<%@page import="java.sql.*"%> <%@page import="atmarkit.MyDBAccess"%> <%@page contentType="text/html;charset=EUC-JP"%> Automatic For The People
Automatic For The People
発売年 バンド・歌い手 ジャンル
1992年 R.E.M U2と同じぐらいROCKかな


音楽ファンの大きな楽しみの一つとして、「このバンドの最高傑作は何か」を議論することが挙げられると思う。ビートルズなんかはその究極だろう。一昔前であるなら「Sgt. Pepper’s」が定説だったようだが、今は「Revolver」を評価する向きが多い。しかし私が一番好きなのは「Abbey Road」であり、bitchなんかはエネルギッシュな初期を好んでいる。もちろん最終的には自分の耳しか頼りにならないので、このような議論は、不毛と言えば不毛だろう。しかしそのような正論を言ってるやつは、まったくもって面白味に欠ける人間であるとしか思えない。そんなやつと話してるぐらいだったら、朝顔の発芽と成長を24時間ノンストップで観察している方がまだ面白い。不毛な議論というのは、えてして楽しいものだ。そしてその議論の対象が音楽ならなおさらだ。

REMもまた意見が分かれるバンドだ。そして私自身もその質問をつきつけられたら、答えに窮してしまうだろう。例えばクラッシュなら間違いなく「London Calling」だし、スミスなら「The Queen Is Dead」だ。そこら辺は約束通り。あるいはあえて定説に逆らう場合も(例えばデヴィッド・ボウイは「Ziggy Stardust」じゃなくて「Hunky Dory」)、明確に「みんなが何と言おうと俺はこれが一番好きだ!」と言える。しかしREMの場合、そういうのがないのだ。「Murmur」もいいし、「Document」もいいし、「New Adventures In Hi-Fi」もどうしてあんなに評価が低いのか分からない。ってな感じになってしまう。まあそれらのアルバムが何故いいのかはそのレビューを書く時(そんな時が来るのか?)に説明するとして、この「Automatic For The People」というアルバムも、その最高傑作群に入っている。入ってるどころか、大本命だ。

もともとREMファンには、特に昔からの彼らを知っている人たちの間では、メジャーに移籍してからの彼らを否定する者も多い。私は、年齢的にインディー時代の彼らをリアルタイムで体験してないということもあるだろうが、それには賛成しかねる。確かに「Out Of Time」や「Green」が彼らのベストだとは思わないが、少なくとも駄作では絶対ない。ただそれについてギャーギャーわめいてもしょうがないっしょ。私はサニーデイ・サービスがよかったのは「24時」までだと思っているのだが、それが「はあ?」な人も多いだろう。それと同じ。だがそういうメジャー否定派が唯一認めているのが本作である。唯一、ってのがちょっと気にくわないが、私は人間ができてるのでそこは勘弁してやろう。

とにかく静かなアルバムであり、ほぼ全曲がアコースティックだ。もしくはエレアコ。ギタリストじゃないのでよく分からん。すまんな。いや、エレキもバンバン使われているのだが(「Drive」のあのシンプルなエレキギターのフレーズなんかは最高!)、曲の基調を定めているのはあくまでもアコギである。「Nightswimming」も多分アコピだと思う。アコピって何?お前の脳は腐ってるのか、アコピとはアコースティックピアノのことに決まってるだろう。そう略されてるの見たことないけど。ちなみに俺の脳は腐ってます。

例外が「The Sidewinder Sleeps Tonite」と「Ignoreland」だ。両方ともエレキギターがビンビンな、バリバリなロックである。この2曲は詞も対称的で、面白い。「Sidewinder」がアホアホ(「ベイビー、インスタントスープじゃ俺はグッと来ないぜ」とか)なのに対し、「Ignoreland」は、彼らの曲群の中では1、2を争うほど政治的な歌詞である。例えば「1980、84、88、92」と来て、そして「92」を強調している所があるが、これは言うまでもなく、1980年から続いていた共和党政権に終止符を打ち、民主党政権が誕生した年だ。まあ正確に言えば実際に発足したのは翌年だけど。しかし曲調は「Sidewinder」並みのアホ歌詞が乗った方が合いそうな感じだ。そしてこの曲で私が一番好きなのは「We lack defense, defense, defense, defense, yeah, yeah, yeah, yeah」の所である。多分防衛政策に言及していると思うのだが、それがものすごくアホに聞こえるのが素晴らしい。一緒に歌うと楽しいしね。

しかしほかの曲は、このアルバムのテーマが「死」というだけあって、非常に内省的で、暗い。と言ってもジャックスやジョイ・ディヴィジョンのような「終わってる」暗さではない。曲調が暗くても、綺麗な、聞き心地のよいメロディを書こうという努力が感じとれるのだ。「Everybody Hurts」なんかは露骨な癒し系(←当時はこんな言葉なかったけどね)の歌であり、人気も高い。私は嫌いだが。しかしその曲はともかく、彼らのその試みは基本的には大成功だ。「Sweetness Follows」も「Try Not To Breathe」も「Find The River」も全て、聞き手の心を洗うような、美しすぎる出来である。「普遍的なよさ」というのは私が最も忌み嫌う言葉の一つなのだが、ついその6文字が舌から飛び出てしまいそうな勢いだ。そして私が個人的に一番好きな「Man On The Moon」。詞は割と意味不明な部分が多いが、この美メロの魅力に抗える人はいないだろう。何とかという映画のサントラに使われ、一時期そのCMと一緒にブラウン管からこの曲が流れたのだが、ウンともスンとも言わなかったな。まあそんなもんか。

結論。うーん、結論か。黙ってこのアルバムを聞きなさい。ってそれじゃ「London Calling」と一緒だな。まあ私の中高時代を象徴するアルバムの一つだからねえ。要するにすごい好きなわけですよ。だから黙ってこのアルバムを聞きなさい。