ここでは、概論に引き続き、実際に私が所有しているキーボードを見ながら、キーボードの実際について見てみたいと思う。まずは単体のキーボードから。
デスクトップ用キーボード(キーボード単体)
デスクトップ(タワー型を含む)タイプだと自由にキーボードを選ぶことができる。たいていの人は購入時のキーボードをそのまま使用しているだろう。だが、ちょっと冒険して、新しいキーボードを買ってみるのもよいかもしれない。キーボードの使用感は、PCを弄ぶときの心地よさに直結するものなのだから。
Compaq 109キーボード
私が最初にIBM PC/AT互換機を使用し始めた1998年から数年間使用していたキーボード。1997年ごろに流通していたCompaq
Presario用のキーボードのようだ。秋葉原のバッタ屋に流れていたのを1,000円で購入。コンシューマ向けのキーボードらしく、デザインは本体の形に合わせた丸みを帯びたデザインで、メンブレンゴムを使用し、キータッチは軽く安っぽい。しかし使用していた当時は結構打ちやすくて気に入っていたことを覚えている。単にこだわりがなかっただけだと思うが。
ここ2年ほど使用していなかったが、この記事のために押し入れから引っ張り出してみると、びっくりするほど激しく黄ばんでいた。物は丁寧に扱わないと急速にダメになるのだということを再確認した。ちなみに、現在所有している唯一の109キーボードである。
X68000PROキーボード
我が家に現存している昔のパソコン、X68000PROのキーボード。メンブレンだが、比較的「スコンスコン」とキー入力ができるような気がする。ちなみにこのPROという機種は低価格化のためにコスト削減を行った結果メンブレンを採用しているが、その他の機種はメカニカルキーボードらしい。私が高校時代に使用していたX68000ACEのキーボードもそうだったようで、確かにこのキーボードを使用し始めた当初、以前とはキータッチが違うように感じていた。ちなみに、どちら(メカニカル・メンブレンともに)にしても、X68000のキーボードはあまり質が良くないらしい。私は結構気に入っているキータッチなのだが。
ただ、このキーボード(というより、X68000用キーボード)の一番の特徴は、そのキーの多さだろう。スペースバーの両側にはかな漢字変換用のキーが5つも並んでおり、さらに各種ステータスキーがキーボードの上部と下部にずらずらとある。しかもそれら一つ一つにステータスを表すLEDが設置されたりして、やたらと物々しい。ちなみにこのLED、ソフトウェア制御が可能で、音楽に合わせて点滅させるプログラムとかゲームとか、その辺の遊び機能のあるプログラムが結構あったと思う。
ところで、概論で書いた私の好みのキーボードについてだが、キー配列に関して最も影響を受けたのがこのキーボードである。パソコンを使い始めてから数年はこのキーボードを使用していたためであるが、このキーボードで日本語IME(当時はフロントエンドプロセッサ、略してFEPと呼んだ)を切り替える際、右手の親指でXF3キーを押すのに慣れてしまったため、未だに右手親指(JISキーボードだと「変換」キー)を使ってIMEのON/OFFを切り替えられないと使いづらいと感じてしまう。ASCIIキーボードが嫌いなのもそこに理由がある。
Compaq 101キーボード
自分の中でASCIIキーボードブームが起こりかけたときに入手したキーボード。1,500円ほどで入手。やっぱりコンパックPC用である。バルクとして流れやすいのかね?
もちろんメンブレンで、キータッチは可もなく不可もなくといったところ。使い込めばそこそこいけるのではないだろうか。ちなみに現在はこのサーバに接続しており、たまにコンソールからいじるときに使用している。101キーボードだといちいちキーマッピングを合わせる必要がないので、PC-UNIXをX11なしで使用するときには便利だと思う。
Happy Hacking Keyboard Lite2
一見しただけでわかると思うが、このキーボードはそのコンパクトさが最大の特徴である。元々、PC/AT、Mac、Sunといったばらばらな種類のコンピュータで同じキーボードを使おうというコンセプトで登場したのがHappy
Hacking Keyboardと言うキーボード。コンパクトで質の良いそのキーボードは、主にUNIX使いに大いに支持された。そのキーボードをPC/AT専用にして安くしたのがLiteで、このキーボードはその続編だ。
本家ではキーバインドがASCII配列のみだったが、Lite2ではご覧のようにJIS配列も用意されている。またカーソルキーも用意され、どちらかというとWindowsユーザーを意識した作りとなっている。で、肝心のキータッチだが、メンブレンスイッチとなっているため、評価はかなり分かれるところ。何となくキータッチがもっさりとした感じ。最初はこれでもかなり気に入っていたのだが(上のCompaq109よりは良かったので)、後で触れるPCKB9と併用していると、やはりあまり良いキータッチとは言えない。実は本家もメンブレンなのだが、こちらは評価が高い(私は触ったことがないのでわからない)。廉価版の宿命なのか。
使用しているのは現在のメインマシンと会社のマシン。自宅のマシンにはUSB版を、会社のマシンにはPS2版を使用している。ここで面白いことがわかった。基本的にキーボード部分は同じものであるはずなのだが、酷使している会社のキーボードの方が打鍵の感触が良いのだ。メンブレンは内部がゴムなので、使用するにつれて感触が変わっていくのかもしれない。
