通信教育実施大学の特徴

さて、ここまでは大学通信教育の一般的な話だった。ここからは少し筆者の考えを加えて論を進めてみたい。
筆者は、通信教育を行う大学には大きく3グループがあると考えている。この3グループとは、放送大学以前、放送大学、放送大学以後である。
以下の表を見て欲しい。これは2008年現在で通信教育を行っている大学(短大・大学院は除く)を、通信教育課程を設置した年順に並べたものである。(ただし、これは筆者が大学のWebサイト等で調べたものであるので誤りを含んでいる可能性があることをご承知いただきたい。また、設置年と開講年が異なる大学も多く、挙げられた年がどちらを指しているのか不明である場合もあった)

大学 設置年 備考
法政大学 1947年
慶應義塾大学 1947年 ※開講は1948年
中央大学 1948年
日本女子大学 1948年 ※開講は1949年
日本大学 1948年
玉川大学 1950年
佛教大学 1953年 ※1951年に前身の通信講座開設
近畿大学 1960年 ※短期大学部では1957年に設置
東洋大学 1964年
明星大学 1967年
大阪学院大学 1970年
創価大学 1976年
放送大学 1983年 ※大学設置年。授業開始は1985年。
北海道情報大学 1994年
産業能率大学 1995年 ※短期大学では1963年に設置
愛知産業大学 1996年 ※短期大学では1994年に設置
京都造形芸術大学 1998年
帝京平成大学 1999年
人間総合科学大学 2000年
東京福祉大学 2000年
大阪芸術大学 2001年
聖徳大学 2001年 ※短期大学では1972年に設置
日本福祉大学 2001年
武蔵野美術大学 2002年 ※短期大学では1959年に設置
東北福祉大学 2002年
福岡医療福祉大学 2002年 ※大学開学年。開学時から通信課程があったのかは不明
九州保健福祉大学 2002年
武蔵野大学 2002年
中部学院大学 2003年
早稲田大学 2003年
倉敷芸術科学大学 2003年
星槎大学 2004年
八洲学園大学 2004年
LEC東京リーガルマインド大学 2004年
奈良大学 2005年
神戸親和女子大学 2006年
東京未来大学 2007年
帝京大学 2007年
環太平洋大学 2007年 ※大学開学年。開学時から通信課程があったのかは不明
サイバー大学 2007年
近大姫路大学 2008年 ※母体となった短期大学では1969年に設置

さて、ここで表の中程にある放送大学に注目して欲しい。放送大学は、形式的には私立大学だが(設立時は特殊法人立大学)、実質的に国が運営している通信制大学であり、自前で放送局を持って放送授業を行い(関東は地上波、その他の地域はCSにて放送)、全国の国立大学内に学習センターを持つという圧倒的な施設規模を誇る大学である。
この放送大学設置の前後10年ほどを見ると、他の大学は全く通信教育課程を設置していないことがわかる。特に放送大学以前の設置は新制大学発足直後、放送大学以後の設置はここ10年ほどに集中している。これはそれぞれの時期に大学通信教育の開設が社会によって要請されたからだということが言え、この社会からの要請内容の違いにより、それぞれの時期に設置された通信教育課程は異なる特徴を持っている。
まず新制大学発足直後に成立した通信教育課程を見てみよう。この時期は終戦直後であり、新たな高等教育が社会一般に求められていたにもかかわらず、まだまだ社会は貧しく、大学に通学できる若者は一部に限られていた頃である。そのため、一部の私立大学が「教育の機会均等」を目指して通信教育講座を始めたのである。この際、日本社会では学位が取得できる課程でなければ普及しないと考えてGHQに掛け合うなど、現在の通信教育制度を確立するために積極的に活動したことも特徴である。現在の通信課程にスクーリングが必須であるのも、この頃の大学の姿勢が表れたものといえるだろう。
少し長くなったが、要はこの頃に成立した通信教育課程は「教育の機会均等」を念頭に置いたものであるといえる。筆者が在籍する慶應義塾大学もここにはいる。
これとは逆に、90年代後半から最近まで、通信教育課程が続々と誕生している。この要因は大学設置に関する規制緩和、インターネットの普及など通信環境の劇的な進歩、団塊の世代の現役引退に伴う「生涯学習」熱の高まり、等が挙げられよう。また、新たに設置した大学を見ると、地方のあまり有名ではない大学が多い。このような大学は少子化により通学の学生確保がだんだん困難になってきていることが想像でき、18歳に変わる新たな需要を喚起する必要があるという切実な事情もあるものと思われる。
また長くなったが、要するにこのグループは「生涯学習」を念頭に置いて設置されたものであるといえる。
この方向性の違いにより、両者の課程には以下のような違いがあると筆者は感じている。
・前者(主に有名私大が中心):低廉な学費、アカデミックな学習内容、単位取得の厳しさ、学生に対して相対的に不親切、インターネットに対する取り組みの遅れ
・後者(主に地方大・新設大学が中心):比較的高額な学費、実践的な学習内容、社会人向けに学習負荷を軽減、学生に対して相対的に親切、インターネットを用いた講義などの新技術の取り込みに熱心
以上、あくまでも筆者の感じていることであるため、疑問・反論はあろうがご容赦いただきたい。
今回書ききれなかった放送大学と早稲田大学については次回で。次々回よりやっと慶應義塾大学の通信教育課程について触れることとなる。

