白痴 ★☆☆☆☆

長い長い戦争の中で人々の心は荒み、娯楽は国家が提供するテレビ番組だけだった。そのテレビ局で作家として働いている男、このような現実感のない今にうつろな彼が、一方で虚飾の権化であるテレビに虐げられ、一方では白痴の女にリアルを感じる。
手塚眞監督作品。新感覚ヴィジュアリストなどと呼ばれていたが、はたしてそのヴィジュアリストが映画をつくったらどうなるか、しかも主演は浅野忠信、これはなかなか面白いのではとの期待はあった。
しかし・・・・。なんというかその、方向はわかる。どうしようもなく見るに耐えない映像を頻繁に用いることでアイロニックにその現実を描いていること、その現実に気付いていてもどうしようもない側と、気付いてないのか気付こうともする気力すらないのか、甘んじて享受するしかない一般人ども、これを際だたせるための演出なんだろうかもしれんが、はっきりいってウザい。
あんなどうしようもないテレビ局でのシーンをこれでもかと長回しで見せられると、もうそれはそれは耐えられない苦痛になり、それのどこが新感覚なんだよと疑いたくなるほどの古くささである。仮にアイロニックゆえの古くささだとしても、それに対する新感覚的新鮮さの感じられる映像が全く見られない。
あの爆撃か?う~ん、確かにすごいけどなぁ。凄いだけ。
浅野主演の「孔雀」の方がよっぽど新鮮さは感じるし、つきつめるなら松田優作監督の「ア・ホーマンス」ぐらいのツキヌケ方が欲しかった。うんこだった。

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