フェリポンのやりくり采配で自己最高ベスト4まで勝ち上がってきたポルトガルと、未だ攻撃の形ままならずも、鉄壁ディフェンスと個人技で勝ち上がってきたフランスの準決勝-2。
終わってみればつまんない試合だった。ワールドカップのセミファイナルがこんなお通夜みたいなんでいいんだろうか。勝った方が優勝を争うファイナルに進出できるという理屈はわかるが、このゲーム単体で切り出して、例えばジダン的に、アンリ的に、フィーゴ的に、デコ的に、ロナウド的に、ジベ的に、ヌーノゴメス的に、ドメネク的に、カランブー的に(チラ見した)、プラティニ的に、ベッケンバウアー的に、ベッケンバウアーの嫁的に、ブラッター的に、FIFA的に、「この試合はエンタテイメントである必要はなかったんだろうか???」。この点が試合内容から鑑みて非常に気になった。
だって仮にもワールドカップのセミファイナル、ある程度プラチナチケットだろうし、定価ですらたぶん平均100ユーロぐらいか?詳しく調べとらんのでわからんがたぶんそんぐらいだろう、まー中には馬鹿みたいにだまされて10倍以上の価格でぼったくられた人が結構いるであろう事は、日本でもマックス何たらのチケット問題とその後のハイエナ商売からわかるように、ある程度推察できる。
で、この試合が見せ物として100ユーロ、あるいは1000ユーロ、はたまたそれ以上の価値があんのかと。結果的に勝ったフランスファンは消化したかもしれんが、負けたポルトガルファンは負けたショックとつまんない試合見たショックがでかすぎる。内容はもういいだろう。30分頃のアンリPK奪取→ジダン得点。これで勝負は終わってしまった。あとはトーナメント先行逃げ切りの定石としてのドン引きカウンターをポルトガルが崩せず終了。
フランスは攻撃の形はこの期に及んで確立されておらず、この試合でも意志の疎通が明らかに無いシーンが結構あった。しかも、攻撃の核であるジダン・アンリラインが不協和音な感じ。まだお互いに譲り合い、リズムが生まれていないように見える。案外、無理からコンビネーションを高めるよりも、曲がりなりにもそのポジションで世界5指がいるんだから、各自の発想にまかせてるのかもしれない。その反面守備が鉄壁すぎ。一発勝負での強さがここにある。まるでイタリアみたいなやり方なんだが、元々フランスの特徴ってアーセナルみたいに足下の技術とタフネスを基盤として、パスをぽんぽん繋ぐ+スペースへのフリーランニングを主体とした、攻撃的なサッカーじゃなかったっけか?
もっと言えば、この状況を打開できる力強さをポルトガルには見せて欲しかった。ベスト4まで上がってきたんだからそういう底力は持っているべきだし、全体からもっとフランスに圧力をかけて欲しかったし、チャンスらしいチャンスがパウレタのゴール前の強さとC・ロナウドの無回転FKだけだったというのがせづねえ。ならよー、空気読んでイングランド勝たせてくれや。
これで決勝は「攻撃的?」イタリア VS 「イタリアぽい?」フランスか・・・。なーんかもうすでに0-0延長PKが眼前に広がっているような・・・・・。当初非常に面白い試合の多かったドイツ・ワールドカップも佳境に入るにつれて段々手堅い試合増えてるなあ。当然ちゃあ当然か。
ドイツ 0 – 2 イタリア
アルゼンチンを破り優勝も狙えるチームになってきたドイツと、ユベントス・ペソット問題や主力の怪我など多くのトラブルを抱えつつも勝ち上がってきたイタリアの準決勝-1。
見る前は、ドイツホーム(しかもベストファーレン)ということで、またもやイタリアはオーストラリア戦のような省エネ疲労待ち「カテナチオ」になり果ててしまうのだろうかとすごく不安だったのだが、いい意味でその危惧を裏切ってくれた事にまず感謝。いや、イタリアだからこそ圧倒的ホームチームの優勢試合であっても、ドン引きカウンター狙いで凌いでいけると思っていたので、このリッピの方針選択が意外でもあり結果的には非常に緊迫感のある名勝負になったと思う。
前に対オーストラリア戦のような戦い方をやっちゃうからイタリアサッカーが嫌いだと書いたが、それは今でもかわらない。攻撃的な戦い方もできる面子が揃っているのに敢えて守備的に戦ったりして、それが勝利至上主義的観点からして「OK」だからだ。しかも相手がオーストラリアという、個々のレベルからすると明らかに劣っているチームに対してそういう事をやっちゃうもんだからムカついてくる。
