと言語が持つ余韻のようなもの、そういうのがまったく違ったならば笑いも全然違う。前に日本の芸人の第一人者と言っていい松本人志が「アメリカ人を笑わせに行こう」という企画をやったがこれまた散々な結果で、日本人がアメリカ人に受ける方法を追求した結果、どっちも笑えない中途半端な映像になってしまったことからわかるように、悲しみ以上に笑いの感覚はまず文化圏ごとに、そしてそこから少しずつ人間一人一人が異なるはずです。
ここまでは「笑い」についての感想。では笑いのことは切り離して、「カフマンがアメリカでは非常に受けた、それはそれはもうおもしろ芸人である」ということを前提に彼自信の話の部分、裏切ることが笑いであるという彼の生き方はどうだろう。
正直ここも着いていけない。それは根底に「だっておもろくないだろ」というのがバーンと大きく横たわっているんだけども、それを除いてもこいつの芸はダメだ。だって裏切り方があまりにひどい滅茶苦茶な感じで、なぜこの人が伝説的な芸人になっているのかまったく理解不能。なんかもう童話のオオカミ少年を無視する老人どもの気持ちがわかる。ただのアホたれにしか思えん。
・・・ああもう、これじゃ堂々巡りだ。よし、今からおれアメリカ人。カフマン大好き。サイコー。とってもおもしろい。よしこれが前提。前提だぞ。まあでもストーリーはうまくできてるんだよね。素の自分の笑いが相手にされず、仕方なく迎合した反動で自分自身も笑いの方向がずれていってしまうという皮肉っぷり、この辺はいいと思う。だけどなぁ・・・・。
あと変なとこで、主題歌が歌詞にもアンディ・カフマンがでているREMのMan on the moon だったり(多分REMの方が先)、カフマンの恋人役がコートニーラヴだったり、若干ロック寄りみたいです。
禁じられた遊び ★★★★☆
(おそらく)第二次世界大戦下のフランスの人々の、ドイツから逃げ惑う風景。そこにあっけなく両親と犬を秒殺された少女ポレットもいた。彼女はあてもなく歩くうちに、酪農家の一家の元にたどり着く。そこのドラ息子、ミシェルといろんなことを。
タイトルとともにあまりにも有名なのがあのせづねぇ曲。自分が寮にいたころ同部屋の先輩上野さん(ギター部だった)に教えてもらったクラシック系の曲3つ、Fly me to the moon は完全に忘れてしまい、More than wordsはうろ覚えでコード進行ができる程度、そして最後のひとつ、この「禁じられた遊び」だけが唯一クラシックギターの曲で今でも弾ける曲である。というのもこの曲の構成が、親指でベース音を鳴らしつつ人差し中薬指をローリングさせるような動きで固定されていてわかりやすいのと、教えてもらいながらすぐに弾けるぐらい単純な曲展開、そしてもちろん、せづねぇ曲調がかなり印象的だってのが大きな要因。番外編でCHARがやってたんだけどもローリングの部分を半音ずらす「禁止された遊び」て曲もあります。これが不協和音で、確かに禁止されたような感じがする。
本作の内容もその曲同様かなりせづねぇです。皮肉めいた反戦映画であるとも捉えることができるかもしれんが、それでなくてもこの二人のがきんちょのやりとりや、なんでもない言葉なんかがかなりキとる。
とくにこう、盛り上がりどころのない淡々とした内容なだけに、これらがうまくマッチしたもの悲しい雰囲気に仕上がってます。「悲しいときー」な時に見るとグッとくるかもしれません。