身寄りの無くなった少女が詐欺師の男と旅する話。
ヴィム・ヴェンダースの「都会のアリス」つながりで知った作品。確かに「ダメな男と気の利いた少女」が「旅する」というのはそのまま当てはまるため、似てると言われるのもわかる。wikiを調べると両方とも1973年制作、ただし「ペーパー・ムーン」の方が公開日は早く、ヴェンダースも驚いたようだ。歴史上同じ時期に同じようなことを考えるという事はありえなくもないので、一応互いの関係は「関連性は全くない、ただし後発のヴェンダースには多少影響した」という感じになる。
というわけで、「都会のアリス」を見て良かったからそれに似ていると言われていた本作を見たので、ストーリーの骨子について言うこと無く面白い。本作で少女は男の詐欺行為に加担するようになり、その分ドラマ性も高いため娯楽作品としてはこちらがより楽しかった。展開がわかりやすく、多少御都合な部分があるが、ストーリーが良ければそれらはどうでもよくなるというのはどんな作品にも共通することだ。
印象としては「ペーパー・ムーン」は陽、「都会のアリス」は陰、になると思う。ラストシーンがそれを象徴していて、前者は二人が別離から再会しての再出発、後者は別離のための列車で余韻にふけるという違いがある。フィクションとしての見終わった後の爽快感や、「良い映画を見たなあ」と素直に感じられるのは前者だが、なんというかこう、見終わった後心の引っかかりを残すのが後者だと感じる。して俺個人としては、後者の方が好きだというのが自分自身の性格に合致してなんかこっ恥ずかしい。同年に同じテーマの作品が制作されたというのも非常に珍しいと思うので、二つ見て自分がどちらに寄ってるか認識するのも面白かった。