ドン引きカウンターは、守備の壁が厚いため得点される機会も減少する反面、カウンターに割ける人数も限られるため得点機会も減少する。結果見る側としては非常につまらない展開になってしまう。その点この試合ではサイドバックのグロッソ・ザンブロッタもガツガツ攻撃参加してたし、サイドのペロッタ・カモラネージも2列目から飛び出したりピルロ・トッティのパスを受けたりして、かなり攻撃的にやってくれていた。こうなると当然守備の枚数が自然減したり、サイドバックの裏スペースがぽっかり空いたりするもんなんだけど、守備VS攻撃の駆け引きの醍醐味ってそういう限られた中でこそ面白味が出てくるものだ。実際カンナバーロの守備者としての優秀さが際立っていたのは、クローゼ・ポドルスキーとの1VS1でまず負けなかったからだろう。例えば30分頃のシュナイダーのシュート、50分頃のクローゼ・グロッソのシュートシーンなど、得点が入ってもおかしくないシーンは結構あったし、結果的に0-0で長いこと進行したが、互いに攻撃意識が高く、それを安定した守備組織が阻止するという、非常に面白いゲームだった。
ただ前半から高いテンションでお互いに攻め合い、同時にきつい守備を展開していたので、65分頃から動きが鈍り全体が間延びして大味な雰囲気になったのは仕方のない部分だろう。90分間テンション高いままというのは滅多に見ないし、リーグ戦やカップ戦でも70分ぐらいを境に、それまでテンション高ければ最後まで流した感じになるか、ラスト5分にあと一盛り上がりある感じになり、それまで平坦であれば70分から急に試合が動き出す(こっちの方が見た後の印象は良くなる傾向)。
結局イタリアがオーストラリア戦と同じようにラスト2分ぐらいで試合を決めてしまったんだが、それとは全く性質が異なる得点だ。オーストラリア戦では相手の攻め酔い・自身の守り慣れという展開から間隙を縫って出し抜くような、ある意味「セコい」得点だった(PKに値するファウルだったかという議論もあるが、レフェリーが吹いた以上それは全く問題ではない)が、今回は相手の圧倒的ホームゲームにもかかわらず、最後までポゼッション優勢を維持し、リッピもイアクインタ・ジラルディーノ・デルピエロといった攻撃の駒を投入し続けたことによる運の引き寄せ、勝ちに値する試合展開だったし、ゲーム自体も非常にいい内容だった。
ドイツに関しては、前のアルゼンチン戦後の乱闘騒ぎで不幸にもフリングスのぶん殴りが発覚し、出場停止になったのは結構影響したように感じる。フリングスなら前につないだのに、とかフリングスならミドルシュート(結構精度良いやつ)撃ってるのに、といったシーンでケールは横パスで回したり、自分でキープしてしまったりと、明らかに「ディフェンシブハーフの質の違い」がチーム全体に影響していたように感じる。バラックもいつものように攻撃を主とするのではなく、攻守ともに顔を出すバランサーのような役割を演じていて、結果FWのクローゼ・ポドルスキーもペナルティエリアよりちょい前ぐらいでパスを受けるシーンが多かった。
決勝でもこういう風な「攻撃的なイタリア」をやってくれたらうれしいが・・・・。どうかな・・・。
ブラジル 0 – 1 フランス
選手配置が勝敗を分けたかな。
フランスは、ジダンがサスペンションとなった試合以外で貫いてきた基本フォーメーションの4-2-3-1。アンリをトップに張らせ、ジダントップ下、マケレレとヴィエラがセンターで守備的な中盤を形成する。これまでの試合では、アンリがサイドに流れてクロスを送ってもゴール前に誰もいなかったり、決して完成されたフォーメーションではないが、フランスはジダンと共に心中する=ジダン最後のチームを意識した布陣となった。
対するブラジルは、なんとここまで貫いてきた「カルテット・マジコ」を捨て去り、馬力のないアドリアーノに代わって交代出場で結果を残していたジュニーニョを中盤に置き、ロナウジーニョをFW気味に用いる4-4-2。マジコ・スタイルは崩したが、パヘイラらしくやはりブタは意地でも使ってきた。
