いきなり鏡の向こう側に行ってしまう話。
根性がねじ曲がっているので、思春期に完全否定したものは今後恐らく一周することはないであろうと、今のところ感じている。「ダンス」しかり「ミュージカル」しかり、その中の一つが「ファンタジー」という大きくて曖昧な項目だ。この映画はその完全否定のど真ん中をぶち抜いてくれているわけで、つまりそういうことだ。
それを再確認させてくれたことは間違いないんだが、これが仮にアニメーションならまだいけるかなと思うので、完全否定にも多少のブレはあるようだ。大体がファンタジー・メルヘンといった項目は、なるべくなら現実離れしたほうがいいし、場合によってはそれがシュールな笑いの方向に向かうこともあるが元々そういう方向性を指向していないので、多くの場合は「奇抜な格好をした人が、それらしいフワフワした会話を展開する」という構成になる。要は現実と境界をばっさり引いて(今回の場合はそれが鏡だった)、いかにその世界観に引きずり込めたかが全体的な印象の違いになる。あーその時点でだめなんだなあ俺は。
例えばこの映画ではもちろん奇抜な格好をした人がたくさん出てくるが、そのたびに「あーなんでこいつこんな変な格好してんだろ」「よくそれで今日の晩スーパーで買い物できるな」「今日の昼と夜のギャップを映画にした方が絶対おもろいぞ」「はいカットて言われた直後の顔見てー」とか、ああこれファンタジーに手を付けてはいけない人種の人だろう。
ファンタジーという定義も凄く曖昧なんだが、そりゃ「NHK正午のニュースはとてもファンタジーだ」という輩はあんまいないが、「NHK教育はある意味ファンタジー」「ガンダムは立派なファンタジーだ」「渡る世間は鬼ばかりについて今までファンタジーの中のファンタジーだと思っていた」という人はいるだろうし、それは個人個人の感覚による。まあ奇抜な人がいっぱい出てくるのは、個人的にまったく受け付けられるものではないというのは間違いない。
にしても原色のコントラストを多用した画面構成は見事だし、「あーこういうの好きな人が見るといい感じなんだろうなー」というキャラ付けもされているようだ。あとアリス役の人がかわいい。
すまん。レンタル屋で目的なしの無作為抽出で手に取ったのがこれだったんだ。この映画に悪気はねえんだ。悪気があるのはこっちの方だ。