脚本家、佐志は大物プロデューサーから映画の脚本を依頼され、取材に行くことになるが、そこから先色々変な人みたいな人と会う。
まず映画の全編にわたって言えることだが、もの凄く不愉快な気分になることが多い。さらにいちいちの無理矢理笑わせポイントが丸わかりで、全然面白くないのです。最低だ。わけわからん映像の切り出し方、それに被さる音、すべてが不愉快であり、もしやこういうのが最近の若い人は好きなんだろうか。だとしたら俺は古い人間になってしまうね。
それプラス、映画の前半では佐志の家が何度か登場するんだが、それにともなうゴキブリ風の昆虫の数度のアップ、仮にこれを見て「クリエイティブだ」とか「カッコイイ」とか、「気持ち悪い」という感情以外のものを抱く人はいるんだろうか。まずここでこの映画の作家のセンスを疑っている。まあ自分自身が、子供の頃からカブトムシやクワガタをゴキブリと同一視、また蝶々と蛾を同一視して、昆虫=生理的に受け付け難い気持ちの悪いもの、という一括りにしていたほどの虫嫌いではあるが、とにかくあれは狙って不愉快にさせているとしか思えん。
一通りの感想を書いたので、では大元にさかのぼろう。本作は元々町田町蔵さんの小説を元に作られたらしく、セオリー通り「映画と小説は別物」なのかどうか、原作を読んでいないのでわからないが、少なくとも「夫婦茶碗」という小説を読んだ限りではとても面白い作品だったので、おそらく別物なんだろう。
しかしなんだったんだ一体。映画というより、作者側の一方的な感覚による映像の押しつけと言った方が当たってる。勝手な解釈による映像表現。原作町田、音楽担当がFOEの會田でサウンド陣にブッチャーズ、ゆら帝、ロマンポルシェとかいい感じのがそろってただけに、駄作で残念。
あー今ちょっとFOEのサイトを見たらこれ監督がPV出身だよ。PV上がりは赤影といい、優秀な監督がそろってるなぁ。
竜二 ★★★★☆
竜二さんらがいろいろ。
まもなく本作をリメイクしたらしい、竜二Foreverが上映される関係で再び取り上げられるようになったオリジナルの方。リメイクの情報を聞いてオリジナルを見ようと思った口です。はい。
でこの金子正次という役者の存在すらこれまで知らず、そこも期待して見たのだがこれが結構よかった。どっからそんな声出てんだよというかなりの低音嗄れ声、これにまずやられる人多し。かといってそれが通らないわけでもなく、またギャップを感じるのでもなく、振る舞いと一致しているのでかっこいい。
内容もまたいいんだよねぇ。ラスト肉屋で会った瞬間、そうなることはわかっているけれどもあの無音部分の間、間の持たせ方がかなりグッとくる。演者一人ですべてをかっさらっていくのが松田優作タイプだけどもこの人優作以上に鋭い刀持ってます。こわいです。
あと子供が眉間にしわ寄せるのはとてもおもろい。
ストリートファイターII
おそらくこれをもって対戦格闘というジャンルが切り開かれたのだろう。内容は前作のシステムを基本的には踏襲し、それプラス様々な改良点(必殺技のタイミングの柔軟さ、細かい動きなど)を施しその上キャラを8人の中から選べるというワクワク感、当時中学生になりたてだった自分にとっては、「ゲームセンター」に行くのは不良の巣窟にわざわざいくようなものだったのだが、そんなリスクを負ってもそれでもなおやりたいと思わせる、初めてハマったアーケードゲームであった(今思えばゲーセンにいるやつらがただ単に「不良に見えた」だけなんだが)。おかげで一時期はゲーメストを購読していたし、とにかくこれがゲーセンに当たり前のように行ってしまう、きっかけになったという人は多いと思う。
