前回は、次回はレポートの評価について書くと予告していたのだけれども、やはり評価関連は主観が入ってきてまとめるのが難しかったので、今回はテキストについての話を先に書こうと思う。
よく2ちゃんねるなどの煽り系掲示板で嘲笑されているのが、慶應通信のテキストが古すぎる、旧仮名遣いで古典のようだといったものである。これについては入学当初から疑問に思っていた。少なくとも筆者が入学した時点で経済学部の教科書で旧仮名遣いだったのは「憲法(E)」だけだったし、これについても数年後に全面書き換え(市販書に移行)したため、現在は廃止になっている。まあ確かに、1科目でも旧仮名遣いのテキストが残っているのは驚異的だともいえるし、その他の科目でも古いテキストが散見されるので上述したように言いたい気持ちもわかるのだが、一方で改訂・全面書き換えしているものも多くあるので、放置しているというほどではないのではと思っていた。
ただ、単に古いとかそうではないとか言っているだけでも芸がないので、今回もちょっと調べてみた。幸い、2008年度の塾生ガイドにはテキスト一覧が市販書も含めて掲載されている。手元のテキストと併せて確認したところ、これに掲載されているテキスト番号のうち、ハイフン以下の4桁数字の上2桁が、科目新設・全面書き換え時の西暦の下2桁になっているようだ。たとえば今手元にある経済数学のテキストは「E001-4904」となっているので、初版発行が1949年となる(ちなみに、このテキストは1997年に改訂されているため、内容はあまり変えていないそうだが古くささは全くない)。塾生ガイドにはさらに1989年4月以降の改訂・書き換えの年月も記載されているため、少なくとも最近20年についてはテキストの発行年を特定することができる。それ以前に改訂があった場合はわからないが(改訂があったときはテキスト番号の末尾が2以上になっているようだが、いつ改訂されたまではわからない)、あったとしても少なくとも20年以上前の改訂になるということで、今回は割り切ってテキスト番号を発行・改訂年として扱った。
なお、市販書採用科目については、最近までは市販書の発行年をテキスト番号にしていたようだが、2007年くらいから科目新設・書き換え年をテキスト番号にするよう変更したようだ。まあどちらにしても、市販書の場合は別途発行年一覧が掲載されているので、そちらの記述に従い、テキスト番号は採用していない。
というわけで、総合・各学部ごとにまとめたテキスト発行・改訂年が以下の表となる。
分類 | 科目名 | 発行・改訂年 | 市販書 |
総合教育科目 | 哲学 | 2003 | |
論理学(A) | 1979 | ||
文学 | 1976 | ||
歴史(日本史) | 1995 | ○ | |
歴史(東洋史) | 1971 | ||
改訂・歴史(西洋史) | 2008 | ||
法学(憲法を含む) | 1984 | ||
政治学(A) | 2000 | ||
経済学 | 1981 | ||
新・社会学 | 2004 | ○ | |
統計学(A) | 1994 | ||
数学(基礎) | 2000 | ||
数学(微分・積分) | 1985 | ||
数学(線形数学) | 1997 | ○ | |
地学 | 2006 | ||
物理学 | 1996 | ||
化学 | 1996 | ||
生物学 | 2005 | ||
英語I | 2000 | ||
英語II | 2001 | ||
英語III | 2000 | ||
英語VII | 1989 | ||
ドイツ語第一部 | 1973 | ||
ドイツ語第二部 | 1980 | ||
ドイツ語第三部 | 1975 | ||
ドイツ語第四部 | 1988 | ||
フランス語第一部 | 1990 | ||
フランス語第二部 | 1995 | ||
フランス語第三部 | 1977 | ||
フランス語第四部 | 1995 | ||
新・保健衛生 | 2007 | ||
体育理論 | 2006 | ||
文学部第一類 | 西洋哲学史I(古代・中世) | 1988 | |
西洋哲学史II(近世・現代) | 1953 | ||
論理学(L) | 1977 | ||
科学哲学 | 2004 | ||
倫理学 | 1989 | ||
現代倫理学の諸問題 | 1978 | ||
日本美術史I | 1972 | ||
社会学史I | 1997 | ○ | |
社会学史II | 1995 | ○ | |
社会心理学 | 2003 | ||
都市社会学(L) | 1999 | ○ | |
心理学I | 1979 | ||
心理学II | 1977 | ||
教育学 | 1993 | ||
教育心理学 | 1986 | ||
教育史 | 1982 | ||
教育思想史 | 1979 | ||
教育社会学 | 1995 | ||
心理・教育統計学 | 1992 | ||
文学部第二類 | 史学概論 | 1974 | |
歴史哲学 | 1967 | ||
日本史概説I | 2003 | ○ | |
1996 | ○ | ||
日本史特殊I | 2004 | ||
