Software Design 1991年6月号

特集は「C言語好感度テクニック アルゴリズム編」。この号ではこの特集の他、C言語の新連載が始まっている。その名は「3分間デバッギング」。そのタイトルよりもさらに威勢良く、本文では「プロたるものプログラムが暴走したって、その原因を3ミリ秒でわかるのが当然」と豪語する著者は(株)ソフトウェアジャパンの川上量生氏。
あれ?この名前見たことあるなあと思いきや、ドワンゴの川上会長ですね。ちなみにWikiPediaによると、京都大学工学部を卒業してソフトウェアジャパンに入社したのが1991年となっているので、この記事を書いた当時はぴかぴかの新入社員ですな。まあIT(特にPC系)の世界は当時も今も高校生や大学生がばりばりのトッププログラマだったり雑誌のライターだったりすることが普通にあるので、すごいとは思いつつも、特にびっくりすることではないと思う。

UNIXネタはPCに載せるUNIXの話。当時はSCO UNIXが有力だったんだね。

Software Design 1991年5月号

本号の特集は「Cの高感度テクニック 関数編」。創刊号からここまで特集はすべてプログラミング関連ではなかろうか。そしてこの特集の中で、かの有名な(と思っているのは筆者だけかもしれないけど)藤原博文氏による「Cプログラミング診断室」が始まっている。これは次号からは通常連載となる。
そして個人的に興味深かったのが、MINIX 1.5をPC-9801へ移植したという記事。この記事の、MINIXの内部動作やそれをPC-98に移植する際に道ソースをいじったかなどの紹介などの雰囲気が、何となく今のSD誌の記事に近いなあと感じた。そう、プログラミング入門的なものよりも具体的なソフトウェアの内部構造紹介の方がSD誌っぽく感じるんだよな、個人的には。
あとはIBMが出してきたUNIXワークステーションの出来がすごくいいぞ、ワークステーション市場もIBMが席巻するのでは?という記事も。結局IBMが席巻することもなく、ワークステーション市場自体が消えてしまいましたね…。

Software Design 1991年4月号

まだまだプログラマのための雑誌の側面が色濃いこの頃のSD(まあ誌名からして当然なのかもしれないが)。本号の特集はWindows3.0の実用プログラミング。VBもMFCもないこの頃のWindowsプログラミングが以下に苦行であったかが偲ばれる。
ここまで読んできて思ったのが、当時のSD誌は結構書き手が偏っている(というか少ない)なというもの。吉田弘一郎氏と岩谷宏氏で誌面の半分くらいを書いているのかと思うほどだ。

Software Design 1991年3月号

特集はデバッガ。といってももちろんgdbではなく、MS-DOS上の開発ツールの話。MS-CとTurbo-Cのデバッガについてのもの。
この号で一番注目すべき記事はなんと言ってもMINIX開発者のタネンバウム教授へのインタビューだろう。これを読むと教授はMINIXをあくまでも学習のための教材のままでしておきたいという意思を持っていることがひしひしと伝わる。当時の「PCで使えるUNIX」を熱望しているユーザとの温度差が想像できて興味深い。

Software Design 1991年2月号

特集は「C言語ライブラリ活用百科」。とは言っても主にMS-DOS環境での話で、MS CとTurbo Cとの比較や商用ライブラリパッケージの紹介などとなっている。そのほか連載の大半は引き続きC関連(一応創刊号からPascalとかもあるが)。
で、C関連やOOP関連の話は今につながる話も多いので役に立つ記事と言えばそちらなのだが、わざわざ古い雑誌を読むのだから時事ネタの方がおもしろいよね、ということで今後は時事ネタの軽い記事を中心に読み飛ばそうと思う。この号だとUNIXのGUI周りの勢力争いの話が興味深いかな。SunのOpenLookとIBMやHPのMotifとの主導権争い。こんなことをずっと続けているうちにWindowsとLinuxに敗れ去ったわけですな。この頃はまだWindowsがサーバ市場に来るともLinuxなんておもちゃのOSがサーバに使われるようになるとも思っていなかっただろうなあ(そもそもLinuxの開発開始はこの年、1991年だそうで)。

