マフィアの大ボスが暗殺され、残った縄張りを巡って抗争が起こる話。
1ではヤンとラウのスパイ合戦の側面が強かったが、2では二人の若い頃までさかのぼった話になっていて、今回は心理戦というよりもなんだか、ゴッドファーザー的血縁・親子関係などが背景にある重厚なマフィア王道物語に仕上がっている。あの結婚パーティシーンやオヤジへの弔いの杯シーンはもろゴッドファーザーを彷彿とさせるし、続編とは言いつつもそのカラーはまったく別物だ。
1で消化不良に終わっていた、ヤンとキョン・ヤンと女の関係やウォン警部とサムの関係などもわかるようになっていて、1をありきとした場合に(この映画は2から見てもそれはそれで違った受け取り方ができるかもしれない)、主要人物のバックボーンをいっそうふくらませる物となっている。確かにヤンが実は大ボスのせがれだったという設定は無理くり感があるが(だってそうだとサムは基本的にヤンを信頼しないはず→表面上ヤンは兄貴のボディガードであり、その兄貴は結果的にサムのせいで死んでしまった)、これはこれでおもろくなってるからよしとしよう。
あえて主役と言えばウォン警部とサムになるのだろうか。こいつらはやっぱ2で漢を上げたな。
月: 2005年4月
インファナル・アフェア ★★★★★
マフィアにスパイとして加わった潜入捜査官と、警察にスパイとして加わったマフィア野郎の話。
香港映画でこういうハードボイルドなコップ・マフィアものと言えば、少し前まで男たちの挽歌シリーズが代表だったけど、ああいうドンパチがメインの映画ではない。そういうハードボイルドを背景とした読み合い・だまし合いといった心理描写の面が強く感じられる。ラウにしてもヤンにしても、さすがスパイと言うだけあってお互いの対象のわずかな行動や言動から察知し、スパイ活動していく様はまさに戦いの描写であり、それが刻々と変化していく様はスリリングだ。
これがハリウッド等モダンなやり方を香港流に噛み砕いたものなのか、サウンドや場面構成でクールを装っていてもやっぱりキン肉マン的漢の「ゆうじょう」話の側面が非常に強かったり、香港丸出しの歌が挿入されたり、恋愛描写もなんだか鈍臭かったりだと、そういう良い意味でスタイリッシュになりきれていないところがまた味があってよかった。
最初の方の絡みが実はかなり重要だったということが後々にわかってくるのだが、そこを敢えてスピーディーにわかりにくくすることで伏線にしていくという手法を取っている。またなぜウォン警部(稲中に出てきそうなフェイスの人)とサム(マフィアのボス)がちょっと親しげなのかとか、キョン(梶原善に似てる人)がヤンにやたらやさしいとか、あの久しぶりに会った女とか、よくわかんないまま処理されていった登場人物とその背景も目に付く。にしても、ウォン警部の時計の伏線は非常にヤラレタ感が強くてよろしい。
やっぱどちらかの視点で見てしまうんだろうが、自分は断然ヤンの方が好きだ。トニー・レオンのワイルドな表情も凄くいいし(振り返るシーンはマジかっこいい)、ロウの正体が判明した瞬間、(ドラマということを抜きにするなら)すぐさま全員の前で「これは俺が潜入している時に書いた字で、なんなら筆跡合わせてもいいぞ、つーかおめえなんでこれ持ってんの」とわめきちらせばソッコーでラウが捕まるものの、敢えて行方をくらませて自分でオトシマエを付けようという漢気、最後のエレベーターのせづなさなど、こいつはパーフェクト超人だ。
あいつのようになりたいか。俺もああなりたい。