さて、昨年4月の科目試験が終わってから書こうと思っていたこの項目も、4月試験が終わり、7月試験が終わり、夏期スクーリングが終わり…とずるずるしているうちに、年度終わりのこの時期まで書かずに引っ張ってしまった。こういう話題で年度をまたいだとたん書かなくなると(しかも丸1年書かずに)、まるで挫折したようで見栄えも悪いので、久々に慶應通信の話題を書いてみる。
まずは、今回の考察に入る前に、1年あいたので筆者の慶應通信での近況を簡単に述べてみる。このブログで書く記事が滞っていた一方で、単位取得自体は順調に進んでいる。先日戻ってきた夜間スクーリングの単位を加えた現時点では取得単位数は115単位(学士入学の一括認定を含む)。あと1単位で卒論以外の単位数を充足するはずだ。ただ、念のために1月試験の結果返却後に成績証明書を発行してもらうつもりである。この点、年度末ごとに成績表を送ってくれてもよいのにと、少し不満に思う部分ではある。現在は卒論執筆中で、順調にいけば今年9月には卒業する(卒業予定申告済み)。このように偉そうな分析をしながら卒業しないのはかなり恥ずかしいので、何とか卒業が見えてきてほっとしているところだ。まあ卒論が行き詰まり中なので、まだ油断できないが。
では分析に入る。前回は主に履修時のシステムについて考察したが、これだけでは慶應の通信教育が特別難しいとはいえないことがわかったと思う。レポートを提出しさえすれば科目試験の受験資格を得、レポートが不合格で返ってきても試験に合格すればレポートの再提出で合格さえすれば再度試験を受けなくてすむ、というシステムは、他の大学通信教育と比較してもそれほど厳しくはない、むしろ緩いくらいだ、というのが前回の話だった。
それでは次に、具体的に課題と採点から難易度を確認しようと思う。とは言っても、筆者は他の大学通信教育を受講したことはないため、相対的な比較をすることは難しい。相対的な難易度の参考としては、以前紹介した「大学通信教育つれづれ」というサイトの「【雑感】レポートの不合格」という記事がおすすめである(無断リンク禁止とあるのでリンクは張らない。各自で検索されたし)。余談だが、「大学通信教育つれづれ」は、以前の記事で紹介してしばらくして、一時的に事実上の閉鎖をしていた。本サイトで紹介したのが原因だったのだろうかと心配していたのだが、再開した際の記事で、本サイトでの紹介を見て再開を決めていただいたという内容を読み、一安心するとともにうれしかったことを覚えている。
というわけで、この記事で比較対象となるのは以前卒業した某国立大の社会学部、そして現在妻が受講している北海道情報大の通信教育課程、という偏った対象となることをご容赦いただきたい。
まずレポート課題の形式について確認する。レポートの必要字数は基本的には4000字以内(例外あり)であり、課題は1~2問程度で「~について述べよ」式になっていることが多い。長文の論述形式だ。これは、筆者が以前卒業した大学では一般的な形式であり、おそらく文系学部全体でも一般的な形式だろう。逆に一応文系に分類されるが理系の色彩が濃い北海道情報大学では、短答式の設問が数十問出されるというチェックテストのような形式が多いようだ。
次に課題の内容であるが、これがなかなかのくせ者である。一般に大学通信教育での通信授業では、テキストの内容が講義代わりであることが前提だろう。ということは、講義内容の理解度を確認するという意味であれば、レポート課題はテキストの内容から出されると考えるのが順当だと思われる。もしくは履修要項に挙げられている指定の参考書でもよいだろう(これは一般的な講義におけるテキストと考えてもよいので)。実際、妻から見せてもらった北海道情報大学のレポート課題も、大半(すべて?)がテキストの内容を理解しているかを確認するものだった。
しかしながら、慶應の課題、特に経済学部の必修科目の場合は、テキスト・指定参考書だけの内容ではレポートで合格点をもらえることは少ない。少なくとも、レポート課題の内容を主題とした専門書を最低1冊は利用しないと、まともなレポートが書けないような課題が多いと感じている。というのも、経済学部必修科目は基礎科目であるため、テキストや指定参考書では基本的な項目が網羅的に述べられている一方で、一つ一つの項目についての掘り下げはさほど深くない。これに対して、レポート課題は特定の項目について深く掘り下げた考察を求めているものが多いのだ。
実際に、筆者は経済原論や経済政策学(今はテキストが書き換えになって新経済政策学となっているので今の事情はわからない)のレポート作成において、テキストと指定参考書のみを利用して作成をしたところ、それらテキスト・参考書には記載されていない深さを要求されてD判定(不合格)となった。特に経済原論では、普通の入門書レベルではまず出てこない項目にまで言及するようコメントが記載されていてびっくりしたのを覚えている(入門書と銘打った書籍でこのレベルまで記載されていたのは、私の知る限りゼミナール経済学入門(福岡正夫)のみ。噂では通学課程の学生のテキストらしい)。
というわけで、こと経済学部必修科目に関する限りは、テキストの履修内容とレポート課題とにレベルのミスマッチがあるのが、「高い難易度」の最大の原因であると考えられる。この証拠に、レベルとしては発展系と位置づけられる経済学部の選択科目では、レポート課題に密接に関連した参考文献が挙げられていることが多く、内容が高度な割にレポートは合格しやすい。
あとは、レポートの形式が整っていないと低い評価になりやすいというのが特徴だろうか。たとえば引用の仕方や参考文献が適切に挙げられているか、また序論-本論-結論といった文章の構成がきちんとなされていないものに関しては不合格となる場合が多いようだ。ただこれは、形式さえ整えておけばまずはクリアできるものなので、難易度が高いというほどのものではないだろう。逆に形式にうるさいと言うことは、それだけ形式に則っていないレポートが大量に提出されていて、採点者がいらいらしているだろうことが想像できる。
以上が、筆者の考える「レポートが厳しい」という噂の実態である。ただ、筆者が経験したのはあくまでも経済学部の学部科目のみである。慶友会の人の話では総合科目が一番の鬼門とも聞くので、レポート難易度はこうだという断言は、筆者は未だにできていない。