95億ドルが是非欲しい兄ちゃんと、それを手伝わざるをえない状況にさせられてしまうハッカーの恋愛物語。
まず内容以前に、映画の最初から最後まですごくカッチリ作ってある印象がある。物語であるから多少の理不尽や都合の良さはあるけれどもそれは流れの中で無視できる程度であり、たぶんハリウッド映画であるから莫大な予算があったと思うが、本作の場合かけるべきポイントに金をふんだんに使っているので見せたいポイントがいい感じに仕上がっている。それ以上に見ているこっちが物語に引き込まれていってしまうのがわかる。おもしろかった。
だからして、やっていることは長年培われたハリウッドエンターテイメント映画の形をとっているものの、やはり時代とともに洗練されている。最後の裏切り方にしてもしかり。爽やかな裏切られ方は後味が全く悪くない。これぞエンタテイメント。
冒頭で最近の映画はリアリティがないからつまんねぇよべらぼうめとあの男が語っていたが、そもそもハリウッドエンタテイメントにリアリティなんて前から無い。マシンガン撃ちまくりながら街中カーチェイスなんてHALOじゃあるまいし、現実に起こりうるわけがない。では映画の中でのリアリティといえば、それは登場人物がその映画の中の現実にどう考え、どう行動するか、それを見ている側が納得できるかどうかだと思う。その点本作はそれぞれが自分の思いに忠実に動いているので、要するに見ていてもどかしいということがない。これも鑑賞がスムーズに行った理由であろう。
その点アンチヒーローである虎ボルタ&ねえちゃんはテロにテロする組織を作り上げたし、ハッカーは娘ともらった金で二人旅、そこには演出上の正義感なんてのはなく、悪は最終的に罰されていないし、己が意志にそれぞれ忠実である結果だというのがいい。最後の虎ボルタの笑顔がこれでいいんじゃねえのと思わせてくれた。
カテゴリー: 映画
バトル・ロワイヤルII ★☆☆☆☆
Iの残党と新たに送り込まれる子供とのしょぼい対決の後、ぐだぐだになる映画。
深作欣二の遺作。
前作はわけもわからずに子供同士が殺し合うという設定と、今では名の知れた女優である柴崎コウ(前作ではファンデーション女というぐらい名前知らなかった)や安藤某やメロリンなどなど、強烈なインパクトのあるキャラクターがいたものでなんとか成り立ってた部分はある。
それが今作ではうるさい餓鬼がワーワー騒いでいるだけで、正直うっせえなとしか思えず、しかもストーリー自体も妙な展開になってしまって、あーこれ監督がおっ死んで相当迷走しとるなと、画面から滲み出てくるようにわかるのはナイスだった。
して粗方餓鬼が死んだ後、ヘタな難民を演じてみせる部分が非常に違和感があり、これは駄作であると、多くの方々は認定するであろうと確信した。
ゴジラ対へドラ ★★★★☆
ヘドロの中から生まれたへドラさん。
・原爆 対 公害
・水銀 コバルト カドニウムー 鉛 硫酸 オキシダンー
・かーえせー かーえせー あおぞらーをかーえせー かーえせー
・半漁人が踊るゴーゴー喫茶
・富士裾野100万人ゴーゴー
・突然挿入されるシュールな一枚アニメーション
・ゴジラが空を飛ぶ
このへんでイマジネーションをふくらませてください。じゃなきゃ、見ろ!是非!
