遊星からの物体X ★★★★★

アメリカ南極調査隊のもとに、他国の調査隊から一匹の犬がやってきた。その国に連絡すれども反応は無し。行ってみると、変な”いきもの”の焼けこげた体が。そして犬はクリーチャーに変身し襲いまくる。
SFXのクリーチャーホラーなんだが、ものすごく怖い。もちろんデロンデロンの視覚的な恐怖もあるんだが、それよりも彼ら密室空間にいるもの同士の猜疑心がビンビンに伝わる恐怖感というものがすばらしいと思う。
クリーチャーも、これが現代のCGで作られたものだったら全然怖くなかったと思うが、当時の技術でがんばって汁を噴き出させ、内蔵をえぐり出し、気持ちの悪~いゲテモノを描いていると思う。特にあの心臓マッサージ!すげーぇ。せーぇのでバキーンキャー!です。
そして人間どもの争い。血を採取して火にかざしてみるシーンはこの映画を象徴していて、ラストの大ボスとの戦いよりこちらの方がクライマックスと言えるのではないだろうか。実際、血がビターン!ブルブルー!ってなったときは大声出してびっくしりたし、ホラー映画でも滅多にビビらない自分があそこまで恐怖したのは、それまで溜まりに溜まった猜疑心が一気に吹き出した感じで、ものすごかった。横ではロープにつながれっぱなしだし。
ラストシーンは後にわかったのだが、あの意味深な二人の会話にはやはり意味があった。疲れきった隊長の、絶望的な感じと、自分でもソノ自覚のある黒人隊員。「言っておくがー・・・・」「言わなくていい」「聞いてどうなるもんでもない」なんか変な感じだと思ってたが、確かに隊長だけ白いよ。それが強調されてる。くぁ、コワー。
是非観ることをお勧めします。 

死霊の盆踊り ★☆☆☆☆

バカ二人が自動車運転中に墜落、満月の夜に行われる妖怪どもの盆踊り大会をひたすら覗き続けるというバカムービー。
乳を放りだした女が踊るだけ。それを延々と覗き、また映し出している。なにか作業しながら見るのにちょうどよい映画である。
映画館で見なくてほんとに良かったと思う。多分映画館でこの映像を見るしかない状況ならば、「あーもういまアフリカのどこぞで子供作りまくってる反面死にまくってるのだろうな」とか「こんなんみててごめんなさいお母さん」とか、いろんなことを考えそうだから。そういう意味では、思索に耽りたいときにその触媒として鑑賞するのもいいと思う。よくはねぇが。

SNATCH ★★★★☆

86カラットのダイヤを巡って、街のギャングのボス・ボリスと黒人3人組、ロシアの殺し屋二人が争う。一方で裏ボクシングの八百長を巡る、街のギャングのボス・ターキッシュとトミー、そしてトレーラーでくらすパイキー一味。この二つの大筋が折り重なり、ストーリーが成り立つという映画。
まずテンポというか話の流れが速い。人物も多いし話がわかりにくいんだなぁ。見てるうちにだんだんわかってくる感じ。それプラス、最近よくあるスタイリッシュ映画のような臭さがあるけれども、あれらのように無駄に斬新!鮮烈!ではなく、独特の感覚は覚える。タランティーノのまねごとではないと思う。
同系列であるパルプフィクションを最初に観た衝撃と比べたらはやり劣る。パルプは人物ずらしと時間ずらしをうまいこと使って、見終わると衝撃的な印象が残るが、本作は人物ずらしオンリ、しかも人物が多いので互いの相関を一応把握した頃にはあれよというまに最後になっており、そしてクライマックスに一気にはじけるという、なんだそのためかよというすかされた気分になるのである。
クスッと笑えるし、最後はとてもおかしい。ただ詰め込みすぎだと思った。だからもう一度観る気にはならない。しかし、決してこの映画は一過性のエンタテイメントではないと思う。本当におもしろければ時間なんて短く感じるものだから、そのへん割り切ってくれるとなぁ。

