父親たちの星条旗 ★★★☆☆

1945年2月、硫黄島の戦いですり鉢山の頂上にアメリカ国旗を掲揚した兵士達の話。
上映時期は前後するが、前に見た「硫黄島からの手紙」が、日本側から見た硫黄島の戦いそのものをテーマとした、いわば戦争アクション映画だったのにたいして、こちらは硫黄島の戦い後、戦果を象徴するヒーローに奉られた兵士たちの、世論や時代に翻弄される様を描いたヒューマンドラマ映画として構成されている。そりゃあもちろんアメリカ軍の戦い方としては、1年前のノルマンディー上陸とほとんど変わらないような「力押し」、確実に総員の何割かは死ぬが確実に勝利を得られる物量作戦を選択していたので、戦争行為自体に特別際立った特徴はなかったのだろう。戦争の勝利というのが、最終的に地上部隊が進入してその地域を制圧して初めて達成されるという事は今も昔も変わらないのだが、昔の場合そのやり方があまりに残酷すぎる。
また興味深かったのは、本作では戦争とは全く関係のない形で死亡した兵士達についても描かれてあるということだ。戦争での兵士の被害の内極微少ではあるが、例えば不注意だったり、なんかのはずみで手榴弾のピンが抜けて近くにいた4~5人もろとも死んでしまったり、本作にあったようにドジな奴が海に落ちてそのまま救助しなかったり、というような本当にその戦争において全く、これっぽっちも意味のない死亡事例もあったんだろう。本人の名誉のために、それらは等しく「名誉の戦死」として伝えられたんだろうが、こういうのは見ていて戦闘での被弾による死よりもせづなさがハンパじゃない。なんなんだろうなああの人たちは。
ヒーローがプロパガンダに利用され翻弄されて自分を喪失するというプロットはたまに見るヒューマンドラマの体だ。ただし本作はそれが実話、しかも太平洋戦争末期の国債購入を呼びかけるキャンペーンの犠牲になったという、おまえそれ戦後の共産主義者との戦いを見据えた資金集めをその時点でやっとったのかという感情も相交じってしまった。日本の惨状に比べたら屁でもない悩み事だが、本人達にしてみるととても重要な事なんだろう。いや、見る順番間違えたな。「硫黄島からの手紙」のインパクトが強くて、それありきだとこっちは薄いわ。

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