今期のブラジル全国選手権でサントスを優勝に導いたルッシェンブルゴがレアル・マドリーの監督に急遽就任してしまった。
前期はクルゼイロを勝ち点100という独走状態で優勝させ、今期途中から監督就任したサントスでも最終節までもつれたものの最終的には優勝させたことで、向笠さんもかつてのテレ・サンターナ級の監督と言っていただけに、ブラジル全国選手権における名将が去ってしまうのは正直残念だ。
そもそも前期終了後、クルゼイロからばっさり切られた後にヨーロッパ進出を図っていたルッシェンブルゴは、その頃ポルトガル語の通じるスーペル・リーガの強豪(ベンフィカかスポルティングだろうな)を踏み台に、やがてはトップリーグの監督へとステップアップを考えていたらしい。それがヨーロッパ進出に際していきなり世界一のレアル・マドリーからの招聘というのは皮肉な状況だ。
今期のサントスはエメルソン・レオンでスタートしたものの調子が悪くルッシェンブルゴに交代したのだが、監督交代後に彼の意向で獲得したと思われるバジーリオやヒカルジーニョが活躍したことが優勝の大きな要因だった。レアル・マドリーも冬の移籍市場での選手獲得を見込んでこの時期の就任発表になったのかもしれない。前監督(ガルシア・レモンは無視)のカマーチョが選手との確執で辞任したこともあり、ブラジルの名将であれば大物ぞろいのチームの中で中心であるロナウド、ロベルト・カルロスらを操縦できそうなのも一つある。ルッシェンブルゴの攻撃サッカーは通用するのか。それとも数多のブラジル人選手のようにフィットせずに出戻るのか。レアル・マドリーだしなあ。どうかなあ・・・。
月: 2004年12月
オールド・ボーイ ★★★★★
突然15年間監禁された男が、その理由を探して復讐する話。
久しぶりに見終わった後のインパクトがでかいサスペンス映画を見た。振り返って自分のインデックスをざっと見たところ、かなり前だがユージュアル・サスペクツ以来かもしれない。15年という、ただ単に長いというだけでなくその年月の意味を知らされたときの衝撃は、これはもう初見一回のみの衝撃だろうが相当大きかった。
韓国映画だが、現在日本で展開中の「韓流ブーム」にバリ乗っかりしてやってきた映画ではない。そう言い切れるのは、「韓流」に関して代表的な人物であるペ・ヨンジュン(つーかこの人しか知らんが)とは完全に別ベクトルのフェイスと雰囲気を持った人々が満載だからだ。主役の二人にしたってオデスは笑い飯の西田に似てるし、イウジンは大分トリニータの高松に似ている時点で好感が持てる。また周りの人物も曲者ぽいのが多く(リンチされる管理人はハマリすぎ)、両極端で言えばダメ人間フェイスがほとんどという点は、韓国の男前の基準がずれているのか、あるいはこういうテイストの映画にはやっぱダメ臭が必要だろうということでのチョイスなのか、いずれにしろぺとその周辺がやるよりは、西田+高松の組み合わせが最高に良かった。
15年の衝撃の後に展開される二人のやりとり、ああいう常軌を逸した表情と行動は二人とも凄くいい。特に高松の方は最初なんだこのダメフェイスと思って見ていると、徐々に確信に迫るにつれてあの「無表情+シニカル笑い」な顔がかなりいい感じに効いてくる。あれは素晴らしい。
最初の導入部分からしてニュアンスで伝えていくのが多かったり、場面切替のテンポが絶妙であったり、そういうストーリー全体のテンポを重視していくのもいい。餃子の件なんかはその典型で、段々と「こいつ餃子ばっか喰ってたのか」と思うような作りは、余計な部分が省かれているし見ている側も映画に感情移入しやすい。
あと印象に残ったのが日本でいう「殺陣」のシーンだ。殺陣は日本の時代劇や最近だとあずみという名の上戸彩で見たが、最悪なことだがああいうのは「稽古のフィードバック」でしかない。あいつがこう斬りかかってくるからこう返して、そしたらやつが・・・・みたいに流れが決まっているのが見え見えで、よくいえば様式美とも言えるがまったくリアリティがない。その点この映画のオデス大暴れシーンはその全編を2Dの画面で構成し、平たくいえば喧嘩のリアリティを表現しているように感じられた。狭い通路で数十VS一人という喧嘩のシチュエーションの場合、殺陣で言う「なんであいつがつばぜり合いしてて後ろがら空きなのにおめえは斬りかからねーんだよ」という疑問を、敢えて狭いシーンという制限をつくって合理的にしている。
何十年積もり積もった怨念がもたらす復讐劇と言えば、いま現代SF風にアニメでリメイクされている「厳窟王」だが、それを見てもよくわかるように復讐劇が勝手に面白くなるというメリットを除いたとしても、復讐に到る動機の追及、またその結実が見事で、なかなかこういう映画は見られないと思った。