写真家アラーキーとその妻陽子の話らしい。
竹中直人監督・主演の映画は、これまで「無能の人」「119」とあったが、それに一貫してみれるのは、なんというか、静寂というのが正しいのかわからないが、とにかく「静」だと思う。
そういう意味では「無能の人」が一番しっくりきたし、逆に「119」はなんとなく終わった感じだった。静けさというのは見る人によっては爆弾を抱えているもので、たとえば自分の場合「119」は面白くないと思う。しかし「119」最高だと思う人もいるだろう。つまりアクションなんかの激しい映画に比べて、静かな映画は見る人によってはほんとに120分の苦痛となることだってあるわけだ。まだ激しい映画だったら若干万人が楽しめる余地が在るはずだ。だから、静の映画の宿命として、ニュートラルがないとも言える。
そこでこの「東京日和」。いい映画と思う。まずしがない写真家・アラーキーというのもいい感じだし、妻の陽子は情緒不安定でかわいい。日々のたわいのない出来事に互いの愛情を感じるのも、この夫婦ならありえることだ。
ラストシーンで陽子が編集者の名前を間違えた理由を気付く。こんな何気ないことで妻の大事さを感じるのは、それまでの暮らしが大きな前提となり、見ているこっちもじんときた。
しかしねえ、さっきの「ニュートラルがない」ということで言えば、どうでもいいといえばどうでもいい話だし「退屈だった」という人もいるだろう。また、仮に陽子が中山美穂でなく、そのへんのババアとかだったら絶対成立しない話ではある。その点-1。