内科医ビルとその妻は互いに信頼の置けるパートナー。しかし、ふとした会話から互いの根底に存する思想がぶつかり、妻への信頼が揺らいでしまう。そんな折、ビルは知己からとあるパーティーの話を聞いてしまう。スタンリーキューブリックの遺作となった、かなりエロい作品。
真実と虚構、正常と異常、対局する二つが融合した状況を扱うものが多いキューブリック作品の中で、本作はその境界がはっきりしていないといえる。ロリータにはあの教授がいたし、時計仕掛けのオレンジには悪たれガキ、フルメタルジャケットにはデブ。
そういった、いわゆる異常者がいないのである。なんというか映画全体の雰囲気が異様なんである。なので見ている最中になんだかこんがらがってくる。なにいってんだこいつはとか、なんでそうなるんじゃとか、疑問だらけになってなんかよくわからんうちに物語は進行する。
まさしくこれこそビルへの感情移入、その結末がある意味原点回帰だ。つまり最早両者の対立軸と言ったものは、そんなものはないと。あるがままをあるがままに受け止めよと、そういってのけやがる。
しかし話ももとより、やはりキューブリック作品の醍醐味は、その映像手法、音の使い方など、五感を多分に刺激するヴィジュアル感覚だろう。ピアノの短音が妙に耳に付き嫌な感じだ。
しかしなんだか・・・。どうしても比べてみてしまうのだが、はっきり言ってしまえば過去の作品の方が相当面白い。これが駄作だとは言わないが、あんまり面白いともおもわないのである。