なんか読んでいると無性に昔のPCを動かしたくなってきたので、VirtualBoxでWindows98とかMS-DOS6.2 + Windows3.1をインストールしようとしたのだが見事に失敗。VirtualBoxの仮想マシンはEMSをサポートしてないそうで、インストール後の最初の起動で失敗してしまう。じゃあなんでWindows3.1の選択肢があるんだよ!なんて突っ込みたくなるが、一応回避策はあるようなので、時間があったらまたチャレンジしよう。ちょうどこの時期のSDの連載にCでEMSを使う記事があったけど、これは試せないんだね。それにしてもEMSなんて今どれくらいの人が覚えているんだろうか。

Software Design 1991年1月号

特集がC、連載も大半がC(およびC++)と、これまでから引き続き「Cマガジン」状態。筆者が最初に読み始めた1990年代後半はすでに今のテイストに近いものだった覚えがあるのだが、そうなるのはいつ頃なのか。気になる。

時事的なネタだとCOMDEX fall’90の記事がある。ラスベガス、懐かしいなあ、去年行ったなあ、ということは置いといて、リリース直後?直前?あたりのWindows3.0で盛り上がっている一方で、OS/2(この頃はまだIBMとMicrosoftの共同開発の頃)はぱっとしないとの話。別記事でもMicrosoftがIBMとの共同開発の要員を減らしてWindowsに振り向けた。IBMとMicrosoftの蜜月は終わりとの話がある。これが数年後のWindows95での最終決戦(と、OS/2の終焉)につながっていくのだなあと考えると感慨深い。

Software Design 1990年12月号

一言で書くと、「Cマガジン?」。
とにかくCの話が多い。あと創刊号もそうだけど、総ページ数に対するプログラムリストの比率が高い。まあこれはこの時代のプログラマ向け雑誌はどれもそうだから違和感はないけど。
当時(といってもこの1,2年後)自分が読んでいたのは電波新聞社の「マイコンBASICマガジン」(ベーマガ)、ソフトバンク(現ソフトバンククリエイティブ)の「Oh!X」や「C MAGAZINE」だったけど、やはりこれらもプログラムリストがページの多くを占めていた記憶がある。ただこれらの雑誌の判型はA4変形。SDはB5ということで一回り小さいせいか、リストが横向きに印刷されているため読みづらい。

そのほかやはり特徴的なのはUNIXの記事が多いこと。この辺に現在につながる流れが見える。

Software Design 1990年11月号

半ばコレクションアイテムとして購入していたSoftware Designの総集編。1990年の創刊から2000年までと2001年から2012年までの2冊どちらも購入したままとなっていた。
先日dankogai氏の書評を読み、アナログを電子化しているから表紙の端が黄ばんでいると言われて「おー確かに」と確認していたら、せっかく創刊号からあるのだから全部読んでみようという気になってしまった。

というわけで、今回から毎号読んで簡単に感想を書いていこう。もちろん時間は有限なので興味のあるところ以外は流し読みで。

創刊号は1990年11月号。筆者がPCに興味を持ち始めたのは中学2年の頃でこれが1991年。つまりちょうど筆者のコンピュータ歴にほぼ沿った発刊となっているわけで、記事に出てくる固有名詞がいちいち懐かしい。
今のSD誌はインフラ周りの記事が充実していると感じるが、創刊号は時代を反映してプログラミングの話題でぎっしり。
巻頭特集はOOPで、その基本的な内容そのものは今でもおそらく通じる(自分はプログラマとしては落第なのであまり偉そうなことはいえないが)。ただ使用言語はほぼすべてC++。今だとJavaだよなあと思いつつWikipediaを確認すると、Javaの開発が始まったのがちょうどこの年なのね。誌面にはNEXTのObjective-Cの話も出てくるけど、この2つの環境に触発されて始まったそう。それにしても、NEXTの子孫のiOSがこれだけ反映し、Objective-Cがこれほど使われるようになったことを考えると感慨深い。
他にはANSI Cの解説記事も。ANSI Cの制定ってようやくこの時期なんだ。そういえば初めてC言語を勉強したこの時期の別の雑誌の記事で、「ANSI Cのプロトタイプ宣言が気にくわない。K&Rの方が良い」と書かれていたのを覚えている。このほか、連載記事も含めてほとんどがC言語がらみのプログラミングの話だ(中にはマシン語も)。

一方で今のSD誌につながるUNIX関連の記事も創刊号からかなり豊富にある。先のC言語の記事群がほぼすべてMS-DOS環境を前提にしていることを考えるとかなり思い切った構成に感じる。でもこの時期は結構XENIXに存在感があるんだね。意外だった。

というわけで創刊号はざっくり読了。2号目以降はここまで長く感想は書かないと思う。