たどんとちくわ ★★★★★

自分の思い通りにいかなすぎる世の中に、腹の中で不満が鬱積しているつかえないタクシードライバーと売れない小説家。日常のほんの些細な事がきっかけとなって、ついに不満が外に向かってしまう。その爆発の方法があまりにも身勝手で、これこそシュールな笑いといえるのでは。
まずはたどんの方。たどんとは炭団、燃料の類らしい。本編には全く関係ない。ただ「たどんって何だ」って思ったからなので。
タクシードライバーというものは基本的に愛想が悪い。そんなにタクシーに乗る機会はないが、いままで乗った印象で悪いと思うのである。チャリ乗っててイチャモンつけてくるのは圧倒的にタクシードライバーが多い。最近はMKタクシーみたいなのもあるらしいけど。
だから客が乗り終わった後で一人、乗り終えた客の文句を垂れ流す、これは考えられることだ。結構そう思う。しかしそのタクシードライバー的「礼儀」、それを突き詰めると本作のように客の前で悪態ついたり、場合によっちゃ拳銃で脅す、これは健全な礼儀の突き詰め方なのである。いや、殊笑いとすれば。だから面白い。
つぎにちくわ。売れない作家という設定はよくあるが、往々にして彼らが世間に”復讐”する、このワタクシの才能を認めない、いや蔑みさえしてくるような感覚を覚えるとき、その反抗のやり方はショボいものなのである。それこそ売れない作家たる所以だ。
初っぱなからそれを壊す。おでん屋にケチを付け、おでんに小便をぶっかける。自分以外の(表面上)楽しそうなバカどもに斬りつけ、異星人の血の雨を降らせる。彼にはそこら辺の凡人どもは異星人に見えるらしい。
たどんも、ちくわも、絶対現実に起こり得ないことではあるが、なんか起こりそうである、いや頭の中では既に色々な人のなかで起こっている事なんである。それを実行に移した両者、それゆえにシュール、腹からわき上がる笑いではないかと思う。

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