どっかの街の煙草屋とその周辺あたり。
見終わった後まず感じたのが、あ、これ見たことあるなぁと。もちろん本作を見るのは初めてなので、なにか別の作品がとても似た雰囲気であるということなんだけども、調べてみると本作はルル・オン・ザ・ブリッジと同じ脚本家でしかもハーヴェイ・カイテル主演という、ああなるほどと思ったのです。
ストーリー自体はもんのすごくどうでもいいというか、生活していると起こりうるであろうことを少しのびっくりを絡めて進めているだけのことなんだけども、なんというかこのハーヴェイ・カイテルという役者なんかが象徴的なんだけども、雰囲気でさらってしまうという巧さがあるように感じられる。
こういう雰囲気ものは、その雰囲気にさらわれるのがわかっていながら心地いいという場合と、押しつけがましい雰囲気具合に辟易してしまい、すごく惰性的な退屈な場合とに両極端に分かれるものだけども、本作はその雰囲気がいい感じに醸されていて、あまり言いたくないけど一言で言えば小説的なのです。
この小説的という言葉はかなり胡散臭くて、なぜなら小説の得意とする、なんだかよくわからんけど最終的に雰囲気にさらわれてしまったよこん畜生と、そういう感覚をわざわざ映像を使って表現するのはいかがなものか、そんならそんなで小説読みゃあいいじゃねぇかよということになるわけです。ディティールにこだわることはできても、みんながみんなその細部に注目するわけでないし。
では映画の小説的な良さとはなんだろうかと考えた場合に、その雰囲気をニュアンスで伝えることに言葉がいらないわけです。表情や仕草、語り口なんかに集約される。その方法がハーヴェイ・カイテルは巧いと思う。デニーロに似てるけど。
なので本作は特に目的なんかない、ただいい感じの作品を作ろうという作者側の思いから生まれた他愛のない話であり、それだけに映画の手法にマッチしてるんだと思う。
煙草吸ってたら印象ももっと違ってたかもなぁ。