10ミニッツ・オールダー/人生のメビウス ★★★★★(企画意図を買った)

7人の監督が「時間」をテーマに10分・予算同額で製作した7つの短編映画。ちなみにこの中の監督の映画を見たことは無く、名前だけ知ってるのがジム・ジャームッシュとヴィム・ヴェンダース。
1.監督:アキ・カウリスマキ テーマ:結婚
10分で結婚を決めたらしいが、石油を掘りにシベリアに行くから決断をするという以外は動機付けが不明。唐突にバックバンドに時間割いたり、バーテンの目線が熱かったり、最後の落ちも「あっそう」、これ10分は無理あったんじゃなかろうか。
2.監督:ビクトル・エリセ テーマ:生死
これも微妙だなあ。生後間もない赤ちゃんの生死を軸に、各世代の人間がそれを見守っているという事で時間の幅を表現しているんだが、正直よくわからん。ぼんやりしすぎ。
3.監督:ヴェルナー・ヘルツォグ テーマ:未開の住人
上二つのテーマは抽象的だったが今度はがらっと変わってドキュメンタリータッチ。冒頭から説明文で始まるのは超短編映画ではアリな方法だろう。未開の原住民が現代の文明に出会って、石器時代から現代へ一気に移り変わった状況について描いている。時間的には数千年の隔たりを数十年でなんとかしてしまうのは人間の柔軟性だろうが、すべてを飲み込めていない状態でTシャツやキャップをかぶっている姿はやはり異様だ。
4.監督:ジム・ジャームッシュ テーマ:女優のブレイクタイム
女優の休憩時間10分の出来事を映してるだけ。ほんとそれだけ。「休憩」といいつつ全然休んでねえじゃねえかということか?
5.監督:ヴィム・ヴェンダース テーマ:緊急時の10分は超長い
間違って大量のドラッグを摂取してしまった男が病院を求めて徘徊する話。自分自身ドラッグの経験はないが、たとえばこれを猛烈にうんこがしたくなって家路を急ぐ10分と置き換えると、そのスリリングな展開や自分自身吹っ切れて絶叫したりいろんな幻覚が見えたり、あるものがものすごいスローモーションに見えたりするといった、いわゆる「トリップ感覚」はすごいわかる。なおかつこれは生死のかかったドラッグの大量摂取。10分でハラハラドキドキとスリルと最後に笑いを盛り込んだのはすばらしい。
6.監督:スパイク・リー テーマ:ゴアVSブッシュ
「未開の住人」と同様ドキュメンタリータッチ。こちらはゴア陣営のスタッフの証言から当時も問題となった大統領選挙の内幕について描いている。でもこれってヒストリーチャンネルやディスカバリーチャンネルがやるべきことで、別に映画でやる必要は無いよなあ。
7.監督:チェン・カイコー テーマ:昔あった街並み
今中国は臨海地域の経済繁栄期で、冒頭に象徴的に映し出された超高層マンションがいたるところにできてそれが飛ぶように売れるらしい。たぶんこの監督さんは中国人で、そういう過去の遺産をぶっ壊し高層マンションに移行していく現在の中国を皮肉っているように感じた。
以上。中では「緊急時の10分は超長い」が一番面白かった。いわゆる映画通は1・2・4あたりを好むと思う。自分のようなハリウッド中心系は5・7。ドキュメンタリーが3・6て感じかな。ドキュメンタリーは映画でやる意味ないような気がする。いずれにしろ、こういう企画というのはそれそのものが面白いので、もっとやりゃあいいのにな。

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