穴 ★★★★★

妻の殺人未遂で刑務所に入ったガスパール。彼が入った部屋の面々は全員一致で脱獄を計画していた。それに賛同し自らも荷担するガスパール。さてどうなる。
名作。まだ、いい映画というものがとりあえず出来る方法が確立されていなかった時代に、このストーリーとカメラワークと演者の表情で見る者を圧倒してしまう、ほんと映画の名作と言える。それにこんな古い映画を(だって戦後すぐですこれできたの)今見てもおもしろいと思えるというのが、今般に量産されるような紋切り型の映画方法ではなく、この映画独自の方法で作られているのでまったく見劣りしない。これも名作の所以だ。
具体的にはやっぱ掘るシーン。掘ってる奴の表情などはどこぞにいってしまい、掘ってる手とその掘って削れている様、カキーンカキーンハァハァと、この映像がとんでもなく緊迫感を生み出していた。鬼気迫るような表情を映すまでもなく、その看守に絶対に気付かれてはいけないのにそんなにガンガン音ならしていいのかよというハラハラ感は、手のドアップというのが圧倒的に迫るものがある。
そしてその後単純に、脱出してはいよかったねで終わらないのがまたいいところ。映画の冒頭ですでに布石は置かれていて、それが穴掘りの緊迫感が終わった頃にまたぞろプレイバックされるという手法は後々にも受け継がれていると思う。ラストのラストの衝撃から、淡々としたエンドロールのつながりはすごくインパクトある。
こういうのを名作と言うんだろうなぁ。おもしろいっ!最高っ!っていうのは結構あるけれども、「映画っていいな」と見終わって思う、思わせるだけのヤラレタ感を抱かせてくれる映画こそが名作と言えるでしょう。そして本作は十分そのパワーを持っている。
なにぶん古くて、出所もよくわからないだけに、観ようとして観ないと駄目だと思いますが、是非観ることをお勧めします。

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