風邪がなかなか治らない。まあ先週から引いているくせに無理して大学のサークルに遊びに行ったりするのが悪いんだろうな。鼻水は何とか治まったのだが、唇がひどく荒れてしまっていて、口を開けるのも痛いという始末。当然仕事にも身が入らない(別に何もなくても身は入っていないが)。という訳なので、会社帰りにリップスティックでも買うことにした。
目黒で「BSD magazine(ASCII刊)」と「プロ野球ドラフト全史(ベースボール・マガジン社刊)」を買ってから家路につき、リップスティックは自宅最寄り駅のドラッグストアで買うことにした。店について商品を探すと、そこには似たような商品が二つ。勘の良い方はおわかりだと思うが、あったのは「メンソレータム薬用リップスティック(ロート製薬)」と「メンターム薬用スティック(近江兄弟社)」。ちなみに値段は前者が約300円、後者が約250円。皆様ならどちらを選ぶだろうか。私はこれまでメンソレータムユーザーだったのだが、今回はメンタームを買うことにした。それには安かったと言うこと以外にも一応理由がある。
元々、メンソレータムはアメリカ人のウィリアム・メレル・ヴォーリズが、日本での布教活動のための資金作りとして1905年にアメリカのメンソレータム社から販売権を取得し、販売を始めたのが日本での販売のルーツだそうだ。このときに設立したのが近江兄弟社という会社である(設立は1920年)。ちなみに近江兄弟社の社名は、所在地の近江八幡市と「人類皆兄弟」のキリスト教精神を表すもので、べつに近江さんという兄弟がいたわけではない。
というわけで、元々メンソレータムは近江兄弟社の商品だったのだが、1964年に創設者のヴォーリズが死去した後経営が悪化し、1974年に倒産してしまう。この際、近江兄弟社はメンソレータムの販売権を返上し、リトルナース(メンソレータムのふたに書いてあるあれね)の商標も売ってしまう。その結果、翌75年にロート製薬がメンソレータム社から販売権を取得、ついでにリトルナースの商標も手に入れてメンソレータムの日本での販売を開始し、現在に至っているのだそうだ。
そんな悲運の近江兄弟社だが、その後再建を図り、大鵬薬品の資本参加などで見事に復活する。その鍵となったのが、かつてメンソレータムをライセンス生産していた工場を利用して生産した商品、「メンターム」である。こうして、ドラッグストアには今でもほとんど同じような商品が二つ並んでいるのである。ちなみにメンタームのシンボルマークは「メンタームキッド」と言うんだと。
ちなみにメンソレータムの元祖である米国メンソレータム社だが、88年6月にロート製薬に買収されてしまった。と言うわけで、現在メンソレータムは名実ともにロート製薬のものである。
ちなみに創設者のヴォーリズという人は建築家としても有名で、各地にヴォーリズ設計の有名建築が存在している。また教育にも熱心で(元々英語教師だし)、近江兄弟社学園も設立している。近江兄弟社高校は甲子園にも出場しているね(1993年夏)。企業の名前が付いた珍しい高校だと言うことで当時話題になったことを俺も覚えている。それにしても多才な人ですな。
というわけで、こんな近江兄弟社の心意気をかって商品を買ったというわけだ。早速唇に塗ったらすっと痛みが引いた。いや助かった。ちなみに上記を調べるのに使ったサイトの一部がこれ(直リン御免)。このほかにも「メンソレータム 近江兄弟社」でぐぐると一杯出てくるが、細かい部分の記述は一致していない部分も多い(近江兄弟社の公式サイトですら)。そのため上の歴史も間違っている部分が入っている可能性があるので、使うのなら慎重に使ってくれ。
http://www.dik.co.jp/seken/GOGEN/oro.htm
http://www.maboroshi-ch.com/sun/pharmacy.htm
http://www2.plala.or.jp/happy100/zatsugaku/littlenurse/littlenurse.html