一人プレイのゲーム進行は、リュウ・ケン・ガイル・ブランカ・ダルシム・ザンギエフ・エドモンド本田・春麗の8人の中からキャラを一人選択しそれぞれのキャラと対戦、勝ち抜けばその後バイソン・バルログ・サガット・ベガの四天王と対戦し(後に出たダッシュで四天王も自キャラで使えるようになった)、最後のベガを倒すと自キャラでのエンディングを迎える。
ただし、それまでのゲームでは「ゲームクリア、エンディング」というのが本道であったが、対戦格闘ゲームの本道はやはり対人対戦である。数年後にゲーム筐体を2つ使用した対戦台が登場するのだが、それまでは一人プレイでやっていると全然知らん奴が「あの、ここいいですか」とか「対戦しませんか」とか(こんな丁寧ではない。話し言葉だから「やらん?」とかだと思う)話しかけてきて、お互い気まずそうに対戦し、負けた方が去っていくという、これが毎日ゲーセンに何時間もいるようなやつだとそういう間から知り合いや常連の対戦相手がいたようだが、当時そんな関係がなんだか不良の一歩手前のような気がして、ついにその、ゲーセンだけの仲間というのには無縁であった。学校の友人に話すので精一杯。
まずは、対戦格闘ジャンルを切り開いたこと。そして画面いっぱいのキャラクターが、いろんな必殺技を駆使して相手を倒していくという爽快感。そしてストリートファイターからの変更点で一番大きいのが、必殺技をガンガンに出せるという、ビジュアル的な派手さを追求したのがよかったと思う。正直、初代ストIIくらいならば強パンチ・強キック・投げがコマンド必殺技と同等かそれ以上の威力だったので、単純に勝ちに行くなら敢えて必殺技を出す道理はないんだが、それでもプレイヤーは難しいコマンド技に挑戦していた。それくらい、その「いろんな技を出せる」というのが最大の特徴だと思う。
当時仲間内では3段階あって、まず1.波動拳コマンドが自在に入力できるか、次に2.昇竜拳コマンド、そしてもっとも難しかった3.ザンギのスクリュー一回転コマンド、この順にランク付けがされていた。どの面まで進んだとかハイスコアよりも、いかに自在に技を駆使できるかがバカ中学生らの一番の関心であり、尊敬ポイントだった。
そして、ゲーム自体がプレイヤーの工夫とともに進化していったという点。自分の感覚と合うキャラを自然に使い続けるようになり(自分は初代ストII では本田だった)、そしてそのキャラを追求していくうちに戦略や相性、連続技の開発など、やればやるほど面白くなるものだった。そしてそれが当時唯一の情報源だったと思われるゲーメストで紹介されたり、身近な仲間内で教えあったりと、アーケードゲームでこれほど情報交換したことはこれが初めてだった。
その他の特徴としては、ハイスコアプレイや超神業でエンディングを目指す以外に、ふつうにギャラリーができたということ。そのギャラリーも、やってるやつのプレイを見てそれを試したり盗んだり、たとえばシューティングのハイスコアプレイを見るのは完全なるギャラリーと化していたが、ストIIや後の餓狼を見るのはそれとは違った、なにか体得してやろうという思いが強かった。そりゃまぁ当時はお金もそんなにないし(そのすぐ後ぐらいに金持ちの馬鹿息子というスポンサーが見つかったんだが)、普通のアクションゲームと比べて時間あたりの料金が格段に違う格闘ゲームでは、そんな頻繁に対戦できる余裕はない。
1.誰がいちばん強えぇんだオイ
