慶應義塾大学通信教育課程の噂:卒業率(その2)

 それでは、筆者の考察(ともいえない妄想)を書くこととする。それにしても、科目試験まで一週間を切っているというのにこのような駄文を書き連ねているのは明らかに時間の浪費なのだが(しかも毎朝出勤途中に会社近くの喫茶店に寄って書いている)、中途半端に終わっていると落ち着かないので。
 まずこの表の全体を集計すると、通信教育課程が始まってから現在までの卒業率が約5%ということがわかる。この卒業率は噂でよく出てくる割合とほぼ一緒である。しかしながら、これは通信教育課程発足直後の現在とは全く環境が異なる時代の数値も含んだものであり、直近ではどうなのかがぼやけてしまっているように感じる。そこで、もっと単純にその年度の卒業者数を入学者数で割った割合を「単純卒業率」として出してみる。
 当然ながら、入学者がその年度にすぐ卒業することはあり得ないので、この「単純卒業率」は正確な卒業率を表してはいない。ただ、分母である入学者数が安定しているのであれば、ある程度実態を反映しているのではないかと思って出してみた。これを見ると、発足直後は除いてしばらくは5%を超える卒業率であるが、1970年代には5%を切る低迷期が続き、その後1980年代はほぼ5%で横ばい、そして1990年代後半以降は急に卒業率が跳ね上がり、直近では20%前後の卒業率となっていることがわかる。
 しかしながら、この直近の高い卒業率はあまり実態を表していないだろう。この時期、入学者数がそれまでの3000人台から一気に1500人程度まで激減し、先ほど書いた安定した入学者数という前提を満たしていないからである。たとえば直近の2007年度について考えてみると、「ニュースレター慶應通信2008年春季特別号」に記載された卒業生の在籍年数は、12.5年以上(つまり最長在籍年数までに卒業できず、再登録して卒業した人)が1/3の101名となっている。この人たちが入学したと思われる13~16年ほど前の入学者数は5000人前後もいる。これだけを見ても、この「単純卒業率」があまり当てにならないことがわかる。
 ただ、そうはいっても近年卒業率が急速に改善されているだろうことは想像ができる。1980年代までは200人前後で安定していた卒業者数が、直近15年ではほとんど300人を超えているためである。今後、入学者ラッシュの影響がなくなった後の卒業者数がどのように推移するのかは興味深い。
 また、もう一つの注目点は「退学率」である。通算の入学者数・卒業者数と現在在籍者数から退学者数=入学者数-(卒業者数+在籍者数)を算出し、そこから退学率=退学者数/入学者数を求めると、実に90.7%にも上る。この数値も直近ではなく通信教育発足以来の通算であるが、いかに途中で挫折する人が多いかの傍証にはなるであろう。
 さて、このように慶應の卒業率について考察してみて、絶対的に卒業が難しいことはわかったが、他の大学と比較して卒業は難関なのであろうか。直近で入手できるデータとして平成20年度学校基本調査があるが、これによると大学通信教育の正規課程在学者数は185,719名、平成19年度中の卒業者数は16,232名となり、これで求められる「卒業者/在学者」率は8.7%となる。同じ計算を慶應でも行ってみると、平成19年度在学者数9,383-1,202=8,181名、卒業者数323名であり、「卒業者/在学者」率は3.9%となる。どちらも厳しい数字だが、このように比較すると、やはり慶應通信の卒業の厳しさは際立っている。
 以上で卒業率についての考察はとりあえず終える。やはり中途半端なデータだけで判断するのは難しい。ただ、慶應にしても他大学にしても、通信教育で卒業するまでこぎつけるのはかなり大変だというイメージは持ったのではないだろうか。
 次回以降は、なぜ慶應通信の卒業が難しいのかという点でよく挙げられる噂である、「レポートの返信が遅い」「採点が厳しい」について考えてみる。

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