で結局これが裏目ったんだな。段々調子が上がってくると目されていたブタは相変わらず走らず、ロナウジーニョは通常より高い位置を任されたため、彼がボールを受けて突破を計る前の段階、フランス中盤の2人やサイドの囲い込みによってボールを奪取され、プレイする機会が激減してしまった。かといってフォーメーションを崩すように後ろに下がって受けることもなく、アドリアーノが投入され定位置に戻るまでは良いところがなかった。
一方この日のジダンは神懸かったようなスーパープレイを連発、マイボールを奪取されるシーンがほとんどなく、おまけにルーレットまでやっちゃったりして、ロナウジーニョとは対照的に見事なゲームメーカーの役割を果たしていた。
フランスはジダンの好調だけではなかった。アンリは相変わらずのらりくらりとしながらオフサイドラインのギリギリを狙っていたが、リベリの2列目からの突破がよいアクセントとなりフランスに勝ちムードを呼び込んでいたように感じる。
現地実況では、テレビ画面では見えないフランスのディフェンスラインの押し上げについて再三指摘していた。つまり、ブタがオフサイドラインの突破を試みようとしてもテュラムを中心にラインコントロールが素晴らしく、そうこうしているうちにパサーであるカカやロナウジーニョに中盤のヴィエラ・マケレレの寄せがやって来てファウルなしにボール奪取に成功するシーンが結構あった。大会前はフランスの中盤が疲弊してくると予想してたんだが、いやいや、一時言われてた「世界最高のセンターハーフ」にふさわしい活躍ぶり、ブラジルに攻撃の機会を与えず、攻勢をキープできた一番のポイントだろう。
ベスト4に名を連ねたことで、次は最悪負けても3決の試合があるため、ジダンのラストゲームは残り「2」となった。ここまで行くとは全く思わんかったなあ。
※試合を見終わり、アパッチ攻撃ヘリの特集番組を見ながら試合の感想を書き、書き終わってニュースを見ると中田英がサッカー選手を引退していた。なにこのギャップ。お前まだごって若手やーん。ちょいまだ詳しくわからんのでしばし静観しとこう。
ドイツ 1 (PK 4 – 2) 1 アルゼンチン
70分頃のリケルメOUTについて、試合後のインタビューではその理由を聞いてくれなかったのでまだ真意はわからんのだが、カンビアッソ投入=守備固めだとすると(俺はそう思った)、アルゼンチンらしくない交代だ。ここまでの戦いではリケルメを中心としたポゼッションを重視して、守備も読み予測を重視した高い位置からの囲い込みを主としていて、守備固めのように「相手の攻撃を受けて防ぐ」ようにはしていなかった。それにもまして、万一同点に追いつかれた場合(実際そうなったんだが)、リケルメ不在による攻撃パターンの激減をペケルマンは想定しなかったのだろうか。そんなハゲちらかしのように無為無策の監督ではないし、そういうリスクを込みでのギャンブルだったとしたら、それほどあのスタジアム内の雰囲気というか、ドイツゲルマン魂の執念を感じていたのかもしれない。
もう一つ重大なポイントとしてはアボンダンシエリの負傷交代だった。レオ・フランコがアボンダンシエリと比較してどうこうではなく、メンタルの準備もない第二GKがいきなり入って活躍できるほど、ワールドカップのトーナメントがやさしい試合で無いことは素人でもわかる。PKまでもつれたら負けは確定だろうとぼんやり考えていた。
しかも最後のカードがフリオ・クルスて・・・・・。おい、インテルのあのボケを、この局面で投入したって勝ちムードねーーーーーーーーーーーーーーーーーーんだよ。メッシだろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。結果的にはそれなりに活躍してたんだが、自ら突破を仕掛けることもなく、「勝ちオーラ」「得点オーラ」は微塵も感じなかった。
で、PK。カーンに闘魂注入されたレーマンの自信満々ぷりに対して、レオ・フランコの存在感のなさというか、こういう局面のオーラのなさっぷりはかわいそうすぎた。次々際どいところに決めてくるドイツキッカーに対峙して、右側に自信なさげに倒れ込むだけ。彼を責めることはできない。PKになった時点でこういう展開はそれこそアルゼンチン自身もわかっただろうし、例えばラームの横パスミスカットでマキシシュートなど、90分+延長戦の流れの中で試合を決める以外勝ち目はなかった。
