ブラッド・ワーク ★★★★☆

心臓移植を受けた元FBIの有名捜査官が、ドナーの心臓が殺人により提供されたことを知り、犯人を捜す話。
一番身近にいる奴が一番怪しいというのはシリアス・サスペンス系の古来からの常套手段で、今回もその線で行くならばまさに依頼を持ってきた姉貴か、手伝わされるハメになったボートの隣人かということなんだが、本作はその王道を突っ走ってくれたということで、その点どんなひねくれ者や正直者が見てもおもしろさに安定感があることは保証できる。つまり、犯人追及モノで最重要の「あいつか~」感がクライマックスにおいてかなりいい感じに消化されるからだ。
また本作は現役の頃FBI捜査官として大きな仕事を扱っていたという事と、殺された妹の心臓を提供されているという血のつながりの様なものが対比してあって、彼が真犯人探しに異常な執念を燃やしているのも納得できるし、仕事以上の運命めいた何かで行動しているという点で共感できる。だからして、全体を通して描かれる驚異的な犯人追及までの「御都合」に関しては、血と血が結びつけた何か得体の知れないパワーがそうさせたと思って見ると意外におもしろい。
例えば件の殺人が起こったスーパー?から出た後で、異常なまでの嗅覚で犯人と何らかの関係のある車を見つけてショットガンをぶっ放したのは、これがもし単なるFBI捜査官であれば「そんなわけねーよ」と一気に醒めてしまうところが、本作では「妹の怨念+妹を供養したい人間の執念」があの車を見つけさせたのだと取ることもできる。
あとはまあ、設定からもわかるようにもう「おじいさん」と言っても差し支えない巨匠クリント・イーストウッドが、がっつりとはいかないまでもガンアクションに挑戦しているというのはすばらしい。志村けんが「だいじょぶだあ」は無理でも深夜に「変おじTV」(定期的に名前が変わっているぽいので今はどうなってるかわからんが)をやってるのとちょっと似てる。こういうじいさんはいいね。