日本史特殊II | 1992 | ||
新・日本史特殊IV | 2003 | ○ | |
古文書学 | 1949 | ||
東洋史概説I | 1976 | ||
東洋史概説II | 2003 | ||
東洋史特殊 | 2006 | ||
西洋史概説I | 1972 | ||
西洋史概説II | 1988 | ||
西洋史特殊I | 1972 | ||
西洋史特殊III | 2002 | ||
オリエント考古学 | 1991 | ||
考古学 | 1988 | ○ | |
地理学I(L) | 1962 | ||
地理学II(地誌学)(L) | 1973 | ||
人文地理学 | 2005 | ||
文学部第三類 | 国語学 | 1949 | |
国語学各論 | 1968 | ||
国文学 | 1977 | ||
国文学史 | 1959 | ||
近代日本文学 | 1995 | ||
国文学古典研究I | 2004 | ||
国文学古典研究II-1 | 1965 | ||
国文学古典研究II-2 | 1969 | ||
国文学古典研究III | 1977 | ||
国文学古典研究IV | 1994 | ||
国語国文学古典研究V | 1975 | ||
書道 | 1977 | ||
中国文学史 | 2000 | ||
漢文学I | 1996 | ||
漢文学II(論語) | 1962 | ||
漢文学III(孟子) | 1960 | ||
新・現代英語学 | 2007 | ||
英語学概論 | 1992 | ||
英語音声学 | 1950 | ||
英語史 | 2003 | ||
ACADEMIC WRITING I | 1998 | ||
ACADEMIC WRITING II | 1999 | ||
現代英文学 | 1977 | ||
英文学特殊 | 1992 | ||
中世英文学史 | 1976 | ||
近世英文学史 | 1977 | ||
イギリス文学研究I | 2004 | ○ | |
イギリス文学研究II | 1976 | ||
イギリス文学研究III | 1979 | ||
アメリカ文学 | 2003 | ○ | |
アメリカ文学研究I | 1976 | ||
アメリカ文学研究II | 1969 | ||
シェイクスピア研究 | 1977 | ||
新・日米比較文化論(総論) | 2004 | ○ | |
近代ドイツ小説 | 1997 | ||
近代ドイツ演劇 | 1996 | ||
十九世紀のフランス文学I | 1996 | ||
十九世紀のフランス文学II | 1998 | ||
二十世紀のフランス文学 | 1983 | ||
新・ロシア文学 | 2007 | ||
ラテン文学 | 1984 | ||
経済学部 | 経済原論(E) | 1995 | |
新・経済政策学(E) | 2008 | ||
経済史 | 1997 | ||
財政論(E) | 1976 | ||
金融論(E) | 2003 | ○ | |
経営学(E) | 1994 | ||
経済変動論 | 1995 | ||
新・国民所得論 d> |
2008 | ||
計量経済学 | 1995 | ○ | |
経済数学 | 1997 | ||
日本経済史 | 1973 | ||
西洋経済史(中世) | 1978 | ||
西洋経済史(近世) | 1992 | ||
社会思想史II | 1976 | ||
社会政策(E) | 1993 | ||
国際貿易論 | 1997 | ||
人口論 | 2000 | ○ | |
世界経済論 | 1999 | ○ | |
都市社会学(E) | 1999 | ○ | |
産業社会学(E) | 1975 | ||
地理学I(E) | 1962 | ||
地理学II(地誌学)(E) | 1973 | ||
経営管理論 | 1985 | ||
経営分析論 | 1991 | ||
経営数学 | 1976 | ||
商業学 | 2001 | ○ | |
保険学 | 1995 | ||
新・会計学(E) | 1998 | ○ | |
簿記論 | 1976 | ||
原価計算 | 1997 | ○ | |
会計監査 | 1983 | ||
憲法(E) | 2000 | ○ | |
民法 | 2008 | ○ | |
労働法(E) | 1954 | ||
経済法(E) | 2005 | ○ | |
新・会社法(E) | 2006 | ○ | |
法学部 | 憲法(J) | 2000 | ○ |
改訂・民法総論 | 2007 | ○ | |
刑法総論 | 2004 | ○ | |
法哲学 | 1954 | ||
日本法制史I(古代) | 2003 | ||
国際法I | 1999 | ○ | |
国際法II | 1998 | ||
行政法 | 2005 | ○ | |
新・物権法 | 2007 | ○ | |
債権総論 | 2005 | ||
債権各論 | 2004 | ||
親族法 | 2000 | ||
相続法 | 1970 | ||
新・会社法(J) | 2006 | ○ | |