この日ドイツは、アルゼンチンにはガチでテクニック勝負やっても到底勝てないと理解した上で、守備はガッチガチのリトリート、守備ライン+マスチェラーノぐらいまでのポゼッションは許容する代わりに、決定的な部分でのFWやリケルメの動きを封じることに集中した。最終的にポゼッションはARG 60 – 40 GERぐらいだったと思うが、ある意味この結果はドイツの思惑通りだったように感じる。
アルゼンチンはこの流れに身を任せ、自分らの戦術通り最終ラインからのロングフィードはほどんどなしに受けて立った。この点に関しては、エインセが長いこと怪我で不在で、彼の特徴である正確なフィードの有効性をテストマッチで試せなかったのもちょこっと影響しているかもしれない。ともかく、ゲーム自体が非常に緊迫した、言い換えれば動きのない展開に終始したのはドイツの作戦に依るところが大きいし、先制されてからのクリンスマンの采配は見事にハマリ、対するペケルマンはぶっ壊れた。
あとオドンコール投入後、シュナイダーと比べて頭空っぽで突進してくるものだから、それにソリンが手こずったのもじわじわジャブのように影響したのではないかと思う。ああいう空気読まずに突っ込んでくるタイプは攻勢の時活躍するよなあ。
あー負けちまった。前回トルコがブラジルに負けた時はまだ3決があって、しかもホーム韓国に勝って(確かハカンシュクルの最速記録ゴールがあったはず)3位になってくれたもんで結構達成感はあったんだが、今回は優勝も見越せるアルゼンチンがトーナメント戦の巡り合わせにより準々決勝で消えるというのは非常にもったいなく、非常にせづない。これが事実上の決勝だったと言われるように、ドイツには是非頑張って欲しい。
Round-8前
残り8試合、56/64が消化されたわけだが、そのうち半分(+ちょいぐらい)は試合を見ていない。GL中は1日3試合が10日連続、4試合が4日連続、間断なくRound-16の2試合を4日連続、初日の2試合と合わせ合計19日連続で世界最高峰の試合が組まれた。やっぱねー、これやっぱ、まあヨーロッパのリーグ日程の影響が大きいんだけども、やっぱ詰めすぎ。
事前に予定を見て、GLのうち気合入れてみる試合(アルゼンチン・ブラジル・スペインの試合など)を決めて、その試合がある日は時間をずらして1試合目に見るようにしてたので、その点問題はなかったんだが、その他の「見たいけどやや優先度が落ちる試合」についての相対的な価値低下がものすごかった。だってや、これ、ワールドカップの試合だぜ。通常なら多くの試合はプレミアムな試合のはずなんだけど、それがいくつも、それも連続であるとどうしても効用は低下する。一応見つつも、なんかこう乗り切れてない時があったりして、非常にもったいなかった。これはまあ、4年に1度のお祭りとして捉えればしゃーないかな。
予想のまとめで書いた
◎ブラジル
○イングランド
△アルゼンチン
▲ドイツ
4チームともRound-8に残っているという順当さ。強豪が熱い試合で勝ってきてるから今回のワールドカップは総じて面白い。予想の時点ではRound-16のやぐらを一切考えず書いたもんで、今時点での訂正を加味して最終予想。
◎アルゼンチン
○ブラジル
△イングランド
▲ドイツ
アルゼンチンはドイツに勝ち(勝ってくれ)、ドイツが消える。イングランドは当初の予想と比較して、リオとテリーの最終ラインでのプレイミス、GKロビンソンとの連携ミスが結構印象に残ってるのでちょっと落ち目。ブラジルは相変わらずブタがブタのままで、アドリアーノも馬力無く、カカとロナウジーニョの奮闘がかわいそうに見えてしまう。いっそフレッジ/ホビーニョに変えちゃうなんてどうだろうか。
決勝はこれまた願望込めて、ヨーロッパでのワールドカップでアルゼンチン×ブラジル、てなんかドラマ生まれそうでいいじゃないの。で、世界中の視聴者の前でソリンがキモいにやけ面でカップを掲げると。
※ようやく追いついて来たが、Round-16の試合も4つ見てないのがあるんだよなあ。でニュースとか見てるうちに結果だけ知っててせづねえ。
イタリア 1 – 0 オーストラリア
俺は、こういう勝ち方をしてしまうから、イタリアサッカーが嫌いだ。