殊初代ストII に限ると、通説ではガイルVSダルシムが最強対決だとされている。共通するのは、両方とも受けタイプだと言うこと。というかガイル使いが待ち戦法の元祖だろう。というわけで、性分として相手の攻撃を見てそれに対処する、こういう受けタイプのキャラはあまり好きでなかったので当時はほとんど使わなかった。なので詳しい戦法は、しらん。
自分がよく使ったのはまずメインキャラの本田、それに準ずるブランカ、そして一方で腕を上げるためオールマイティのリュウとケン、この4人しかたぶん初代では使ってない。後のはお金の関係とかルックスで無視。
それでは後々に気づいた点も含めてそれぞれのキャラを書いていこう。
1.リュウ・ケン(初代では性能差がないと思う)
これが熱かった!波動拳コマンドはともかく、昇竜拳は誰もが練習したはず。そして竜巻旋風脚、これら3つの必殺技を駆使するのがオーソドックスな戦い方。相手と遠目にいるときは波動拳の強弱撃ち分けで牽制、意表を突いて竜巻、そして対空と接近戦に絶大に強い昇竜、はっきり言ってコマンドがきちんと入力できればかなり強い。
しかしこれ、昇竜拳がまたでないでない。だから慣れるまではむずいのよね扱いが。そういう時はヒヨって対空に敢えて昇竜を撃たず、しゃがみ大パンチ。これがまた効くんだね。
ほんとに強いのは、やはり端っこに追いつめてから。波動拳で牽制し、相手がジャンプしてきたところに昇竜拳、あるいは自分が、飛び込み足払い→波動拳or投げの二択、この連続攻撃はたまらん。
あとはピヨッた時、めくった時に炸裂するアッパー昇竜拳。友達に最初教えてもらったときは度肝抜かれました。たしか初代では半分くらい減るんだよね。
2.本田・ブランカ(同系統なので)
当時はそのパワーで押しに押しまくっていた。少々のダメージは気にせず、とにかく相手を端っこに追いつめて張り手(電気ビリビリ)、飛んだら頭突き(ローリング)、そしてリーチと威力のある通常攻撃と、押しまくるには最適のキャラだろう。
接近戦がメインだが、離れた場合は相手に向かっていくか、相手が近づいてきたら対空。対空は本田なら強パンチ、ブランカは強キックだったねたしか。
3.春麗
スピードがあるので、それを生かしたジャンプ攻撃と、意表を突いた近づいて投げ。ジャンプ攻撃はチクチクと精神的にもダメージ大きいのではまると強い。そしてそういうときに不意に食らう「イヤッ」投げが効くんだなぁ。
地上戦ではリーチのある、しかも出の早いしゃがみ強キックがいい。つうか強すぎ。
4.ザンギエフ
スクリューパイルドライバー!これしかない!ザンギエフ使ってる感が凄くある。
敢えてスクリューを狙わないというのもある。飛び込み強パンチor強キックで近づき、地上で強攻撃or投げの自動二択で攻めるというのも手。せこいが。対空にWラリアット。
5.ダルシム
こいつが嫌なやつで、まず遠目から通常攻撃やらヨガ炎がばんばん飛んできて、近づこうとしてもなかなか近づけず、もうそうなると相手のペースで進んでそのまま負けてしまう。あとヨガフレイムが結構強いしなぁ。遠目からやられると死角があまりない。
接近戦では、意外に吸い込む投げと通常攻撃の自動二択がよくある戦法。ザンギの次くらいに投げの間合い広いんじゃないかなぁ。あとヨガ炎がらみのドリル系。
6.ガイル
こいつだこいつ。せこいんだよね。まあ「それがガイルの戦法だ」と言ってしまえばそうなんだが。ソニックブームで牽制し、相手が来たところにサマーなりしゃがみ強キックなり。なんでもいいから撃てばいいように転ぶ。そんなキャラです。
しかも投げが強いしなぁ。番外で真空投げか。
2.書ききれんわ!
