慶應の通信教育課程における噂でもっともよく聞くのは「低い卒業率」であろう。曰く、一割もない、いや5%だ、いや3%だ、といったような話は、慶友会などの通信仲間での会話や慶應通信を扱ったブログを閲覧するとよく出てくる。
しかしながら、実際はどうなのだろうか。これがなかなか難しい。まず大学が卒業率を公表していない(Webサイトの「入学者Q&A」を参照)。そもそも卒業率の計算をどう行うのかによって数値も異なってくる。たとえば日本福祉大学通信教育部は高い卒業率をアピールしているが、ここで使用されている卒業率は4年次在籍者卒業率である。また、中央大学通信教育課程のWebにあるFAQでもこの計算式を使用している。この計算式が表すのは、年次的にもう卒業可能になっている学生の中からどれくらい卒業生が出ているかの数値であり、たとえば通信教育について行けずに1年で中退した学生についてはこの母数には含まれない。確かに大学から見ると興味本位で入学してすぐ退学する学生を数に含めたくないという気持ちはわかるのだが、筆者を含め通信教育の受講を考えている人間が知りたいのは、このような学生も含めた卒業率ではないだろうか。まあそもそも慶應では4年次在籍者(慶應の場合は学年制をとっていないと明言しているので、テキスト配本完了年以降の在籍者とでもなろうか)の人数は公表されていないため、この計算式をとることはできない。
というわけで、慶應で公表されている数値を用いながら、できるだけ卒業率に近いものを求めようと、去年の夏頃に少し調べてみた。慶應では、通信教育発足50周年を記念して1998年に「慶應義塾大学通信教育部の五十年」という本を出版している。この巻末に通信教育が誕生した1948年から1997年までの入学者数と卒業者数が記載されている。これに、1998年以降の「ニューズレター慶應通信」(毎月通信生に配布される学内連絡用の冊子)各号の中で入学者数・卒業者数が記載されたものをメモして表にまとめてみた。
ただこれが意外と大変だった。筆者が入学したのは2003年であるため、それ以前のニューズレターは大学図書館で閲覧したのであるが、ここで集計した数値のうち、1998年~2000年の入学者数が、2008年春季特別号に記載されている年度別の入学者数と一致しない(春季特別号では全体数を集計している。今回は学部別の数値をまとめたかったために過去のニューズレターをあたった)。具体的にはすべて数十人多くなってしまう。数え間違いかと思ってもう一度図書館に行って1998年のものだけ数えなおしたが間違いはない。おそらくニューズレターに発表されなかった入学辞退者でもいたのだろうとあきらめ(でも2001年以降は一致しているのだが)、学部別と全体集計とで別々の値を用いることで妥協した。
このようにまとめたのが、20090114-stat_graduate.pdfである。とりあえず眺めていただきたい。次回にこの集計値についての筆者の考察をまとめてみる。
私も卒業率について考察した一人です。2014年度(2015年3月)卒業して、少しは時間的余裕が出てきましたので、卒業率について考察してみました。1948~2014までの入学者数・卒業者数から単純に割算をして、6%(5.97%を四捨五入)の卒業率を得ました。ただ、直近の10年間の卒業率は20%(四捨五入)の卒業率でした。卒業率は、母集団の採り方によって変動があります。ですから、ここ10年間は入学者数・卒業者数が大きく変動していないので、5名入学すれば1名が卒業すると考えればいいのかなと思います。