全体的にイタリアの出来は悪かった。前半は、一発勝負のトーナメントということで、気温の高さも考慮してか古来伝統の省エネサッカー「カテナチオ」を敷いて、サイドバックがあまり上がらず、攻撃もFWの3人+ピルロだけでフィニッシュまで行く形を徹底していた。1トップのトニはでかい体格に似合ったスケールの大きさと、でかい体格に似合わない足下の確かな技術で、無理目なクロスやスルーパスも強引にシュートまで持っていってしまう。何度かもたらした決定機もシュウォーツァーの好セーブで得点できなかったが、個人の質としては非常に高い印象。展開はオーストラリアの攻勢で流れていったんだが、それもイタリアの思惑通りといった感じで、度々繰り出されるカウンターのキレが凄まじく、カテナチオのお手本のような戦いで終了。
後半、激しいプレーでおなじみのマテラッツィがおなじみレッドカードで退場した時が、終末への始まりだった。10人になったイタリアはFWとOMFを一枚ずつ残し、あとはドン引きカウンター狙い。オーストラリアは攻勢を強め後半ほとんどの時間帯流れを握っていた。ただシュートが決まらない。チャンスの芽は早めのファウルで潰される。GKブッフォンの鬼セーブ。
おや、これはこれは、毎度おなじみイタリア「ドM」サッカーではないか。
守り慣れしたイタリアと、攻めに酔ったオーストラリア、終了間際にドン引きだったサイドバックが仕掛け、しばらく守備をやっていないオーストラリアに誘うようなPK。相当のプレッシャーがかかろうが、決めるべき人がふつーに決めてしまう。
なんじゃこりゃあああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
この絶望的な負け方だけでヒディングを批判することは到底出来ない。大陸間プレーオフの高い壁を乗り越え、さらに初出場GL突破は彼の存在に依るところが大きい。
しかし、この流れに抗うことはできた。ヒディングが交代選手を次々投入することで、「90分で勝つ」というメッセージを伝えるべきだった。だが延長30分も視野に入れていたのか、結局アロイージを投入しただけで終わってしまった。いやこれは結果論ではなく、毎度おなじみのイタリアサッカーの光景を打破するため、メッセージを込めた選手交代はできたはずだ。ヒディングの采配が最後こういう形になってしまうのはある意味必然の結果であり、こんな後味悪い(イタリアファンにとっては激烈な勝ち方かもしれんが)勝利をやってしまうイタリアは強いチームだし、もう一度言うが、俺はそういうイタリアが嫌いだ。
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あんまむかついたもんで、録画しておいたデイリーハイライトを見てみると、誰か忘れたがイタリアにとって2002の韓国戦、トッティがシミュレーションで退場し敗退した、その主審がスペイン人だったということで、因縁めいたものを感じたらしい。また別なのでは(何で見たか/読んだか忘れた)リッピが先手を打って交代選手を的確に投入したのと、ヒディングの采配に迷いを感じたという、監督の心理戦に焦点を当てたものもあった。人によって見方が色々あるから面白い。
ポルトガル 1 – 0 オランダ
Round-16屈指の好カードのはずが、主審が壊した試合となった。
確かに両チームともフィジカルコンタクトを厭わず、危険の芽は早めに潰していくような雰囲気はあった。その背景にはこのゲームの難しさ・重要性について双方ともチームのコンセンサスがあった所以だろうし、前半のコスティーニャの累積レッドカード、60分頃のブラーリューズの累積レッドカードは妥当なジャッジングだと思う。「壊した」というのはここではない。
きっかけは70分頃、ポルトガルゴール前の混戦で負傷したリカルド・カルバーリョをピッチ外に出すため、ポルトガルのカウンターを止めるようにイワノフ主審がレフェリー・ボールとして試合を中断させた。こういう場合再開はレフェリーからのドロップボールで、守備側(この場合オランダ)が攻撃側(この場合ポルトガル)の陣地に大きく蹴り出し、攻撃側のゴールキック・安全な位置からのスローイン等でリスタートすることがマナーというか、それこそFIFAが掲げるフェア・プレイとして、暗黙のうちにそうなっている。
しかしこのシーンでは、レフェリーがドロップボールからのリスタートを徹底させず、守備側のコクーが横にパスしてそのままインプレー(オランダの攻撃)になってしまった。この直後まずデコが危険回避するように後方からのタックルでイエローカード、もめたところでスネイデル・ラフィーが立て続けにイエローカード。その後ポルトガルのプレーヤーが主審を取り囲み何か訴える様子が何度か見られた。
