麻薬密売組織とそれを取り締まる機関、現場で動く捜査官たちの麻薬大戦争。
「麻薬捜査機関のトップとそのヤク中の娘」「現場で動く捜査官」「ヤク密売人のダンナをパクられた若奥様」「メキシコの麻薬取締官」、だいたいこの4者くらいが場面場面で次々に切り替わり、互いが互いに直接・間接的に影響しあうという、結構入り組んだ作りになっている。そしてそれがそのまんま麻薬取引の複雑さを表してると思う。
実際やったこともないし、また一切やりたいと思ったこともないしやるつもりもないので、無理矢理強要される以外これからもやることはないであろうが、麻薬というもんはそんなに気持ちいいもんなんですか。中毒性という意味では煙草とよく似ていると思うが、まあ本作でもそれが皮肉かどうだか煙草をふかすシーンがこれ見よがしによく登場し、なんか思わせぶりな感じなんだけれども、煙草と決定的に違う点、それはまず麻薬は個人の破壊的な死の原因になりうるという点、それから多くが非合法であるゆえに非合法組織の資金源となりうる点、この個人の死に関わるミクロの視点、そして麻薬組織というマクロの視点、この二つが互い違いに絡み合ってるのが本作を面白くしているポイントだろう。
つまり、麻薬を中心とした人間や組織の心理ゲームのようなもので、特にあの若奥様やデルトロなんかが凄くいいんだけども、個人レベルでの駆け引きやタマの取り合い、組織レベルでの勢力争いや摘発なんかがこう、まさしく戦争なんですね。局面での事柄がそのまま戦全体に関わっているという。それがアメリカ社会に根付いている(だって若者の4分の1がやってるらしいし、俺がアメリカに行った時、こりゃヤク中であろうと思われる女が道で寝てるのを数人見たし。そういやあいつもナッシュビルの小学校で注射器がいっぱい転がってたとか言ってたしなぁ。)麻薬だけに、やけにリアルであるし、またデルトロあたりの映し方がなんかドキュメンタリーぽくていい味だしてる。
というわけで、いわゆる戦争を題材にした戦争映画よりも一般の生活レベルに及んでいるという意味でよっぽど戦争戦争している戦争映画であるし、かなりエキサイティングな物語です。ただこれが当事国であるアメリカに住んでいたらまたかなり違った受け止め方、もっとセンセーショナルな映画だったであろうという点で、日本に住んでいる自分に対して-1。