地獄 ★★★☆☆

兄妹関係で生まれた子供が、死んだ母親にかわって復讐する話。

こういうストロングスタイルなB級映画を、東映制作のメジャー資本でやれてたから、1970-1980年代の日本映画は後の現代にも”映画作品”として残るような、多様な作品ラインナップだったのだろう。現代の日本メジャー映画には「作ってみた結果、諸般の事情でB級になっちゃいました」みたいな大作映画は山ほどあるが、こういう狙ったB級で面白い作品は昔ほどなくなった。最近だと意図が達成されたのは「ヤッターマン」ぐらいか。それぐらい今のメジャーB級は本当に面白くなく酷い作品が多い。「丹波哲郎の大霊界」シリーズ3作また見たいなあ。絶賛絶版中。

というわけで、とってもくだらない事を名優が大集結して真面目に演じているわけだが、内容が本当にくだらないので、その分役者一人一人の演技がギャップで映える。「岸田今日子の無駄遣い」「金子信雄の無駄遣い」である。またこういう作品には、石橋蓮司や田中邦衛の雑な感じがとってもよく似合う。暗く陰湿なストーリーの割りにノリがめちゃんこライトで、バカバカしく、見ているこっちもそういう自分を客観視して尚のこと可笑しくなってくる。良いB級の良さは、「馬鹿な映画を見ている自分が馬鹿に思えてくる」というメタ的な面白さが付加されるところだ。

良いB級はまずストーリーの起伏に富まなければならない。陰湿はわかった、でも陰湿なまま一定の低温でストーリーが進行すると、「単なるつまらない」作品になってしまう。ストーリーそのものがつまらないのはB級以前に面白くない作品だ。B級はB級で中々難しいもので、良質なコントと同じように「馬鹿なことを大まじめにやる」のがとても重要である。最近の日本メジャーB級ではこの点を大いにはき違えていて、「おちゃらけて大騒ぎすればいいんだろ」ぐらいのノリでまさに”B級テイスト”でやっちゃうもんだから始末が悪い。

「んなアホな」「そんなわけねえだろ」と一々つっこむのも憚れるほどの潔いクソぶりが実にお見事な作品だった。今作ってもどうせ地獄のシーンはCGでやっつけるんだろうなあ。いやこの根性お見事。あっぱれ。今後もどんなに時間の浪費であろうと、こういうB級を難なく見れるぐらいの精神的余裕はキープしておきたい。そういう意味では、今の自分の精神状態は如何様か知るのに、レファレンス的に用いても良いかもしれない。

主題歌は山崎ハコの「きょうだい心中」。

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