この裁定が引き金となり、互いのテンションの高まりが抑えられない形でラフプレーが頻発、「フェア・プレイ」の見地から主審は次々にファウル・イエローカード・累積レッドカードを出しまくり、終わってみれば9人-9人。会場内も最後までブーイングの嵐だった。
荒れた展開になってからは大味な試合ながらも、両者とも質の高い選手が揃っていてあわや得点というチャンスシーンが幾度となく作られたので試合だけ見れば面白い残り20分だったが、ジャッジに対する不信感は最後まで払拭されなかった。試合後の会見でファン・バステン/フェリペともにその点を指摘していたし、特にファン・バステンは決して負け惜しみではなく、実際に主審が試合を壊してしまったのでもう言っちゃえって感じでぶちまけたのだろう。その気持ちもわかる内容だった。
スタートからの熱さで言えば前日のアルゼンチン-メキシコに負けず劣らず、顕著に違うのはブサッカとイワノフのレフェリングの基準設定のように感じる。ヒートアップが予想される試合ではそんなに危険でないものについてはファウルを取らない(ファウルの判断基準を高めに設ける)ようにしたり、また危ないスレスレのプレーについては口頭注意を徹底したり、一旦クールダウンする間を作ったりするなどしないと、この試合のように壊れてしまうのだろう。ブサッカは流して好ゲームを演出し、イワノフは「フェア・プレイ」に則り、負けたオランダは後味の悪さ、勝ったポルトガルにしても手痛い傷(デコ・コスティーニャ・ロナウド)を負った。
アルゼンチン 2 – 1 メキシコ
中米と南米のテクニシャン対決。
予想通り接戦となったが、最後は全体的なポゼッションで若干分のあるアルゼンチンに運が巡ってきたという感じ。
アルゼンチンはいつも通りリケルメを中心にパスワーク主体で崩しにかかったんだが、メキシコディフェンスの各個のゾーン意識がに広く、ボールホルダーに対して2~3人で囲い込もうとする。この方法は当然、囲い込みが失敗したりいともあっさり突破されたりすると必然的に数的不利な状況が色んなシーンで出来てしまい、後手後手に回るケースもあるんだが、守備に回った時の全体の守備意識が高いので、大きなサイドチェンジ(時間的余裕が生まれる)以外は致命的な突破を許すシーンはかなり少なかった。それでも、サビオラに2回・テベスに1回GKとの1vs1を作られたが、オズワルド・サンチェスが勝負強さを発揮してナイスセーブを繰り返した。このキーパーはホルヘ・カンポス以来長いことメキシコの正GKに収まってる気がするんだが、俊敏でいいGKだ。
解説の宮内さんは「サッカーをよく知っている」と言っていたが、守備に関してはそういうゾーン意識の高さと予測の的確さがそれを象徴していると感じた。なのでアルゼンチンは流れるようなパスワークを展開することができず、非常に苦戦する戦いとなった。お互い切り札を投入する70分前後ごろまでは、結果的に硬直状態であってもいつゴールが入ってもおかしくない緊迫した展開で見てるこっちもめちゃんこ熱くなる。
今回ブルディソの怪我で、右SBにはミリトでもなくコロッチーニでもなく、スカローニが起用された。これが特に前半ブレーキになったように感じる。アルゼンチンはソリン/マキシの左サイドを重視したサイドアタックが多く、右はある意味攻撃において捨てにかかってるようにも見えるんだけど、スカローニは頻繁にオーバーラップし、右からゴール前にクロスを放り込むものの精度が悪く(ゆるいクロス)簡単にカットされてしまう。むしろその裏を狙われたメキシコのカウンターが何度か見られ、実際自身のミスを取り返そうとしてイエローカードももらってしまった。次回は本来CBのミリトあたりをコンバートして使って欲しい。
展開が動き出したのはメキシコがシーニャ、アルゼンチンがテベス/メッシを投入してからだった。シーニャは中央からのドリブル突破でアルゼンチンの固いディフェンスを揺さぶるなど、アルゼンチン寄りの自分としてはうぜーことこの上なし。彼にボールが渡ると(これまたバイタルエリア付近でフリーで受けることが多いんだ)、何か起こりそうな予感が巡り気が気ではなかった。これはペケルマンが珍しく奇策を用いたというか、安定していた2ボランチのうちカンビアッソを下げて、リケルメをフリーな状態でパス出し出来るようにアイマールを投入したのも影響しているように感じた。残ったもう1枚のマスチェラーノは、そりゃもう獅子奮迅。