ELECTRIC DRAGON 80000V ★☆☆☆☆
電気野郎の対決。
そもそも「鉄男」を前に見てそんなにいい印象持っていないやつがこんなもん見るなと。その選択の時点で間違っているが、それを差っ引いても結構きつい。
まずこの手のをやるなら、勢いでやってしまうならもうショートフィルムの次元でいいと思う。なにも中途半端に50分ぐらいではなくて、もっと短く凝縮した方がいい。というか50分という時間でさえすごく長く感じたんだから。
だめだった。ごめん。
エボリューション ★★☆☆☆
宇宙から降ってきた隕石に地球外生命体がいた。
これ見ると、やっぱ俺っていわゆるCGにまったく興味ないなぁと思う。だってその地球外生命体全般がCGで描かれているのだけれども、そこには怖いとか、綺麗とかすごいとかなんの感情も生まれず、ただ「ああこれ技術屋のオナニーだなぁ」としか思えない。
そもそも、地球外生命体の進化の過程を地球にあわせるってどういうことよ。発想貧困すぎるぜ。翼付いてりゃ空飛ぶってか。せっかく技術屋がオナニーしようとしているんだから、もうそいつらの思い思いのイメージでクリーチャーを描いて欲しかった。だから最後の最後に出てきた肛門だけはおもしろかったし、ああいうのの小さい版を途中の話の中で取り入れればよかったのに。
途中に挿入される小話みたいのがまた最悪で、「クリーチャーにびびるバカ」というのがふんだんに盛り込まれていて、あからさまに読めるし全然つまらん。あれには何の意味もないし、見ててバカらしく思えるだけだしないがまし。
しかも、俺ああいうタイプの黒人男優大嫌い。やったらオーバーリアクションするし、動きで小笑い取ろうとするし、なんだろう、エディーマーフィーのプロトタイプみたいな黒人俳優、あれいらねぇ。
全然リアリティのない話なんだから、だってそのへんの一科学者が全世界的な危機に立ち向かうなんて、しかも独力でやろうってんだから、そのへんでもう萎え萎えだし、かといって全くおもしろくないからコメディにもなりきれずすごく中途半端である。
こう書いてると、クソつまらん映画のように見えるが、実はその通りだったりする。ただ最後の肛門だけがなんかおかしかった。ただそれだけ。
現金に体を張れ ★★★★☆
競馬場の売上金強奪をたくらむ小悪党とやさぐれ警官としょぼいバーテンと馬券係の話。
スタンリー・キューブリック初期の作品。テイストが当時のヒッチコック映画にかなり似ているのは、当時がそういう方法しかなかったのかあるいは主流だったのかよくわからんが、正直前情報なしにこれがキューブリック映画だとは思えない。また白黒映画では色彩の美しさを表現するのもかなり限界あるようで。
でまあオーシャンズやキャッチミーでも書いたが、悪党が悪いことをするという話自体が勝手におもしろくなるというメリットは昔から知られていたようで、全体の流れは見ていて隙がない。ただこの映画では強奪に参加する4人のそれぞれの背景から性格的なものまでそれぞれ描いており、時間も互い違いに写しだしていてそれがなかなかおもしろい。とくにキーマンの一人であるヘタレ馬券係のヘタレっぷりがあとあと効いてくるような伏線になってるのが効果的だなあと思った。
して肝心の強奪シーンではその日一日のそれぞれの動きを場面ごとに切り取って、時間も結構むちゃくちゃに入れ替えてしまったり、逐一動きがわかるのは面白かったしだれる暇がない。ただその強奪方法が現代の基準ではありえない(バーで暴れるのはいいとしてもあれではごまかしきれてないし、逃げる所では危うく捕まりかけたり)のが、この映画では緊張感という点でちとマイナスだった。もしかしたらああいうズボラな人物という描写もかねて粗い犯行計画なのかもしれんが。
そして結末。最後に悪は勝たないというきつーい現実が待ってTHE ENDの字はその時代っぽくていい。たとえばダイヤルMや穴を最初に見たときの衝撃ほどではないが、面白い映画ではあると思います。
マルホランド・ドライブ ★★★★☆
自動車事故で記憶喪失になった女が、自分は誰かを捜していくうちにぐにゃあ~となる話。
これはまだストーリーというものが一応あるだけましなんだろう。なんつったってイレイザーヘッドの監督だから。そういう意味ではなんでもありなわけよ。特典映像のインタビューでも語っていたが、直観で見て楽しむというのをまず基本とする方がいいみたい。
とはいえこれだけ謎怪な映像がふんだんに盛り込まれていると、どうしても解明したくなり考え込んでしまうのもまた真。記憶喪失からの顛末はもうひとつの理想を追った女の儚く悲しい幻想物語で、箱を開けた瞬間から過去にあった事実(ダイアンの背徳な失恋物語)が描かれている。