NEC PC-9800SERIES キーボード (1990年代初めごろ)
いわゆるPC-9801DシリーズとFシリーズを中心とした、90年代初めのPC-9801に付属していたキーボード。今では珍しいノンクリック・メカニカルキーボードである。この頃、NECのPC-9801シリーズは、一説によると国内シェアの8割以上を押さえていたといわれ、NECのパーソナルコンピュータ部門はまさにこの世の春を謳歌していた。そのため、この頃の98シリーズ自体には特に見るべきところもなく、高くてつまらない、単なるOA用PCといったあまりよろしくない印象を持つユーザーは多かった。しかし、伊達に高値だったわけではなく、キーボードや筐体のようにスペックには現れない部分まで金をかけて丁寧につくられていたことも見逃せない。
さて、このキーボードであるが、マニアの間では「98キーボードの最高峰」と呼ばれることがあるほど出来の良いキーボードである(本当はこの一つ前のPC-9801Rシリーズ用キーボードが「最高」らしいのだが、このキーボードもそれに遜色ない出来なのだそうだ)。実際に使用してみると、多少浅めのストロークながらスコンと入るその感じがじつにエクスタシーを感じる素晴らしい感触である。メカニカルスイッチであるから、メンブレンにありがちな、途中まで力を入れるとある一点でストンとキーが落ち込むということもなく、押し初めから下につくまで一定の力で押すことができる。さらにスペースバーも広いため、スペースバー原理主義者には最高のキーボードだろう。
この後、1992年に起こったいわゆる「コンパックショック」から各PCメーカーは終わりなき低価格化戦争に巻き込まれてゆき、このキーボードを最後に98ではメカニカルスイッチは使用されなくなってゆく。また、キーボードの質も急速に落ちていった。
で、このキーボードは2002年の年末につつじケ丘(東京都調布市)のPC DEPOという店で一つ100円で売っていたので思わず二つ確保したもののうちの一つ。年明けの1月初めにはまだ売っていたが、今もあるかどうかは不明。まあタマは多いはずなので、ここになくても確保するのは容易だと思う。購入後しばらく使用し、なかなか気に入ったのだが、やはり後述するPCKB9の方が好みだったので現在は使用せずに保管している。
EPSON PCKB9
かつて使用していたEPSONのPC-98シリーズ互換機、PC-486SRに付属していたキーボード。現在プリンタ販売でブイブイ言わせているEPSONは、かつてプリンタの他にNECのPC-98シリーズの互換機を販売していたことがある。販売当初、ROMに載せたBASICに関してNECに提訴されたり、NEC製のソフトウェアを互換機では起動できなくさせるなど執拗なNECからの攻撃を受けながらも、98よりも安価なマシン、98よりも高性能なマシン、98にはないコンセプトを持ったマシンを次々に発売し、一定のシェアを持つ存在だった。
そんなEPSONの互換機路線がちょうど転機を迎えた頃のキーボードがこれ。この頃はすでに低価格化戦争が始まっていたため、キーボードもメンブレンスイッチとなっているのだが、これが非常に打鍵しやすい。最近の安物キーボードとは比べ物にならないほど素晴らしい感触をしている。私は以前PCKB8という、さらに2年ほど古い機種(PC-386GE)に付属していたキーボードも所有しており、これもそこそこ良いキーボードで、かつPCKB9よりもコスト削減の影響を受けていないものだったのだが、どうも私の打鍵の仕方だと多少突っかかる感触になることがあった。しかしこのPCKB9ではそのようなことはなかった。そのため、PCKB8は大学の研究室に置きっぱなしにして卒業してしまった。
その後、このキーボードはずっとセカンドマシンであるPC-9821Ra20/N12のキーボードとして使用してきたが、上にも挙げた9800SERIESキーボードを導入したところ、こちらの方が感触が良かったので、しばらくそちらを使うことにした。このキーボードはしばらく使わないので、試しに中を開けたところ、中はびっしりと埃だらけだった。そのためさらに分解して水洗いをすると、打鍵の感触が今までとは比べ物にならないほど向上した。で、結局再びこのキーボードはメインキーボードの座に返り咲き、現在に至っている。
ちなみに、EPSONの98互換機自体は、この頃の機種を境に行き詰まりを見せ始め、結局1995年、Windows95の登場を間近に控えながら互換機路線から撤退することとなった。最後の98互換機用キーボードとなったPCKB10は、お世辞にも良い出来とは言えなかったと言われている。
MITSUBISHI M6905-13
三菱から、以前AMiTYというペン入力のWindows95マシンが出ていたそうで、これはそれの外付けキーボードだそうだ。とてもコンパクトで、これだけを持ち運んでも全く苦にはならない。これだけコンパクトな割には打鍵も割としっかりとしていて(といってもモバイルギア程度といった感じだが)、ブラインドタッチも苦にはならない。確か数年前に帰省したとき、北大の近くの「DO-夢」という店で買ったと思う。
以上、長くなったがデスクトップ編を終える(あとMac用キーボードも持っているので、いずれ更新するつもり)。次はノート・PDA編。物理的な制約をどう乗り越えているのかを見て欲しい。
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