本来なら各キャラそれぞれの相性なりなんなりを考慮して、それぞれごとの戦法を書くべきなんだけども(例えば待った場合、待たれた場合、待たない場合など状況によって当然戦い方は違ってくる。)、それはめんどくさい。よって、上の戦法はとりあえず誰にも使える方法で、もんのすごく雑です。要は、自分が好きなキャラをとことん使い込めば、自ずと道は見えてくるでしょう。
ゲーセンの様子が前後で変わったのは間違いないのです。またそれを囲む人々の、生活や会話が変わったのも間違いないのです。そしてこれをやってたことで、知らず知らずのうちに友人が増えていたことも間違いないのです。自分も含めた多くの人にとってコミュニケーションツールであった本作、その存在にリスペクトせざるをえない。
そして次回格ゲー関係はスーパーストリートファイターII Xへと続きます。
ガキ帝国 ★★★☆☆
鑑別所から戻った伸助が帰った地元はすでに、かつての勢力図とは様変わりしていた。それでもなお戦おうとする伸助一味の3人。これがいま映画監督として怪しいポジションにある、井筒監督のデビュー作みたいです。
まず、登場人物が凄く豪華。当時おそらく人気絶頂の頃だったであろう伸助竜介が主役として登場し、今はすっかり大物芸人としてマルチ振りを発揮している伸助と、今はたしか大阪でバーかなんかを経営している竜介のカラミがこの映画では見れる。さらに若い頃の神岡隆太郎も登場し、内容よりもまず当時の配役に笑ってしまう。
で内容だが、セリフがちょっと聞き取りづらくて、正直細部までの含みがよくわかんなかった。さらに俳優が全然わからんやつばっかりなので、勢力争いがメインの映画なのに互いの相関関係の把握にとまどってしまうことも多い。話が進むにつれてだんだんわかっていくような感じである。
全体で言うとあの特攻野郎Aチームのような性格の監督であるから、後々の岸和田でもあったようにこんな風なチンピラ群衆の葛藤なんかを描いてる作品は、よくあるようなビーバップものとは一味違う。大体そういうのは役者と言うよりもまず勝ち気、喧嘩っ早い性格ありきのイケイケドンドン映画になるものなんだが、井筒のは凄くドロドロとした、ちゃんと映画してるのがいい。それだけに過去のを見ててもそんなに痛々しくないです。
日本の黒い夏 冤罪 ★★★★☆
1994年長野の松本で起きたサリン事件。そして当時その容疑者として警察やマスコミに報道された神谷。事件の数ヶ月後真実が明らかとなり、神谷の容疑が晴れる。そのでっち上げられた冤罪事件に興味を持った高校生とテレビクルーの対決。
いわゆる報道・マスコミと言われる部分の非常に嫌な部分、平たくいうところの世論操作・人権無視・馴れ合い体質などが一気に表出した象徴的な「事件」、松本サリン事件をテーマにした映画である。テーマがかなり強力であるだけに、見せたいものが明確で無駄な部分はあまりない。
ただ映画の方法としてはかなり無駄になっている。その最たるが良心の固まりですとも言わんばかりの高校生女。先に挙げたマスコミの愚行を批判的にするために、この馬鹿たれ女が心情を爆発させている。もちろんこの事件ではマスコミや警察側が間違っているのは明らかであるけれども、それをこの映画の中でぶちまけるのはどうもしっくりこない。つまり、一方的な報道や行動を行ったマスコミや警察がどうであるかということをを、少なくともこの映画では見る側に選択を任せるのではなく、あのクソ女を使って一方に否定を押しつけようという凄く皮肉なことが起こっている。
内容はすごくいいと思う。見ている自分自身、事件当時それほど関心のなかったことに妙に興味がでてきて見終わった後でいろいろ調べてみた。一連のサリン事件から6年くらいたった今では、当時地下鉄サリン事件に実際遭遇した人の書いた文章や、それこそ本作の中心である神谷こと河野義行さんのインタビューなどを見つけた。映画を見た後河野さんのインタビューを読むと本作が河野さんが実際に受けたことを忠実に描いていることがわかる。
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/akihisa/humanrigh3masukomi.htmこちらにあります。
