マルコビッチの穴 ★★★★☆

うだつのあがらぬ人形操師クレイグは、自分の才を認めぬ現実に辟易していた。その妻ロッテも覇気のない暮らしに辟易していた。クレイグがしょうがなしに働くことになったある会社はビルの7と1/2階にある。そこで彼は、ジョン・マルコビッチのあたまの中に通じる扉を発見する。
まず「穴」の設定が面白い。15分間マルコビッチの中に入り彼の視点で見る。しかしこちらの声は届かない。その後高速道路の脇に突然降ってくる。それもその対象が、日本で言えば笠智衆のような名脇役であるジョン・マルコビッチという微妙な人気者なので、変身してもとくに豪華であるとかそういうのがない。
これは変身願望ではなく、まさしく後々クレイグがやってしまったようなマルコビッチという新しい乗り物に乗った喜び、そこから見た視界の広がりがくれる新しい発想、ロッテにしたら自分が同性愛だと気付かせてくれた新発見の喜び、これがマルコビッチの効用ではないだろうか。
そしてマルコビッチがマルコビッチに入った瞬間、観たものが凄かった。すべてがマルコビッチで帰結している世界。爆笑だった。同時に滑稽だった。そしてこのあたりから、この映画自体をどういう形で終わらせるのだろうか?そもそも穴の正体というか、理屈を解明してしまうのだろうか?という考えが起こってきたんだけど、結局なんだかへんてこな理屈を付けて正体を現してしまった。正直このへんで冷めました。
こういうよくわかんないのはよくわかんないまま、置いてけぼりに置いていくという終わり方もアリだったんじゃなかろうか。一切のことを気にせずに気持ち入って見れたのも途中までだし、いやもちろん、じゃあどういう終わり方があるのかと言われると正直わかりませんが穴の説明はいらない。
是非一度見るといいです。おもろいと思います。

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