アルゼンチンの前2人も巧みなメキシコディフェンスを引っ掻き回すのには成功したと思う。特にメッシの動きは機敏で危険な感じはしたが、正直得点が生まれそうなにおいはしなかった。彼らはとりあえずスピードと下半身の強さでディフェンスを揺さぶるのが目的であるように見え、勝負は中盤の攻撃参加にあるように見えた。
結局決勝点はマキシの「ワールドカップぽい」ミラクルなボレーだったんだが、両チームのディフェンスの固さを考えるときっちり崩して得点を決めるというよりも、ああいう形で運を引き入れたほうが勝利するというのも妥当な結果だと思う。それに俺、なんつーかGL見ててやっぱ昔の予想通りアルゼンチンが一番好きなようだ。別にメッシやリケルメといった個人に魅了されているのではないが(ソリンには顔で魅了されてるが)、ペケルマンが作ったチームのピースのはまり具合が見ていて非常に心地いい。Jリーグ開幕からサッカーを見続けて(といってもそのうち半分はテレビの都合や住んでる地域の都合でかなり限られたソースだったが)、最初にはまった1995ベルマーレ、ヴェンゲルグランパス、博実FC東京、アーセナル、2002トルコ、そして今回のアルゼンチンと、一貫性はないが方法がはっきりしてるチームが好きなようだ。
※リアルタイムと約3日ずれている。いくら何でも詰め込みすぎだろうが。見るのを捨ててるゲームもいくつかある。あーもったいねー
日本 1 – 4 ブラジル
ジーコは残された最後の運を使い切り、ただのハゲちらかしになった。前半34分、稲本のミドルレンジの横パスが運良くカットされなかったシーンがそれである。その後のサントスのノールックパス(タイミング含めて)、玉田の飛び出しとノートラップでの上角シュート、これらは個人のスキルが素晴らしく発揮されたシーンであり、ワールドカップでブラジル相手にちょっとの運と実力で得点したという点だけは、日本サッカーにとっては歴史的事項として残るのではないかと思う。
ただ運を使う時間帯が早すぎた。願わくば75分頃まで堪え忍び、このゴールが生まれていれば・・・。後はテンションと気合で可能性は残せたかもしれない。仮に2-0で勝利していたとしても、オーストラリアが自力勝ち抜けを決めていたので結果論で言うとどうでも一緒なんだが、試合前の目標設定として「2点差勝利」を掲げて、達成していれば賞賛に値する勝利だったはずだ。少なくとも充実感を得ることは出来た。
前半ロスタイムの失点は、専門家の指摘通りDFがボールウォッチャー状態で人(ブタ)を捕まえきれなかったというのが一番大きな要因だろうが、それ以前の問題点としてディフェンス組織が全く構築されていなかったという点を見逃してはいけない。日本の4バックは一般的なゾーンのラインディフェンスではなく、3バックの代替という認識で用いられている。守備の方法としてDFの4・MFの4で2ラインのゾーンを敷き、それからのプレッシングを基本とするのではなく、CBのうちどちらかは自分のゾーンに入ったFWなどのマンマークに付き、ボランチがCBのスペースをカバーするようなやり方を取っている。ブラジルのボランチでも攻撃的なジュニーニョが比較的フリーでボールを受けれたのは、ボランチの稲本がディフェンスラインに吸収されてしまうシーンが多かったからだ。ブラジルの2点目はこの影響が大きい。
また、ブラジルに易々とボールをポゼッションされ続けたのはもちろん個人のスキルの高さに起因する部分が大きいが、守備の連動がなされていない点もある。守備の寄せが単発で、パスコース限定や予測による数的優位がなされていないので、一人行ったら回され、また一人が行ったら回され・・・と、好き放題やられてしまう。
これらはジーコが守備についても自由放任を貫いたことに起因している。