で改めて感じるのがマスコミと呼ばれるものの存在意義だ。彼らのやるべきは事実を正確に伝えることだと感じる。しかしまぁ一方的に押しつけがましいことを書くマスコミとかいうものの多いこと。大体よくある朝日=左翼とかそういう論調のようなものがあること自体ちょっとおかしい。そんな論調なぞ意地を張らずに、事実を元にして正確に報道する、意見は専門家に任せる、これが本来のありかただろう。特に河野さんのインタビューでもある、週刊誌の類はほんとあきれる。あんなクソが未だに存在してるのがよくわからんし、歯医者や美容院はあんなのを購読せずに、もっとこう、なんだろうなぁ、漫サンでも買っておけばいいんじゃない。
イレイザーヘッド ★★★★☆
できちゃった結婚で、できた子供がウミュミュ~ンだったという・・・。
奇妙。奇妙です。
本編前の解説によると、本作はデビッドリンチがもっとも力を注いだ映画であり、その完成度のために製作期間をかなり延ばし延ばしにしてついに完成したという、かなり本気な作品みたいです。
最早ストーリーはどうでもいい。だってわけわかんないんだもん。しかしホラー映画として凄くいい。これは前見たπ以来に感じた、脳が映画に壊される感覚。主役の男がまず異様なでかい頭をしていて、子供がチュミミ~ンで、夢に見る女はふたこぶ女とインパクトがあり、後々まで恐らく残るであろう奇妙な残像が刷り込まれる。
つうか頭おかしいよリンチよ。確かにさ、イレイザーのヘッドだけどさ、なんじゃそらと。全然本編のストーリーと関係ないんです。急にイレイザーのヘッドが登場する。
しかしまぁ、全体の異様な雰囲気といい、一瞬一瞬の画面構図のインパクトといい、神経にささくる音、チュミミ~ンジュルジュルといい、見た者の記憶には間違いなく残る作品ではある。たとえばπは最低のホラー映画だったけれども、ドリルでゴリゴリやるあのインパクトは忘れられないし、その点この映画が凄いということなんじゃなかろうか。
穴 ★★★★★
妻の殺人未遂で刑務所に入ったガスパール。彼が入った部屋の面々は全員一致で脱獄を計画していた。それに賛同し自らも荷担するガスパール。さてどうなる。
名作。まだ、いい映画というものがとりあえず出来る方法が確立されていなかった時代に、このストーリーとカメラワークと演者の表情で見る者を圧倒してしまう、ほんと映画の名作と言える。それにこんな古い映画を(だって戦後すぐですこれできたの)今見てもおもしろいと思えるというのが、今般に量産されるような紋切り型の映画方法ではなく、この映画独自の方法で作られているのでまったく見劣りしない。これも名作の所以だ。
具体的にはやっぱ掘るシーン。掘ってる奴の表情などはどこぞにいってしまい、掘ってる手とその掘って削れている様、カキーンカキーンハァハァと、この映像がとんでもなく緊迫感を生み出していた。鬼気迫るような表情を映すまでもなく、その看守に絶対に気付かれてはいけないのにそんなにガンガン音ならしていいのかよというハラハラ感は、手のドアップというのが圧倒的に迫るものがある。
そしてその後単純に、脱出してはいよかったねで終わらないのがまたいいところ。映画の冒頭ですでに布石は置かれていて、それが穴掘りの緊迫感が終わった頃にまたぞろプレイバックされるという手法は後々にも受け継がれていると思う。ラストのラストの衝撃から、淡々としたエンドロールのつながりはすごくインパクトある。
こういうのを名作と言うんだろうなぁ。おもしろいっ!最高っ!っていうのは結構あるけれども、「映画っていいな」と見終わって思う、思わせるだけのヤラレタ感を抱かせてくれる映画こそが名作と言えるでしょう。そして本作は十分そのパワーを持っている。
なにぶん古くて、出所もよくわからないだけに、観ようとして観ないと駄目だと思いますが、是非観ることをお勧めします。
ディア・ハンター ★★★☆☆
ディアをハントする人たちがベトナム戦争でトラウマー。「親愛なるハンター殿」じゃありません。鹿狩人です。阪神にディアーっていたなぁ。
なげぇ。その印象が一番強い。いやその3時間という物理的な長さはあまり関係なくて、むしろ前半部分のちょっとしたエピソード群なんかが自分にとっては前置きが行き過ぎた感じで、その部分がよけいに思えたのです。
