犬神家の一族 ★★★☆☆

犬神家の遺産相続問題に巻き込まれた私立探偵金田一が案外都合良く問題を解決していく話。
生まれる前だから詳しくは知らんが、この映画が作られた頃「横溝正史ブーム」てのがあったというのを聞いたことがある。「俺様はちこっとできる人間だ」的な主張を暗に示すためのツールとして用いられたらしいが、この後にも田中康雄のなんとなく滝川クリステルみたいな今思えばイタいブームがあったし、文学はちょいちょい時流の流れでダシに使われることがあるようだ。
でこのサスペンスという形式を取る場合は、そこに矛盾はもちろん少しの理不尽もいい加減な部分も見えてしまうと途端に興醒めしてしまうというリスクを抱えている。もちろんそのリターンとして、とりあえずなんか適当にぶっ殺し続けておけば、謎も深まるしテンションも維持できるので核が定めやすいという点でこのリスクはある意味当たり前だ。だからオチの部分のトリックをとうとうと語る部分には少しの隙もない方がベストだし、本来すべてのサスペンスはそうあるべきだが、とりえあずテンションで引っ張り続けてきた結果「あーもうめんどくせえから最後もテンションで押し切ってみっか」という思考が働くかどうかはわからんが、少なくともこの映画ではそう思えたのは、仮にも過去にブームがありまた現代でもおろそかでない角川ー横溝映画に見られるのは残念だ。
あら探しは嫌いだからメチャクチャ目立った所一つだけ。これ見よがしにババアがタバコ吸ってて、それまでの話があって、当然そういう結果になったときに棒読み気味の「あーしまった」はねえだろおまえ。
ただ話の作りとして、一見どうでもいい部類に入りそうな旅館の女中をかなりこだわりの視点で描いていたのはおもしろいと思った。無駄にフラッシュバックみたいのあったり。

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