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ★★★★★

宇宙世紀0093、地球連邦は宇宙全域を支配し、なお反乱軍は残っていた。ジオン公国の生き残り、シャア・アズナブルは自らジオン再興を目指し、連邦軍に戦いを挑む。地球にコロニーを落とすという作戦を防ぐアムロやブライトや。いやぁ、なつかしいなぁ。
公開当時は1990年前後だと思うが、これは劇場で観た記憶がある。その後のF91も観た気がする。最後のコロニーどーんはなんとなく知ってたし。こういう記憶の底にあるものを忘れた頃に再び見るというのは、なんにしてもそれがおもしろければいいものですね。
でまぁこの映画がおもしろいと思えるには、当然0079の頃のファーストガンダムを通過せねばならんのだが、まずファーストのどうしようもなくドロドロした人物描写が相変わらずだったのでよかった。ただ映画ということもあり、実質的にはシャアVSアムロという構図にはなっている。ブライトやミライ八島も登場するがあんまし活躍しない。とくにミライは懐かしさで登場しただけ。
そしてもう一つのキーパーソンが直接には出てこないララァスーン。ほかにあの金髪女とかクェスパラヤもそうだが、これらがシャアのマザコン爆発触媒になっている。多分シャアがこんなにニュータイプでない劣等人間を否定するのは、適切なママがいなかったからだろう。だからカリカリしてるんだ。

天国と地獄 ★★★★★

ナイスシューズ社の重役、権藤氏は他の重役による会社乗っ取りの呼びかけを拒否し、密かに進めていた単独の会社支配に動いていた。その矢先、子供を誘拐したという電話が。身代金を払うと会社支配のための株式が手に入れられない。子供を見捨て社長になるか、子供を助けて文無しになるか、運命の決断・・・!
非常に見やすい!これに尽きる。サスペンス本編の緊迫感と、刑事達の高笑い、この安堵感はなんだろうか。それぐらいこの映画のストーリーには惹きつけるものがある。
大まかに二つにわけると、前半は権藤の葛藤と刑事の動き、そして列車のシーンでそれが高まり、鉄橋のところは「うぉぉぉぉ」って思う。すごく興奮する。「真一ぃぃぃ」って自分も叫んだし。
そして後半は刑事中心の追跡で、これは今となっては定番の動きだが当時はどうだったのだろうか、おそらく主役でない刑事達だけを写して、犯人にだんだん迫っていく描き方というのは斬新だったのではないかと思う。
そしてまぁ相変わらず人物の際だったキャラ付けはうまい。お互いのキャラがお互いに相乗効果でいい具合に働きかけ、それぞれ印象深い人物になっている。
七人の侍は強烈に長い分、人物や「侍」「百姓」といった総体の描き方は丹念だけども、ストーリー映画として本作の方が魅力的である。富民VS貧民の構図なんてのはそんなにビンビンに感じなかったし。七人の侍は、侍VS侍よりも侍VS百姓という構図にやられた感じだが、本作ではそのストーリーの流れにやられた。ズキィーン。