それだけに全体的に漂う殺伐とした暗い雰囲気というのがあまりなじまず、それがダラーっとした冗長な感じになるという悪影響になってしまって、肝心なロシアンルーレットも緊張感というより「こいつら馬鹿か」的な発想が先行してしまい、いやもちろんあそこが緊張感のある場面であることには変わりないが、それまでの悪影響が祟っていい感じには見れなかったです正直。
要するに本作は自分にとって冗長な暗い映画という後味しか残ってないわけで。残念。
SMOKE ★★★★☆
どっかの街の煙草屋とその周辺あたり。
見終わった後まず感じたのが、あ、これ見たことあるなぁと。もちろん本作を見るのは初めてなので、なにか別の作品がとても似た雰囲気であるということなんだけども、調べてみると本作はルル・オン・ザ・ブリッジと同じ脚本家でしかもハーヴェイ・カイテル主演という、ああなるほどと思ったのです。
ストーリー自体はもんのすごくどうでもいいというか、生活していると起こりうるであろうことを少しのびっくりを絡めて進めているだけのことなんだけども、なんというかこのハーヴェイ・カイテルという役者なんかが象徴的なんだけども、雰囲気でさらってしまうという巧さがあるように感じられる。
こういう雰囲気ものは、その雰囲気にさらわれるのがわかっていながら心地いいという場合と、押しつけがましい雰囲気具合に辟易してしまい、すごく惰性的な退屈な場合とに両極端に分かれるものだけども、本作はその雰囲気がいい感じに醸されていて、あまり言いたくないけど一言で言えば小説的なのです。
この小説的という言葉はかなり胡散臭くて、なぜなら小説の得意とする、なんだかよくわからんけど最終的に雰囲気にさらわれてしまったよこん畜生と、そういう感覚をわざわざ映像を使って表現するのはいかがなものか、そんならそんなで小説読みゃあいいじゃねぇかよということになるわけです。ディティールにこだわることはできても、みんながみんなその細部に注目するわけでないし。
では映画の小説的な良さとはなんだろうかと考えた場合に、その雰囲気をニュアンスで伝えることに言葉がいらないわけです。表情や仕草、語り口なんかに集約される。その方法がハーヴェイ・カイテルは巧いと思う。デニーロに似てるけど。
なので本作は特に目的なんかない、ただいい感じの作品を作ろうという作者側の思いから生まれた他愛のない話であり、それだけに映画の手法にマッチしてるんだと思う。
煙草吸ってたら印象ももっと違ってたかもなぁ。
戦国自衛隊 ★★★★★
現代の自衛隊一個師団がなぜかタイムスリップしてしまい戦国時代へ。ええいままよ、このまま上杉謙信と協力して、天下を取っちまおうぜ俺ら的ノリ。
1979年、千葉真一、「・・・・そうだよ、俺らが一暴れして天下を取ってしまえば歴史が狂ってまた現代に戻れるはずだ!そうだ!」。冒頭部分のこのノリ方を見ていて、そうなのか、ああなるほど西部警察系爆破バカ映画かと、その方向で見始めたのだけど見ていくうちに確かにバカ爆発してるんだけども、決してそれだけではない感覚を覚えたのです。
それは彼ら自衛隊馬鹿者どもにもそれぞれに生き方があって、渡瀬恒彦のように反逆してレイプしまくる快楽主義者、またかまやつひろしのようにあっさりと骨を埋める者、そしてチバシンイチ御大のような漢気あふれる死にっぷりなどなど、なんか美学ってるんですねこの人たち。いやこれによって話に深みがでるとかそういうのは一切ないんだけども、、格好良いという。
やはり見所は当時の爆破OKな時代的映像ですな。チバ御大の空中ヘリつり下げ狙撃なんかは特にグッとくるシーンであるし、また武田信玄VS自衛隊という文字にしてみても面白い組み合わせはこの映画ならでは。その戦闘シーンももんのすごく、足軽の馬鹿者どもに銃を乱射、手榴弾をぶん投げ、戦車で大砲攻撃、手加減なしなのです。
しかしもちろん、少数の銃VS大量の足軽と刀の闘いには時間の経過に伴う明らかな結末があるわけで。そう、最初は景気よくドッカンドッカンやってた自衛隊も、弾薬が燃やされガソリンがなくなり手持ちが尽きると最早お手上げなんですね。つうか気づけよそれくらい。
要するに見てる側はヤリ逃げされるんです。爆破爆破で最後漢気、ああこのころの角川ってなんか一癖あるなぁ。
かわぐちかいじ、もしかしてこれ見て感激してジパング書いてるのか?