商法総則・商行為法 | 2007 | ○ | |
保険法・海商法 | 2004 | ○ | |
手形法 | 2003 | ○ | |
新・刑事政策学 | 2008 | ○ | |
刑法各論 | 2007 | ○ | |
民事訴訟法 | 2005 | ○ | |
破産法 | 2006 | ○ | |
新・刑事訴訟法 | 2007 | ||
国際私法 | 1950 | ||
労働法(J) | 1954 | ||
経済法(J) | 2005 | ○ | |
英米法 | 1979 | ||
政治学(J) | 1972 | ||
政治哲学 | 1976 | ||
日本政治史I(古代) | 1977 | ||
日本政治史II(中世) | 1985 | ||
日本政治史 | 1972 | ||
ヨーロッパ政治史 | 1972 | ||
アメリカ政治史 | 2005 | ○ | |
ロシアの政治 | 2005 | ||
現代中国論 | 1999 | ○ | |
2004 | ○ | ||
日本外交史I | 1973 | ||
日本外交史II | 1993 | ||
西洋外交史 | 1998 | ||
政治思想史III | 1998 | ||
ヨーロッパ中世政治思想 | 1998 | ||
コミュニケーション論 | 2006 | ||
産業社会学(J) | 1975 | ||
経済原論(J) | 1995 | ||
財政論(J) | 1976 | ||
金融論(J) | 2003 | ○ | |
新・経済政策学(J) | 2008 | ||
社会政策(J) | 1993 | ||
経営学(J) | 1994 | ||
新・会計学(J) | 1998 | ○ |
これを見た限りでは、学部によってかなり差があるが、それほど古いテキストだらけではないような気がする。そこで、もう少しわかりやすいようにこれをヒストグラムにしてみた。
まず、単純に古いものから10年刻みで順に集計し、総合教育・各学部科目別に積み重ねてグラフを作ってみた。それが以下のグラフだ。
次に、テキストの古さの度合いが学部ごとに偏っているような気がしたので、学部別にテキストの古さの度合いを集計してみた。それが以下のグラフだ。
これらのグラフを見てまずわかることは、やはり言われているほど古いテキストは多くないという点だ。確かにまだ多少残っているのは残念だけれども、少なくとも半分以上は平成に入ってからの発行・改訂であるし、近年も発行・改訂のペースは鈍っていない。ちょうど昨日、2月のニューズレターがうちに届いたが、2009年度も多くの科目が全面書き換えとなっていた。たとえば古いものでは1962年発行の地理学Iも全面書き換えとなる。いずれ大半の科目テキストは最新のものになるのではないだろうか。
次いで確認できるのは、文学部のテキストの古さだ。他の学部では6~7割が平成に入ってからのテキストで、総合教育科目も6割近くが平成に入ってからのものである(80年代以降に広げると8割近く)。その一方で文学部のテキストで平成以降に発行されたものは半分に満たない。上の表を見ると特に第三類のテキストの古さが目立つ。これは内容が文学史や古典研究といったものだから、社会の変化に伴って改訂が必要になる経済学部・法学部と比較すると改訂の必要性が低いと判断されているのだろうか。また、市販書採用科目も極端に少ない。経済学部は36科目中12科目が市販書を採用し、法学部は49科目(テキスト数は50)中、19科目(テキスト数は20)で市販書を採用している一方で、文学部は79科目(テキスト数は80)中、市販書採用科目はわずかに9科目(テキスト数は10)である。
慶應通信の在学生で最も多いのは文学部だ。テキストの古さについて話題に上るのも、文学部のテキストが古いことに由来するのではないだろうか。
なお、テキスト発行年の山が近年のほかに1970年代にもできているのは興味深い。以前紹介した奥井晶氏の著書によると、1974年度から1978年度にかけて、通信制を実施していた各大学に文部省が補助金を出し、古いテキストの全面改定を行ったと記載されているため、そのときの科目なのだろう。大学通信教育の歴史も垣間見ることができた。
というわけで、この噂についての筆者の結論は以下の通り。確かに古いテキストはまだ残っているが、特に経済学部と法学部において改訂は進んでいる。今後も、古いテキストで問題ないと判断されているような文学部の一部科目を除いては、テキストの改訂は進んでゆくのではないだろうか。
なお、筆者は慶應通信のテキスト科目における学習のしづらさは、テキストの古さよりももっと別のところにあると考えているのだが(これは奥井氏も指摘している)、それはまたいずれ書きたいと思う。
どうも、以前書き込みしたよるおです。最近では、通信課程も卒業しやすくなったみたいです。実は、通信制大学院の設置は奥井晶氏の悲願だったのです。私が日大の通信課程の入学前に著者に手紙を出したら、ご本人ではないですが別の方からお返事を頂きました。
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