ピストルオペラ ★★★★★

ストーリーはあって無いようなもの。どうでもいい、ってわけではないけど、特にこの監督の場合ストーリーはメインじゃないと思う。
まず観終わった後の後味がものすごおおおおぅく悪い。「おもしろくねぇ映画を観てしまったなぁ」では絶対無いのだが、なんというか「狐につままれた」ってやつか。ラストは大笑いしたし。
昔のモノクロの映画(すべてが狂っているなど)はそうでもないんだが、カラーになって映像に色彩が持ち込めるようになってからは、この鈴木清順という監督の映画は実に特殊な映画が多いようで、実際前作から10年ぶりという本作も要するに”意味不明”なんである。
問題は観る側がそのアドリブではない、最初から決められた「意味不明なセリフ」とか「意味不明な映像」を受け入れられるかどうかだ。映像はまだしも、突然「ちゅうちゅうたこかいな~」とか言われてしまっても、「はぁ?」「うわくっせぇ」の人は多いと思う。
自分の場合清順映画は音楽の聴き方と同じ感じになる。自分は音楽を聴く場合、その歌詞すらも音の一部として聴くように自然となっている。例えば「愛してる」という歌詞があればその意味などはあまり気にせず、その曲全体のつながりとそのときの「愛してる」の音の響き具合、こっちを重視している。つまり、セリフという音声もすべて映像の内に取り込み全体を一つの映像映画として観る感じ。だからこういう意味不明な映画では、セリフにだけ意味があるよりは、全体が意味不明という方がツキヌケているのでよろしい。
そうなると、意味不明なセリフさえこの映像の一部なのであると感じられるから意外に楽しんで観れる。そう、いかに楽しんでみようとするかが大事だと思うんだなぁ。いきなり「わけわからんぞてめぇ」じゃなくて。
でまあ、映像はすばらしいです。これは実際観んとわからないと思うが、キメの映像がきっちり様式キマってるのが格好いい。確かに、こりゃやりすぎじゃろうがと思う部分(特に後半の妖怪博覧会での決闘)はあるけども、ここぞの清順節はやっぱかっちょいい。
で音楽はEGO-WRAPPINのブルースラッパ、要するにラッパ万歳です。この映画のヘンテコな和風によくあっている。ただあの幼女のテーマ曲は納得できないがねぇ。
幼女といえば、この映画には児童ポルノが登場するのです。小学校高学年くらいの子供(パンフレットによると1990年生まれ。って平成生まれじゃねぇか)の少し膨らんだ乳やおしりが数回バーンと、バーンと、出るのです。瞬間はジーッと見てしまったが、あれはいいんだろうか?抵触しないんだろうか?まぁ映倫通ったってことはOKなんだろうが、ドキドキした。全体的な映像がエロいのだけど直接的なエロはそこだけ。それだけにインパクトでかいよ。幼女だし。
主役二人もがんばってた。江角の元々からのオトコオンナのような雰囲気と野良猫のキャラクター、また山口小夜子の特殊な雰囲気も良いと思う。というか映画の映像感覚がOKならだいたい、役者がダメだったってことにはならんと思う。
総じて、自分は楽しめましたがこれは人にお勧めできません。後味悪いし、好き嫌いは激しく分かれると思う。
何かで見た監督のインタビューで、「この映画で伝えたかったことは何ですか?」の質問に監督「そんなもの、ありませんよ」←こういう82歳っていいねと思えたら観よう。

アメリカン・ビューティ ★★★★★

レスターとキャロリンは、夫婦共働きで郊外の一軒家に住み反抗期の娘ジェーンがいるという、普通のアメリカの家庭。自分があって家族があるのだ、家族こそ最高、彼らはこういう現実的幻想の前に自らを塞ぎ込み抗い続けてきた。その結果が家庭崩壊に仕事の不振。そんな彼らにもそれぞれ少しのきっかけが訪れ、そこから自らのビューティーを追求することになる。
この映画では主人公のレスター一家三人と、隣家の住人の大佐とその息子、そしてジェーンの表面的友人アンジェラ、都合6人の関わり合いで物語が動いている。彼らがそれぞれある時点からの人生の美学、私はかくある”べき”、こういう思いを抱くようになってからはおのずと最後の悲劇的な結末は見て取ることができた。
現実にふとした瞬間思いつくような事を、たとえばあの女とやりてぇなぁだけどもそりゃ無理かだって娘の友達なんだぜと、仮に一瞬(この映画で最後に語られる一瞬とは違う、物理的な一瞬)思ってすぐにその思いは消える、その感覚をそれぞれにスーパーデフォルメして喜劇的に表現したのが、そういう物語全体が哀しいけどもおかしかった。こういう類の喜劇を見ると、やはり喜劇は悲劇と表裏だと感じられる。
そしてこの映画があくまで喜劇の体裁を保っていられたのが、話が進むにつれてすんごく重~い感じになっていくのだけれども、まっことくだらぬ事を随所に入れてて、この辺はゲラゲラ笑えるというところだ。朝起きて自慰をしてそこから先は地獄だというのが生身の人間の本音だろう。そう、見てる側がおかしい・笑えるというのはそれが自分の思いだからで、それを解放させるのは笑いの方法としてある。
結局ビューティーってなんだろう。表面的なビューティーなんてのは、この映画で言えば「赤」であり、「アンジェラ」であり、「ファインダー越しに映る物像」である。しかしそうでなくて、一見救いようのないような絶望に収束していったレスターだったが、それは六者六様それぞれの美に向かった結果なのである。特に最後に救われなかったキャロリンと隣家の大佐、彼らはその時幸せだったのだろうか。
またいつか、完全に内容を忘れたころに観ようと思う。そしてその時また自分のビューティー、自分は幸せですかと問うてみたい。
いい映画だと思います。