こう見ると、幻想でのベティとリタの真実追究物語(箱を開けるまで)は、同じ価値観を共有するという恋愛物語として語られていて、リアルワールドでのダイアン(通称ベティ)の愛情が一方通行で、断崖から突き落とされ加減が最後の「ちっちゃい老人ウワー」へと行き着くというのもまたアリ。となると、リアルで接点持った人達を、マンションの管理人だったり映画監督だったり(これはそのままか)カウボーイだったり(これは不明)に割り当てるのも、すべてダイアンの脳内さじ加減一つということか。
ただこれじゃあ全く理解したとは言い難い。こういう本筋とは別の、例えば無駄に3人殺してしまうやつとか、カウボーイとか、末節の部分には及ばないことだから。で結局すべてひっくるめて感じてしまえという話になってしまうんだなあ。
冒頭の奇妙なダンス映像→笑う老人のフラッシュバックですでに足は浸っている。オーディションで、またクライマックス(俺はここだと思った)の歌舞場での独唱で見せられた歌のシーン。どうしてもあれ、ふたこぶ女に見えてぐにゃあ~となってしまうのはリンチワールドに入っていってしまってるからなんでしょうかね。
ストレイト・ストーリー ★★★★☆
73歳のアルヴィンが73歳ぐらいの兄貴に会いに行く話。
感動した。
俺デビッドリンチ強化期間であったこともかなり影響しているが、これまであたまを削ったら消しゴムができただの、像の顔の奴がフガーフガー、ふたこぶ女ダンス、ちっちゃいおばあちゃん、「はあ・・・?」な映像を散々連発し、見る側をぐにゃあとさせてくれたデビッドリンチが普通の映画を撮ってくれたことはとても感動的だ。
本作を語る時は大抵この感動的なストーリー、老いた弟が10年前の仲違いを後悔していて、ほんのちょっとのきっかけでそれを見つめ直す旅に出る、そしてその旅の過程でのロードムービー的人との交わりなど、作品内容自体の形容として「感動」「しみじみ」など用いられるが、むしろデビッドリンチの方にそれらの形容を用いるのがいい。それぐらい”心安まる”映画だ。
内容自体はまあ、いいんだろう。というかこれ例えば新宿のガード下にいる自由気ままに振る舞っている人々のなかから無作為に一人抽出して、同じ様にその人の人生を語らせたり、びっくりなハプニングなんかを八百で用意したりすると適当にリアクションくれたりして、また違った味が出ておもしろいのではないかと。つまり年輪重ねた老人が語る言は相対的に若い自分が体現することは不可能という点で重い言葉だし、それには耳を傾けたいと思うし、なにより最後のあっさり具合がこの、「しみじみかみしめる」という見終わった後の感覚につながっているんだろう。
昔いつだったかこれはマジに、人が捨てたジャンプとかを一冊100円という低価格で路上で売るという、ニッチな価格戦略で業界を席巻しているグループの人と、なんとかスタバでコーヒーおごるぐらいで小一時間トークできないかと考えたこともあったが、臭いが臭かったのと後々面倒くさそうということで、やめた。
わたしは貝になりたい ★★★★☆
俺も貝がいいかもな。
第二次世界大戦の被害者、BC級戦犯として処刑されていった下級兵士の想いを形にしたような作品。これまで自分はWWIIの戦犯といえば東条英機とかの戦争責任者、総じて死刑になってしまったA級戦犯を思い浮かべるだけであったが、それは表面上のことであって、実際はそれら戦争責任者に連なる膨大な数の下級兵士がいるわけで、そういった人たちは本作のように半ば冤罪のような形で裁かれていったのだろう。それとこの映画で衝撃的なのが、戦後の人生がどう転んだのかは紙一重の所だということだ。
本作は1959年に上映された、フランキー堺主演の映画のリメイクであるが、リメイク前の昭和34年にリアルタイムで見た人々はどれほどの衝撃だったのだろう。「もしあの時自分が・・・」そう思いながら見た人々、元下級兵士の人々がたくさんいたと思う。これを見て改めてオリジナルのフランキー堺のほうを見たくなった。それでないとこのリメイク作の感想なんて書けないです。
テルミン ★★★★☆
テルミン(楽器)を発明した博士とその周辺の話。
今もあるかもしれないが、昔ギター雑誌を買っていた頃に石橋楽器の広告でよくみたのがこのテルミンという名のエフェクターだった。たしか「イシバシ楽器がつくりました」てのがセールスポイントで、「かのジミー頁も本番で使用したとかしないとか・・・」みたいな文句が書いてあったと思う。まずテルミンと言われるとそれが浮かんでくるが、それこそ「テルミン」のような奇妙な音がでるエフェクターだったらしい。今調べてみた。
これは奇妙な音が鳴る楽器を発明したテルミン博士の伝記的ドキュメンタリー映画で、出演者もすべて本人、そういう点で映画を見ているというよりETV特集のドキュメンタリーを見ている感じだった。しかしドラマがあればとりあえず映画の体をなすもので、この博士の万丈人生を振り返る作業は面白い。それを増幅させてくれるのが当の本人が発明したテルミンの音色。しかし色々こき使われたくせに長生きしたなぁこのじいさん。