白い巨塔 ★★★★★

浪速大学医学部助教授、財前五郎は腕の立つ医者である。がしかしその独善的な性格のために、直属の上司である東教授からは毛嫌いされている。そんな財前も東を煙たがっていた。そしてまもなく、東教授の退官に伴う次期教授選挙が行われることに。画策を図る財前陣営と東陣営の権力闘争。昔の日本映画の名作です。
後にテレビドラマでも同じ財前五郎=田宮二郎のキャスティングで放映したほどだから、当時はもの凄い反応があったんだろう。確かに映画での財前の悪い顔を見てしまうと、たとえばテレビドラマで他の誰かがもんのすごく悪ーい顔をしても田宮二郎にはかなわん。それぐらい悪い顔上手だ。
本編を途中まで見た感じでは、ああおそらく財前が教授になるかならざるかがクライマックスだなと思ってたのだけども、もちろん盛り上がりとしてはそこが頂点だと思うが、ストーリーの核は実はその後だった。それまでの財前の性格がもろにはき出され、内部闘争の後の外部との闘争、そしてその終結があまりに残酷。船井教授はナイスプレイヤーだ。
だいたいがこの、見てる側の多くが心持ち応援したくなる里見助教授のような医者であり人間として模範であるところの人が虐げられ、日の目を見ないという展開がいい。これは勧善懲悪といった単純な図式でなくて、もちろん月光仮面ならそうでなければならないが、現実の社会ドラマといった場合は下手にそうすると異常に臭いストーリーになってしまう。それは我々が現代の映画でも、安易に勧善懲悪に走る映画を見てなんの感動も感情も生まれない、惰性でしかない状況を見ればよくわる。
つまり里見助教授は完全な引き立て役。庶民の代弁者とか人間の善な部分な人格者とかでもない。行きがかり上そうなってしまったようなタイプだと思う。むしろそれで悪財前や悪いほかの教授たちがいっそう悪く見えてしまうと言う所に里見助教授のよさがある。
なので最後に悪が勝つという、至極まっとうな結末だけに社会ドラマ、人間ドラマとして見応えがあるし展開の妙というものもあると思う。前に書いた船井教授の法廷での弁、あれこそが白い巨塔の全体を語っているのだろう。さすがに名作というだけあって古くもなくとてもおもしろかった。

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