教祖誕生 ★★★☆☆

ど田舎に現れた、訳のわからぬ新興宗教団体。あからさまにうさんくさい神様が、あからさまなサクラの万病を治し、宗教本を売り歩く。そんなどうしようもない商売に魅せられた青年あり。彼もこの商売に加わることになった。
この映画が作られたのがおそらく90年代初め頃、その頃からかどうだか、今では崩壊しているオウム真理教や、今でもあるんだかないんだか、統一教会やらなんやらが芸能人といわれる変な奴らを伴いマスコミに登場し、一般に知れ渡るようになってきたまさにその時期で、そういう背景を考えながら観るとなかなか面白い。
日々の生活に根付いている仏教習慣・文化はともかく、これこれこういう明確な宗教に属する、属しようというその根性がわからん。端から客観的に見るとあからさまにうさんくさくぼったくられてるのに自らは気づかない宗教野郎、たまーに以前なにかの宗教団体に属していて、金をせしめられたので賠償してほしいという阿呆を見るがそれは間違いなく己のせいであり、しかもその宗教にいる間はなんらかの問題を忘れ去れさせてくれるほど没頭していたのであろうから、そのぼったくりを賠償しろこのチンカスとぬかしてしまうのはあまりに図々しいし滑稽だし、これは高らかに「私は阿呆です」と宣言するのと同等だ。
オウムは別として、福永なんとかというやつの宗教も結局は金のふんだくりだし、全国にたくさんいると思われる仏教以外の特殊な宗教に属する人々、「帰依しとるのだワシは」と感じている人々、これらは「金を払って安心感を得る」という”神(=金)”との契約に基づいてその宗教にいるので、一度入ったが最後絶対ここに帰依し続けるのだという強い覚悟はやはり必要だろう。そうでなければ夢から覚めた後は悲劇的な喜劇が待っているだろうから。

ビッグ・リボウスキ ★★★☆☆+

ロサンジェルスに住むジョン・リボウスキ。その彼はリボウスキ違いが元で、借金取りに凄まれ、絨毯に小便をされるハメに。弁済を求めるべく彼はもう一人のリボウスキ、大金持ちの方のリボウスキに会いに行った。
一通り見た感じとして、なにがなんやらどうでもいい話だったなぁと。そう、最後にカウボーイが締めているように、「あれやこれや色々おかしかっただろう?」これがすべてだと思う。
要するに「あれやこれや、色々おかしかった」だけの話なんだ、これは。特に感動するでもなく納得するでもなく、また大笑いするでもない。ただ、おかしかった。何度かくすりと笑った程度の話だ。
しかしそれこそがこの映画の楽しみ方なんだろう。一言で言えば喜劇の楽しみ方。おかしい中に哀しみがあり、この作品を見て、まぁどうでもいいじゃねぇかよこんなもん、クソったれの時間の無駄だと感じるならばそれはそれでよいと思う。今回たまたまあってないのだろう。
内容ではベトナム上がりのあのデブはかなりいい味出してるキレキャラだし、リボウスキの気違いぶりもいい。ボーリングトリップとか。このへんを受け入れられるかどうか、変に臭ぇなこの野郎と感じたらたぶんこの映画は受け付けられないだろう、自分は楽しんで観れました。
だからして、★3というのはある意味最高点だ。なんというか、おもしろくないということはないが、非常に魅力的だということもない、大爆笑だということもない、もう一度観たいかと言えばそれは違う、しかししかし、単におかしかった。その、中ぐらいの範疇で最高だと言える。中の上。そうだなぁ、+を付けとくか。