競馬場の売上金強奪をたくらむ小悪党とやさぐれ警官としょぼいバーテンと馬券係の話。
スタンリー・キューブリック初期の作品。テイストが当時のヒッチコック映画にかなり似ているのは、当時がそういう方法しかなかったのかあるいは主流だったのかよくわからんが、正直前情報なしにこれがキューブリック映画だとは思えない。また白黒映画では色彩の美しさを表現するのもかなり限界あるようで。
でまあオーシャンズやキャッチミーでも書いたが、悪党が悪いことをするという話自体が勝手におもしろくなるというメリットは昔から知られていたようで、全体の流れは見ていて隙がない。ただこの映画では強奪に参加する4人のそれぞれの背景から性格的なものまでそれぞれ描いており、時間も互い違いに写しだしていてそれがなかなかおもしろい。とくにキーマンの一人であるヘタレ馬券係のヘタレっぷりがあとあと効いてくるような伏線になってるのが効果的だなあと思った。
して肝心の強奪シーンではその日一日のそれぞれの動きを場面ごとに切り取って、時間も結構むちゃくちゃに入れ替えてしまったり、逐一動きがわかるのは面白かったしだれる暇がない。ただその強奪方法が現代の基準ではありえない(バーで暴れるのはいいとしてもあれではごまかしきれてないし、逃げる所では危うく捕まりかけたり)のが、この映画では緊張感という点でちとマイナスだった。もしかしたらああいうズボラな人物という描写もかねて粗い犯行計画なのかもしれんが。
そして結末。最後に悪は勝たないというきつーい現実が待ってTHE ENDの字はその時代っぽくていい。たとえばダイヤルMや穴を最初に見たときの衝撃ほどではないが、面白い映画ではあると思います。