時計じかけのオレンジ ★★★★★

四人のチンピラを率いるアレックスは、毎日セックス&ヴァイオレンスに溢れていた。他のチンピラどもとケンカ、浮浪者をリンチ、きまぐれに強姦、なんでもあり。平時親の前ではいい子を装うこのクソガキもついに年貢の納め時。刑務所に収監されたのだが、ある手段を用いれば刑期が大きく短縮される。果たしてアレックスはどうなる?
数あるキューブリック作品の中でも最高の出来だ。
まず本編とは関係ない部分で、言葉の面白さに特徴がある。スラングと言ってもいい記号化された言葉が溢れ、丁寧にも字幕には下線まで引っ張ってある。「強姦」=「デボチカトルチョックしてインアウト」、「あほ」=「くそボルシーヤーブロッコあほ」意味不明。特に「あほ」の場合、「くそボルシーヤーブロッコあほ」とした方がより「あほ」を強調しているように感じられる。最後に「あほ」言ってるからね。つい女性のことをデボチカと言ってしまいがちになる。
内容についてはシナリオが示唆に富んでいる。原題「CLOCKWORK ORANGE」は、題名からしてあやしい感じだが、そのとおり映画はアレックスだけでなくその内容も剥けば見えてくる見応えのある内容だ。
アレックスは治療でセックス&ヴァイオレンスを拒絶、吐き気を覚えるほどになった。刑務所は悪人に偽善と虚飾を教え込み、本質的な犯罪の解決にはなっていないと学者は語っていたが、この治療は悪の要素を悪人から除去することで犯罪抑圧を計ろうとするものである。
確かにアレックスは悪を拒絶した。しかしそれは善でもない、悪でないだけである。結局彼は自分で抑圧を解放し、而してもとの時計じかけのオレンジ、表面イイコチャンの中身クソガキに戻ってしまったのである。
こういうアレックスをフィルターにして観るとどうか。特に後半、人間は所詮みんな時計仕掛けのオレンジだということがよくわかる。極端なアレックスに象徴されるように、正と負の二つの感情、そのどちらかが抑圧されれば均衡を失う。それに気付かない人間の滑稽さ。ラストの内務大臣とアレックスの記念写真、アレックスがなんだかヒーローに見えた。
そしてこのシナリオ以外の部分も、BGM・小物に至るまで官能的・本源的な感覚を覚えるほどで、完璧な作りだ。キューブリックにかかればスローモーション&クイックといった技法も全て美しく見えてしまう。一貫したクラシック、ヴェートーヴェンが後半に連れて大きなものとなる、こういったキューブリック節ともいえる映像は見事。「I singin’ in the rain・・・」トルチョックは強烈!
ジョジョ第三部のオインゴ・ボインゴ兄弟、彼らは時計仕掛けのオレンジがもとでゲームオーバーになるんだが、オインゴの能力が「顔を変える」というのも、なるほどといった感じじゃないかな。

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