パッチ・アダムス ★★★★★

自殺未遂で精神病院に入ったアダムス。そこで出会った人々により、彼は生きがいを見つける。それは医者になって患者の生を高めること。しかしそこは、画一性を保持する病院側との壁があった。
いい意味で凄くハリウッド的で、よくできた脚本の上に「こうすればいい映画になる」という方法論の見え見え具合、音楽の使い方、話の持っていきかたなど、見終わってすぐ感じたことが、これは感動的な映画の種類に入ると思うのだが、『よくできてるな』。
まず主演のロビンウィリアムスが過去に「ガープの世界」「レナードの朝」など大きく見れば同じような映画に主演してて実に好演、アメリカン感動にロビンありき、のようなことができてて、この主演というのは直球勝負のそれも160キロの直球で、手元からリリースした瞬間にその先が見えているようなものだ。
よくできた脚本と書いたが、これは実話を元にしているらしい。もちろん脚色はあるだろうけれども、この劇中にアダムスがやっている方法というのが、種類でいえば自分がやるようなことと真逆のことだと思われ、目指す部分は少なからず同じようなことかもしれないが、実際アダムスのような方法を取るのは自分には難しい。現実に自分の身の回りでやられたら、多分引く種類の人間だ。わしは。
にしても、医者としてこういう突き詰めかたは一つとしてアリだと思う。アクションが多分にアメリカナイズドされてるけど、死を伸ばすよりも残された生を満喫させる、また形式よりも心の問題、これは日本で言われている偏差値教育の問題とも少しリンクしたことじゃなかろうか。
しかしここで気を付けるべきは、アダムスが天才、それも「遊んでてもテストはできる」というこれまた典型的な漫画のような天才、おそらく現実でも少しはそうだったんだろうという点だ。仮にアダムスがただのアホたれならばこの話は大法螺ふきのバカチンの戯言として処理されている。そういう意味でアダムスは恵まれている。アダムスには、そうした自分の『個性』を発揮するべき資格があったとも言える。
翻って日本の偏差値教育に対する『個性を伸ばそう』のスローガンはこの映画で崩される。凡夫の個性を伸ばそうとしたところで凡夫は凡夫、どうしようもない。偏差値の画一化よりも個性の画一化の方が圧倒的に恐ろしい気がする。
映画に戻ろう。このように本作はヒューマンドラマの王道を突き進み、万全の体制で臨んでいるので一つの完成されたドラマとして見ごたえがあるし、関心した出来栄えだと思う。感動に付き物のくささもロビンウィリアムスという一級の演者により見事に漂っていない。これは凄いことだと思う。ハリウッドの歴史を感じる一本だ。と同時に、感動に付き物のあの安っぽい音楽をどうにかしてほしい。あれはハリウッドの歴史の汚物だ。

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