本大会になっても3バック/4バックを併用していたのは高度な次元の戦術的な選択ではなく、あくまでMF(主にOMF)の枚数から逆算された選択であった。ジーコは明らかに戦術家ではないし(かといって用兵家でもないが)、自身OMF出身なので守備戦術に関してまるっきり興味ないのかもしれないが、Jリーグに所属するDFで構成される日本のディフェンスラインは、リーグ特性に合わせて3バック固定を貫いて欲しかった。あの場面、仮に中澤が守備のギャップを埋めるようにライン押し上げを敢行してポジショニングを取っていればブタは易々とオフサイドになっていた。あの失点は時間帯も含めて非常に悔やまれるもので、前半1-0なら流れからして後半凌げたかもしれないし、重要なポイントだった。
後の3点は、ブラジルという事を考えればしょうがない失点だった。これが今の日本とブラジル(出来5割)の実力差を反映している差だろうし、点差が開いてからの屈辱的なGK交代や大人と子供のボール回しなど、あの惨状に目を背けてはいけないと思う。勝つためには先制点からの流れを活かすしかなかった。それこそ「マイアミの奇跡」のように。それにメディアは大衆の興味が逸れないように必死で「2-0勝利」を掲げていたが、近い過去を振り返るとグループFではブラジルからの敗戦はオーストラリア・クロアチアともに織り込み済みだったはずだ。なので、ブラジル戦の結果も妥当であればその前段階のオーストラリア・クロアチアで結果を出せない時点で終わっていた。
終了後一人長い間倒れ込んでいる中田の姿は多くの人の印象に残ったのではなかろうか。あの時何を感じていたのか。そして、声をかけたのは日本代表の誰でもなく、試合前いくらか言葉を交わしていたロナウドだったというのも、今の日本代表チームの人間関係を象徴しているようで。このへんの裏事情というか、事後の生の声については現地取材のジャーナリストの方々のルポなんかを待ちたい。いや・・・・再三指摘されてる「ミックスゾーン取材」でそれは可能なんだろうか・・・。まあ誰かに薄い期待を持っておこう。個人的にもてきとーにジーコJAPAN総括はいつかやりたい。
アルゼンチン 0 – 0 オランダ
すでにGL勝ち抜けを決めている両者の1位/2位争い。試合開始前、マラドーナと会話するプラティニ・大会主催者ベッケンバウアー・オランダVIPクライフと、ペレ以外の「レジェンド」が集結したというのもこの試合がただの消化試合ではないことを象徴している。
アルゼンチンがリケルメを中心としたパスワーク主体の崩しに対して、オランダは両サイドからの突破を主体としたクロスからの空中戦勝負と、お互いにキャラが立ってる強豪国同士の争いは、結果的にスコアレスであれ面白い内容だった。イエローカードの兼ね合いもありお互いに1.5軍のメンバー構成だったが、それでも高いクオリティの試合を見せてくれた点がまず両者とも素晴らしい。
内容ではアルゼンチンの方が優勢だったように感じる。特に中盤でのフィフティのボールの支配権では、オランダがコクーの1ボランチに対してアルゼンチンは通常通りカンビアッソ/マスチェラーノの2ボランチと言うこともありほとんど奪取していた。さらに、オランダのパス出しに対する守備の予測も的確で、DFが積極的にパスカットを敢行しそれが成功するシーンもかなり多かった。ただそこからの速攻を安易に許さないオランダDFの素早い寄せもよかったし、さらにその囲い込みを受けても易々とボールを奪取されないアルゼンチンのテクニシャンどももすごい。消化試合でこれだけハイレベル、日本代表のしんどい顔と対照的すぎる。
ただこれはガッチガチの本気勝負とは全く違うだろう。まずオランダ、ロッペン/ジオのいない左サイドアタックは正直脅威でなかったし、スネイデルとラフィーの併用は機能せず、前半ラフィーがポジションを維持していた時間帯は存在が消えていた。後半になってFWに近いポジションを取るようになってようやく何とかなった感じだ。またその影響を受け、ファン・ボメルを外し1ボランチとなった結果は上に書いた通り。
アルゼンチンも、ソリンの代わりにクフレを左SBに配置して、悪くはないんだがソリンと比べると「ふつーのSBの動き」になっていて特徴が消える。逆にソリンもまた、アルゼンチンの攻撃のアクセントとして欠かせない存在なんだなあと認識させられた。
これで両チームともスタメンのイエローカードを消化し、悪くない体制で決勝T進出となる。アルゼンチンは順調にいくとドイツと当たる可能性があるんだが、そこさえなんとかできりゃあ、こりゃマジ優勝あるよ。