大学通信教育の概要

 そもそも、大学の通信教育とは何かを知らない方も多いと思うので、初めにこのシステムについて説明することとする。
大学が通信教育を行っているという話を聞くと、知らない人は公開講座のような一般市民向けのカルチャースクールのようなものを思い浮かべるかもしれない。しかしながら、このシステムはれっきとした正規の教育課程であり、戦後の新制大学発足とほぼ同時にスタートした、かなり歴史のあるものである。
正規の課程ということで、当然のことながら通常の大学の課程と同様の学習量が規定されており、最低4年間の在籍と124単位の取得をもって学士の学位が授与されるというのも通学課程と同様である。ただし、通信教育はその学習方法に特徴があり、以下の2通りの学習形態を併用することを基本とする。
通信授業:
テキストを学習し、課題に基づいてレポートを提出する。その後、科目試験を受験し、レポート・試験双方の合格で単位取得となる。
面接授業:
別名スクーリング。いわゆる教室で行う通常の授業のことを指す。通信教育にもかかわらず、スクーリングは必須であり、卒業所用単位数の1/4はスクーリングで取得する必要がある。
というわけで、通信教育といえども大学に通う必要があるという点がこのシステムの大きなポイントである。このスクーリングがあることで「大学生」の意識を持つことができる一方で、時間のない社会人にとっては卒業への大きな壁となるのである。

慶應義塾大学通信教育課程について書いてみよう

筆者が慶應義塾大学(通信教育課程)の経済学部に入学したのは2003年4月である。この時、筆者はあくまでも表向きは「ネタ」として「慶応ボーイになろう計画」と銘打って入学した。当時のはしゃぎっぷりは左のカテゴリ欄の「勉強」を見ていただければわかると思う。
当然のことながら内心ではネタ以外の様々な思惑があり、結構真剣に考えて入学したのであるが、にもかかわらず、初めの3年ほどはほとんど在籍しているだけの状態が続いた。そのためこのブログにもその後の学生生活についてはほとんど記載されていない。まあそもそもここ数年はコンテンツの更新をほとんどbitch任せにして、筆者はサイトのメンテナンスのみを行ってきたという事情もあるのだが。
その後今日までの間、結婚をし、30歳を超え、娘が生まれるなど筆者の私生活は激変した。変わらなかったのは職場と(会社が買収されたりもしたが、未だ変わる気配はない)慶應の学生であるということくらいだ。
というわけでだらだらと社会人学生を続けているのだが、一応最近は地道に勉強を進め、今年からは卒論指導を受けるようになった(まあ指導教官がついたと言う意味だ)。それに伴ってこの通信教育というシステムについても自分なりに理解を深めてきたつもりだ。そこで、せっかくだから少しずつ慶應通教に関する筆者の考えや調査結果を披露していこうと思う。