黒い家 ★★★★☆

昭和生命保険に勤務する若杉のもとに女性の電話「自殺でも死亡保険金入るんですか?」。その後、菰田重徳という男から呼び出しがあり、行ってみると子供の自殺体が。前に電話した女性とは、重徳の妻、幸子だった!子供は自殺か他殺か、こいつらフツーかサイコなのか、そして若杉はどうなる?
金融腐蝕列島といい、当時の新作であるISORAといい、このころの角川映画は現代社会に現実にあるヴィヴィッドな問題をテーマに映画製作を行っているようだ(たまたまかもしれんが)。金融~は銀行の不良債権問題、ISORAは多重人格、そしてこの黒い家は保険金殺人のサイコパス。ISORAは観てないのでなんともいえないが、これらの近時のテーマをプロモーションには巧みに使いつつ、いざ観てみるとただの話題性だけでない、作品としてしっかりとしたものに仕上がっているのもまた、角川の特徴である。
配役が面白い。ピカロの菰田夫妻に西村雅彦と大竹しのぶ。キレたサイコ野郎として西村雅彦はもうそのまんまOKだけども、大竹しのぶはちょっとどうかと思った。大竹といえばいいお母さん、若い頃を知らないだけにそういうイメージがつきまとい、こういうサイコ野郎はチョット無理あるんじゃなかろうか、こう思ったわけだ。
しかししかし、西村雅彦の印象をナシにするほどサイコである。逆にこういう映画にも関わらず西村がオーバーアクションに見えるほど内面的サイコをすばらしく表現している。段々と彼女がテンションをあげていく様、それまでの経緯からくる怖さなど、すばらしいもんだ。同時期に「鉄道員」を撮ってたんだから、幅は相当広い。大竹しのぶは凄い。
そして相対する若杉、こちらもテンションが高い。顔が面白かった。
演出として、「いつか観た風景」を後半で両極端的に出す効果(便所とか)が映画の怖さを増幅している。ホラー映画はほとんど観ないので、これが斬新かどうかわからないが、これは怖かった。
ただまあ、サイコ野郎に「シャイニング」があるが、こちらは場面(ホテル)が醸し出すサイコな雰囲気、最後までなんだかよくわからなくて怖さ満点なんだが、本作は精神分析なんぞがこれ見よがしに菰田夫妻の心理を説明する、いわばサイコの説明があって、それより周りの状況から観る側に嗅ぎ取ってもらう方が面白いんではないかと思った。
それと死体は映し出さなくていいんじゃないか?若杉の表情とかで、観る側に想像させた方が凄いものだし、死体が人形とかだと「うまく出来とるな~」「あすこ変だ」とか、少し引いてしまうのです。

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